脳回路と駆動物質
291390 サッカー脳:空間把握と状況判断⇒瞬時にひらめく優れた戦術(可能性)は大脳基底核で生まれる
 
佐藤賢志 ( 50 東京 デザイナー ) 14/06/17 AM00 【印刷用へ
NHKスペシャル『ミラクルボディー』で、サッカー選手の脳の働きを調査分析した内容が放映されていて興味を引いた。リンク
番組では、芸術的なパスサッカーで世界一になったスペインの主力選手2人(シャビ、イエニスタ選手)をとり上げ、その脳を最新科学で解析し、瞬時の肉体の反応を可能にしている“天才脳”のメカニズムを解明している。

るいネットで追求している脳構造解明の内容に塗り重ねられる分析もあったので要点を紹介します。(番組では、実際の動きの撮影、詳細の動きをモーションキャプチャーや、体の断面を撮影できるMRIなど最新技術を用いて分析していた)

■1.空間認識力と状況判断力
シャビはスペインのパスサッカーを統率する司令塔だが、彼は90分の試合で860回も左右に首を振って常に周りを見ており、「僕にはピッチの上のすべてが見えている」と豪語する。そして的確な状況判断から、得点につながる可能性を瞬時に見出す。
その脳内情報伝達回路のルートが巾広く多様で、もれなく多くの視覚情報を脳に素早く伝達している様が、一般的プロ選手との比較画像で示されていた。

■2.前頭前野と大脳基底核
相手守備陣に囲まれた中、パスを出す瞬間のシャビの脳の活性領域が、他の選手と比べ明らかに違っていた。
一般選手は前頭前野(脳の表層部分)が活性化しているのに対して、シャビは大脳基底核(大脳皮質と視床、脳幹を 結びつけている神経核の集まりで脳全体の中心にあたる部分、脳進化的には最も旧い部位)を激しく活動させている。

前頭前野は、思考や意思決定など日常的に活性する部位であり、普通の選手はどこにパスを出すか「頭で考えながら」プレーしている事になる。
ところがシャビは全く違っていた。
大脳基底核は過去の反復経験や知識が長期的に記憶される部位。シャビの大脳基底核には過去の試合などで繰り返し経験したパターンが将棋の棋譜のように膨大に蓄積されていると考えられる。
そして「頭で考えずに」無意識的に瞬時に判断し、目の前の状況で最も適切な一手を選びパスを繰り出す。
番組では、これを「直観」と解説していた。

●この様な特徴的な脳構造は、どのようにして培われたのか?
番組では、少年時代のトップクラブ下部組織での指導:頭を使ってプレーすることを教え込まれ、反復練習した事をその要因として挙げていた。
当時の身体能力重視の時代に、このクラブでは先見的に頭を使う事を重視し、170cmの小柄な選手を世界トップ選手に押しあげたと言える。

注目すべきは、シャビが脳の形質のなかで旧く、かつ多くの機能を束ねる大脳基底核の潜在能力をフル稼働させている点だが、おそらく幼少時から彼は、その生存本能を脅かすほどのプレッシャーの中で練習づけになっていただろう。加えて指導者は、自ら考え判断し自ら行動することを徹底させた。
その様な外圧下で長期間反復訓練することで、表面的な知識や工夫を超えた、本能次元での根源的な適応の術が刻まれたのだろう。
さほど足も早くない身体能力が他に劣る選手が評価を得た源泉が、頭を使う事であり、それが彼の成功体験=充足源になっていたのではないか。

加えて、この脳内の蓄積をもとに鍛えられた肉体機能や運動技術は、筋肉の使い方〜身のこなし〜高等テクニックまで、通常とは異なる高次元のレベルで培われたことは、想像に難しくない。

・・・幼少時からの学習方法や教育場面でも応用可能ではないだろうか。

■3.同化⇒相互補完⇒集団適応(闘争勝利)
さらに番組では、世界的ストライカーで「創造的な脳」と「手品師」と賞賛される身のこなしと技術を持つイニエスタ選手を取り上げていた。
パス供給者のシャビの戦術を瞬時に理解し動き、瞬間的に無数の可能性の中からアドリブで最大可能性を生み出し、卓越した技術でゴールするイニエスタ。(彼の脳構造については、ここでは割愛する)

シャビとイニエスタは実に20年以上プレーをともにしており、その共認度が凄まじい。二人の頭と体はまさに一体であるかのように同化し連動する。そして、両名とも「補いあってきた」と表現していたのが興味深い。

一方は、総合的に状況を素早く的確に判断する脳、一方は、変化し続ける状況下で多様なアイデアを繰り出して、得点に結びつける創造的な脳の持ち主。

・・・仕事を含めたあらゆる闘争は集団組織で行われるが、このサッカーの事例は、個々の能力を見極め最大限に引出し、役割を明確化した専門分化の究極的な姿ともいえ、闘争勝利=集団適応の雛形(可能性)だと捉えることもできるだろう。
 
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