1998年に破綻した旧長銀の破たん処理に投じられた公的資金は約8兆円。債務の約9割のカットをしたうえで、アメリカの投資会社、リップルウッド・ホールディングスがつくった投資ファンドのニュー・LTCB・パートナーズ(NLP)に1200億円で、営業権(普通株)が譲渡されました。そのNLPは不良資産を絶対に引き継がないことを条件としたので、NLPが拒否した国有長銀の不良資産の多くは当然回収不能になます。それを補填するのに使われた国民負担は総額で5兆円に達しました。
その後、リップルウッドが行ったのは猛烈な貸しはがし。その過程でおなじみ“そごう”や“マイカル”をはじめ142社が倒産に追い込まれました。猛烈な貸しはがしの結果、同行は「健全化」し、新生銀行として株式を再上場したのですが、その間5年。その上場益でリップルウッドは約2200億円を手にしたといいます。その後保有株を半数にまで減らし2900億円程の利益を得ることとなりました(しかも、それらは非課税だったという話)。
一方1998年、破綻し国有化された旧日本債券信用銀行(日債銀)に投入された公的資金は3兆5000億円です。その後2000年、ソフトバンク、オリックス、東京海上火災保険などから成る投資グループに売却され、あおぞら銀行として再出発しました。しかしそれもつかの間、あおぞら銀行に490億円を出資し筆頭株主であったソフトバンクは、2003年9月5日に保有する同行の全株式をアメリカの投資ファンド・サーベラスに1000億円で売却しました。
このように、日本政府は血税を使って不良債権を処理した後、外資に貢物を贈ったと言われても仕方の無いことを結果的にはやっています。
日本企業に現在どの程度外資が食い込んでいるかのデータを見つけたので、以下に引用します。
医薬品上位5社の、外国人持ち株比率が 30%以上
4大銀行グループ外国人持ち株比率 20%超え
ゴルフ場所有数、外資系が1位2位
大手損保の外国人株主比率3社で 35%超え
オリックス 50.7%
HOYA 50.5%
ヤマダ電機 50.1%
40%超えの企業は以下羅列
キャノン、フジフィルム、クレディセゾン、TDK,野村ホールディングス
という感じですが、ご覧の通りかなりのものです。これがますます進んでいるのが近年の流れのようです。
それもそのはず、実は、アメリカの日本に対する年次要求書みたいな書類があるのですが、外資に有利な様々な政策を日本に要求し、その内容に添った法律が(大衆に注目されないまま)次々と制定されていっているらしいのです(ちなみにこの要求書では、既に10年前から「郵政を民営化しろ」という内容の記述があるそうなリンク)。
小泉が首相となってからは、「日米規制改革および競争政策イニシアティブ」(規制改革イニシアティブ)が設置され(2001年)、日本のアメリカ追従はさらに強化されたようです。
ちなみに、昨年の内容はこういったものです。
リンク
>米国は、小泉総理大臣の思い切った経済改革の課題を強く支持しており、その 課題への取り組みにより促された最近の日本経済成長を歓迎する…云々
と続いて
>本年(2004年)の要望書において米国は、日本郵政公社の民営化計画が進んでいることを受け、勢いを増している日本における民営化の動きに特段の関心を寄せた。これに関して、「日本経済に最大限の経済効果をもたらすためには、日本郵政公社の民営化は意欲的且つ市場原理に基づくべきだ」という原則が米国の提言の柱となっている。
その要求を受けてかどうかは不明ですが、郵政民営化法案では350兆円の国民の貯金資産の運用を新たに作る民営化会社の元、既存の民間企業に任せる形になっています。これは、既に様々な人が懸念している通り、350兆円もの郵貯・簡保資金が外資の自由にされてしまう(外資に関する規制は設けられていない)ということでしょう(以上、参考ブログ:リンク「一喝たぬき」ほか)。
国民が汗水たらして生産し、消費をひかえて作り出した貯蓄を、(長銀や日債銀の時と同様)「どうぞもってってください」とアメリカに貢ごうとしているのが小泉で、このようなことを考えもなしに推進するのは「国賊」と言うしかないと思います(「何を言う。“貢ぐ”んじゃない、市場原理に任せるだけだ」と反論されそうですが、アメリカはこれまで自分のところに富が集まるようなルールを勝手に作り、それを軍事力を背景にして各国に強制的に押し付けてきました。それが世界規模で進んでいるグローバリズムの正体です。実際、市場を開放した国は人工的にバブルを起こさせられたりしてことごとく食いつぶされ、ますます貧困にあえいでいるのは周知のとおり)。
「自民党をぶっ壊す」のは結構なことですが、このままでは日本がぶっ壊れてしまう。マスコミも単に「官から民へ」「改革をとめるな」というゴマカシのごたくをそのまま垂れ流すのはやめて、もっと中身について報道し、上記のような懸念が杞憂だという根拠があるならそれをはっきり提示することが最低限必要でしょう(もっとも、マスコミの体質から言ってあまり期待はできませんが)。
この動きに対して、安易に彼の口車やマスコミの創りだす空気に乗っかることで、自らの首を自ら絞めようとしているのが大衆です。私達普通の人々自身が「郵政民営化」というキャッチフレーズの背景にある事実やその危険性についてつきつめ、共認形成していかなくてはならないと思います。 |
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