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現代意識潮流を探る
335687 98年の潮流変化をつかむ〜日本一儲かっている信金「西武信用金庫」〜集金業務を廃止して、支援活動に力を入れた
 
斎藤幸雄 HP ( 54 愛知 建築設計 ) 18/05/15 PM11 【印刷用へ
以下、「日本一儲かっている信金「西武信用金庫」はなぜ成功できたか」リンク より転載
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■自殺者が急増した1998年に何が起こったのか
 1998年、日本人の自殺者数が、突然、激増した。それまで2万人台前半を推移していたのに、いきなり3万2863人に跳ね上がり、以後、14年もの間、3万人を割ることはなかった。「貸し渋り」「貸し剥がし」という言葉が盛んに言われるようになり、企業は銀行からカネを借りるのではなく、内部調達にシフトしていく。企業が投資超過から貯蓄超過に数字を逆転させた年が98年だった。内部調達によって影響を受けたのが、給料だ。98年から雇用者報酬の伸び率がマイナスに転じた。

 低賃金、非正規雇用といった問題が始まると、「結婚しない理由」「子供を産まない理由」というアンケートで、「カネがない」「カネがかかる」という答えが上位に登場するようになるのだ。

 つまり、1998年は国民のマインドがガラッと変わるほど、未来に希望が見えない時代に突入した年と言えるだろう。自殺の主な原因は、健康上の理由、経済上の理由、人間関係である。「絶望」のマインドが自殺を増やしたと推測できる。

■変化できたのは「本当のライバル」に気づいた企業
 目には見えない変化なので、98年に時代は変わったと言っても、なかなかわかりづらい。

 しかし、変化に気づいた人たちはいた。98年以降、変化に対応した会社には共通点がある。それはライバルを変えたことだ。

 そこで、いち早く「本当のライバル」に気づいた企業が、どう変化していったのか。98年以降、社会の価値観の移り変わりを「会社の進化」から観察しようと思い、ルポとして『ビジネス大変身! ポスト資本主義11社の決断』(文藝春秋)にまとめた。

 例えば、地域の一信用金庫である「西武信用金庫」は、98年に業務を大きく変えて、日本一儲かっている信金に変貌している。

■集金業務を廃止して、支援活動に力を入れた
 1998年、西武信金は集金業務を廃止した。

「以前は自転車で1日70軒をまわって集金業務をしていた」と、現在、理事の高橋一朗は言う。

 西武信金は、東京・埼玉・神奈川の一部を営業エリアとする。取引先は中小零細企業、商店主、個人である。定期積立預金をあずかるために、自転車やバイクで集金に回るのだが、この頃、せっかく集めた定期積立預金の約8割が1年後には解約される事態になった。98年は90年代でもっとも倒産件数が多く、厳しい現実が解約として現れたのだ。

「集金業務では他の金融機関と差別化ができない」。経営陣がそう判断したのだ。理事長の落合寛司が言う。

「当時、金融機関は信頼されなくなっていました。信頼というのはお客さんが赤字になって困った時に、西武信金に相談しようと思われることです。しかし、金融機関は相談に行ったら、担保をつけろとか保証人をつけろとか危ない会社には貸さないと言って、雨が降るのに雨傘を取り上げてしまう」

 そこで西武信金が始めた「非価格競争」の一つが、至れり尽くせりの支援活動だ。

 カネを貸しても、経営が良くならなければ、貸した側も借りた側も沈んでしまう。しかし、信金の職員は経営のプロではないし、支援したい企業の技術を熟知してセールスできるわけでもない。そこで、定年退職した大企業の経営者、大学教授、技術者、経営コンサルタントなど、企業が困っていることに対応できる「プロ」を、あの手この手で探し出してきて、「お客さま支援」と称して、徹底して助けるのだ。

 これに全面的に協力し始めた大学は20を超える。少子化で学生確保が厳しくなった大学は、新たな活路を見出したい。例えば、食品栄養科がある女子大と、食品メーカーが協力して商品開発を行う。

■ベテランを生かし、若者にも共感される企業に
 超高齢社会も武器になる。前出の高橋はある日、新聞記事に目を留めた。「技術経営士の会」という組織が結成されたという記事だ。

「これだ!」

 高橋は膝を打ち、すぐに連絡。現役を引退した大手企業の技術系経営者や中央官公庁のOB、東大をはじめとした有力大学の元教授らによる組織である。高橋は出かけて行き、この組織に直談判して協力を仰いだのだ。

 会員たちは「せっかく長い年月をかけてノウハウを蓄積してきたんだから、そのままあの世に行くのはもったいない。ボケ防止にもなるし」と、西武信金の職員と一緒に下町の小さな会社に行って、協力するようになった。

 そう、人間は自分の得意技で誰かを助けたいという欲求をもっている。現場を知っているベテランたちが支援する「非価格競争」を西武信金は始めたのだ。西武信金の最大のライバルは、「金融機関への不信」であり、それを打ち負かす事業に転換したのである。

 他の金融機関の大きな違いは、預貸率に表れている。これは、預金残高に対する貸出金残高の割合だ。つまり、どれだけカネを貸しているか。西武信金は、実に83.49%。平均預貸率が50%を切るご時世にあって、驚異的にカネを貸し、しかも不良債権率は圧倒的に小さく、1.17%。貸し倒れがほとんどなく、取引先の経営を好転させている。

 そして私が自著に西武信金を取り上げたいと思った最大のきっかけは、約1230人の職員のうち、半数が20代の若者になったことである。大学生の就職希望者は100倍を超える。つまり、次の時代を担う若者たちに共感されたのだ。

 ForbesJAPANの取材を続けていて、こうした企業と出会うたびに、「進化論」で有名なあの人の言葉を思い出さずにはいられない。

「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である」(ダーウィン)
 
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