かつてTVショッピングで社会にムーブメントを巻き起こしたジャパネットたかた前社長・高田明氏。視聴者を惹きつける彼の「伝える力」は、一体どのように磨かれてきたのだろうか。
グノシーで「伝える力」(リンク)に掲載されていましたので、一部引用して紹介します。ここで出てくる「離見の見」は、プレゼンテーションを行う皆さんにも参考になると思います。
*+*+*+ 以下引用 +*+*+*
(前略)
高田氏が最近、伝え方の師と仰ぐ人物がいるという。それはなんと、室町時代の能の大成者である世阿弥だ。
「世阿弥の著書である『風姿花伝』や『花鏡』は、600年も前に書かれたにもかかわらず、読むたびに新しい発見があり、感動しますよ。とくに感銘を受けたのが、『三つの視点』。
世阿弥は能を演じるにあたり、三つの視点を大事にすべきと説いています。一つは自分がお客様を見る視点。能を舞うときの自分は、当然、お客様を見ていますよね。これを『我見』という言葉で表わします。
もう一つは、『相手が自分を見る視点』。能なら観衆であり、私たちの仕事ならお客様の視点です。これを『離見』と呼びます。世阿弥はこの我見と離見、双方を持つことが重要だと説いています。
これはまさに、私が伝える際に最も大事にしていることと同じ。自分がお客様にどう伝えるかという『我見』は重要ですが、そればかりでは決して伝わらない。
私たちが、『これ、いいでしょ』『これもいいでしょ』とばかり言うのは、我見だけにとらわれている証拠。そうではなく、お客様の生活シーンを想像しつつ『こうだからいいでしょ』と相手の立場で語っていくからこそ、我見と離見が一致し、相手に伝わると思うのです」
最近の例として、タブレット端末が挙げられるという。若者向けの商品と思われがちだが、ジャパネットではなんと、購買者の6割以上が60代以上だったという。
「これは、私がシニアの立場からメッセージを発したからです。最近のタブレットは小さくて軽く、音声認識機能などもついており、非常に便利です。でもそこで『軽いでしょう、小さいでしょう、しかも音声認識までついているんですよ』といくら機能を伝えても、伝わりません。
シニアの方々というのは、定年退職までの40年間、一生懸命働いてきたわけです。そして、さあ、これからゆっくりしようと思ったら、何をやっていいかわからない。そういう人をよく見かけますよね。
そこで私は、『せっかく時間ができたのだから、旅行に出かけましょう。その旅行にタブレットを持っていけば、いろいろなことが調べられ、旅行が10倍楽しくなりますよ』と、メッセージを発信した。すると、たくさんのシニアの方々に共感していただいたのです。
何をどう伝えるかは相手が男性か女性かによっても違いますし、お子さんなのか、社会人なのか、シニアなのかによっても違ってくる。やっぱりここも離見が大事なのです」
(中略)
「先ほど、我見と離見の話をしましたが、実はもう一つの視点があります。それが、『離見の見』です。能を舞う際、観衆は『見所』という一種の観客席で見ています。自分は面を被っているから、そこの様子は見えません。でも、あたかも見所の観衆が自分を見ている様子を遠くから眺めているように、自分の姿を大局的に、俯瞰的に把握する。それが『離見の見』だというのです。
正確な解釈かどうかはわかりませんが、私はこれを、どう見せるか、どう伝えるか、というテクニックの重要性と捉えています。どのタイミングでどんな高さの、どのくらいの強弱の声を出すか、どのようなしぐさをするか。すべて、伝え方に大きく影響してきます。
(中略)
また、技術の一つとして、『間』があります。よく、立て板に水でスラスラと話すことが大事、などと言いますが、これではかえって伝わりません。むしろ、少し話したら、今度はパッと瞬間の間を作る。そして、次の言葉を発すると、より強く伝わります。間というのは、次の有を生み出す無。そもそも自分の言いたいことをひたすらしゃべり続けるのは『我見』にとらわれている証拠です」
(後略)
*+*+*+ 引用終了 +*+*+*
共認空間は、伝える側と受け取る側のやり取りだけで形成されるのではありません。周囲の感動や興奮によって、自分も感動や興奮に巻き込まれるなど、受け手同士のやり取りも重要になります。
それを最大限活用するためには、第三の視点(離見の見)を持って常に全体を俯瞰し、場の反応に適した進め方を心がけること事が大切なのです。 |
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