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市場は環境を守れない、社会を統合できない
331149 現代社会ではなぜ『労働意欲の低下』が起こりやすいのか?@
 
秀凜 ( 36 兵庫 会社員 ) 17/11/14 PM08 【印刷用へ
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2000年代に入る頃から、ニートやひきこもり、無職の増加などが社会問題としてクローズアップされ始め、『アパシー(意欲減退症候群)』や『モラトリアム(自己アイデンティティ拡散・職業選択の遷延)』、『自己愛の肥大(甘え・社会と自意識の乖離)』などのキーワードで労働意欲の低下が語られてきた。

人間の働く意欲というのは『本能的なレベル』では限られていて、『生存+α』のほどほどのレベルでしか働かないことが多く、ジャングルが生い茂っていた石器時代の狩猟採集文化の実労働時間は、わずか2〜3時間ほどであった(ひとり当たりの土地の占有面積の広さ・乱獲されていない生物資源の多さから短時間で餓死せずに食欲を満たす程度の収穫物が得られた)という推論も出されていたりする。

江戸時代も農民の労働時間はそれなりに長かったが、都市で暮らす人々の生活・労働は『その日暮らし(貯蓄・贅沢を追求しない)』であったため、朝から晩まで残業までして必死に働くようなハードワーカー(生粋の労働者階級)はほとんどいなかったとされる。

労働時間の長時間化を引き起こした要因は、『農業(農作業)』と『工業(工場労働)』と『企業経済』であるが、皮肉なことに人類の経済的な豊かさと文化文明の発展も、これらの大勢の人々を労働力として動員・要請する『農業・工業・企業経済の発展(生産力の余剰・新たな商品と価値の提示)』に支えられてきたのである。

これらの産業と労働がなければ、人類は石器時代の動物的本能に従って生きる狩猟採集文化(財の蓄積・モノの進歩がなく短命で同じ生活を繰り返すだけの文化)の段階に、更に100万年以上は縛り付けられていただろう。

農業も貨幣も知らない類人猿から分岐した猿人(人類の共通祖先)の歴史は実に約300〜400万年も続き、ホモ・サピエンス・サピエンスとしての現生人類が登場してからも約100万年以上は石器時代の狩猟採集文化の生活様式を延々と繰り返していたのだから、人類は気の遠くなるような時間をほとんど進歩せずに生きてきたといえる。


『集団的な労働(ムラ社会の労働規範)』を要請して『富の蓄積』を可能とした農業が、如何に人類にとって革命的な進歩と同時に宿命的な階級分化・労働負担をもたらしたかということである。

古代ギリシアの自由民(貴族)は、『労働・手作業』を奴隷の義務として蔑視し、『学問・芸術・スポーツ(戦士として応用可能な肉体鍛錬)』を自由民の嗜みとしていたが、日本でも平安時代の天皇・貴族は『労働・戦争の汚れ仕事』を下々の仕事として蔑視し、『和歌と色恋・式典と除目(人事の競争)』を支配階級の嗜みとしていた。

歴史的に見れば、支配階級の権力者の多くは、汗水を流す農作業や土木工事といった昔ながらの労働からは遠い地位にいて他人事のように軽視していたが、『働くことが当たり前で尊い・労働こそが人生の中心にあるべきという価値』は、身分制度が廃絶された近代社会において『富国強兵・殖産興業』を達成するための学校教育・出世競争(階層流動化)を通して急速に高まった。

近代化の始まりは、企業に雇用される大量の『労働者階級(プロレタリアート)』を生み出したが、イギリスの産業革命初期の労働者が悲惨な労働環境に置かれていたように、資本主義経済はその黎明期において『労働者と資本家(経営者)の階級対立』が深刻化して、一時は共産主義革命(プロレタリア独裁・平等分配の暴力革命)を志向するマルクス主義への大衆のシンパシーが高まったりもした。

20世紀初頭までは、先進国であっても『貧乏人の子沢山』は当たり前であり、『勤勉な労働力としての子供・国民』を増やすことが、将来の家族や国家の繁栄・利益につながるという『集団主義(共同体主義)』は、ほとんど疑う余地のない人々の人生の前提であった。

働くことは『他に選択肢のない生きること(自分と家族を養うこと)そのもの』だったのであり、それ以前に『生きること・産むこと・働くことをあれこれ疑って迷う意識』を持つような余裕や教育機会がなく、同じ社会階層では同じような生き方をしていたのである。

Aへ続く
 
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