生物の細胞膜には受容体があり、外部情報を細胞内部に伝える役割を果たしていますが、その種類は2つあります。
一つは、核内受容体(細胞内受容体)
これは、>細胞膜を自由に通過できる脂溶性ビタミンA、Dやステロイドホルモンや甲状腺ホルモン等の脂溶性の物質を受容し、これらのリガンド(情報伝達物質)により核内のDNAの特定配列に結合し転写して、必要な蛋白質を合成して生体反応をひき起こします。<(リンク)
もう一つは、細胞膜(貫通型)受容体
これは、>ペプチドホルモン、神経伝達物質、増殖因子などの細胞膜を通過できない水溶性の物質を膜表面で受容します。受容後はセカンドメッセンジャーと言われる細胞質内の情報伝達物質を介して間接的に情報を伝達して作用を発揮します。最終的には体内物質の活性を抑えたり、細胞の核に存在する特定の遺伝子(DNA)の転写を促して蛋白質を合成して生体反応をひき起こします。<(同上)
です。
つまり、ある情報は直接細胞内部に浸透して作用するが、ある情報はセカンドメッセンジャーを介して間接的に作用する、というわけですが、これは人間の集団モデルにも、個体の認識モデルにも思い当たる構造です。
例えば、食べ物を前にした時の情報受容や、異性の挑発を前にした時の情報需要は、あたかも上記の核内受容体モデルのように、直接的に本能レベルで情報を察知し、具体行動へと繋がる流れといえます。
一方で言葉など観念情報の受容は、細胞膜受容体モデルのように、一旦言葉面を認識し、その上で解釈の課程を経て、ようやく行動へと繋がる流れになっています。
例えば、>『みんな不全』という「場」の共通の圧力が感じられなくなると、個体単独でも生きていけるような錯覚に陥ってしまう<(53382)
という時の「みんな不全」という言葉の受容について考えてみると、
「みんな不全」という言葉面だけをいくら見ていても決して具体的な肉体行動には繋がりません。この観念が意味するところを、潜在思念と既得の観念とをフル稼働させて解釈し、具体行動に繋げる作業が必要になります。
しかし、このかなりパワーを要する作業を本能的に己自身だけでできるでしょうか?否。まずその言葉を可能性あるものとして受容することから始まり、解釈し、具体行動にまで繋げるプロセスは、己自身の潜在思念がその引き金にはなっているにしても、だれかからの働きかけや周りとの共認作業の中でつくられるものでしょう。
つまり、言葉(観念)は一人の力では受容不可能であるということ。そして、細胞レベルの受容でいうところのセカンドメッセンジャーのように、必ず周りのだれかを媒体にして自身の中に取り込まれ(解釈され)、具体行動に結びつくのだという、あたりまえですが非常に根本的で重要な観念受容の構造が見えてきます。 |
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