収束不全:やりたいことが見つからない
96984 ○か×かを判断するだけの民主主義に意味はあるのか?
 
小暮 勇午 ( 27 京都 会社員 ) 05/09/07 PM10 【印刷用へ
司会のみのもんた氏が促した。
「郵政民営化に賛成?○か×か、どうぞ!」
真っ先に「○」の札を上げたのは自民党の「刺客」第一号となった小池百合子環境相だった。
「はっきり、イエス」
8月16日朝の情報番組。衆院東京10区の立候補予定者4人が顔をそろえた「生激論」の一幕である。
郵政法案に反対し、自民党から小池氏をぶつけられた小林興起氏は、ちょっと遅れて「○」。
「ほう、○を出しましたね」
みの氏が驚いて見せると、小林氏は声を張り上げた。
「民営化には自民党の大勢。我々を含めて賛成ですよ。このバカげている法案に反対しているだけ。民営化だっていろいろあるのに、一切プロ的な話をしないで・・・」
長々と説明を続けていると、小池氏がズバッと遮った。
「集約して最終的に本会議で採決するわけですから、イエスかノーしかないんですよ」
民主党の鮫島宗明氏は、
「答えらんないな・・・『小泉郵政民営化』には反対ですよ」とためらった末に、
「郵政民営化には賛成です」と「○」。結局、「×」は共産党の山本敏江氏だけだった。

○か×か・・・。単純だが分かりやすいテレビ的な色分けは、小泉首相の政治手法にぴたりと重なる。ちょっと考えこむような理屈はウザいだけ、となるのだろう。

*************(アエラ ’05.08.09 号)

この記事にも関連するが、マスコミの街頭インタビューを見ていて感じるのは、今回の選挙に関して有権者に「郵政民営化に賛成か反対か」の意見表明を求めるマスコミの態度に非常に違和感を持つ。

上記の記事で、小林氏らがいやいや「郵政民営化には賛成です・・・」と言ってしまうのは、『○』を上げる側にいなければ、「悪者」「少数派」になってしまうという危機感からだろう。それが大マスコミらが作りだす「空気」「雰囲気」が原因だ、というのもその通りだと思う。

しかし、このような風景はいわゆる「民主主義」の必然ではないか。考えてみれば、「民主主義」下での方針の決定とは、「多数『決』」を採用する。もちろん「決」を取る前には、時間をかけて議論し尽くす。100人で話をして、100人が同じ方針に賛成するのが理想的な形だろう。しかし、時間的な制約などで「全員の賛成を取るのは無理だ」と判断し、「多数『決』」を取る。

この「多数決」そのものが、元々目先の手法と言える。つまり、様々な角度から追求し、全員が納得できる「答え」こそが本来の方針となるはずが、この追求を途中で断念して「とりあえずどうするか」決めるのが「多数決」である、と。様々な意見や追求は一旦置いておいて、「イエスかノーか」を判断させるのが多数決であり、「民主主義」の最終的な姿。

もし、庶民の側に追求する余裕や、追求できる材料や構造認識があれば、早々と「多数決を取る」「○か×かを判断する」とはならないであろう。しかし、庶民の不全レベルが上がり、(「答え」がないので)切迫感が強まれば、今までの体制には「×」を上げて、何とかしてくれそうな雰囲気を持つ人間に「○」を上げるだろう。そして、「○」を上げられた人間は、その「多数決の結果」「民の総意」を背景にして、ますます助長していくことになる。それは、ファシズムに直結する。

今回の小泉フィーバーに見られるファシズムの影は、「民主主義」と「目先収束」が相乗して織り成している。しかし、それ以上にこれは「民主主義」が行き着く最終的な姿に思える。小泉に「ノー」を突き付けると同時に、民主主義に「ノー」を突き付ける時代が来たのではないだろうか。
 
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