日本を守るのに、右も左もない
96393 諸外国の公共事業民営化はなぜ失敗したのか?
 
竹村誠一 ( 30 長野 営業 ) 05/08/24 PM07 【印刷用へ
先日(8月20日)のNHKスペシャルでは、水道事業の民営化がテーマとして取り上げられ、具体的にフィリピンやアメリカなどでの民営化の失敗事例が紹介されていました。

確かに今回のNHKの企画は、現在巷で話題の郵政民営化論議の流れを受け、体制側に立つNHKからの「民営化に対するブレーキ」というメッセージであったとも受け取れますが、事の本質はそう簡単なものではないと思います。

それは、民営化に関する議論の構造には、
@公共事業の民営化は、是か非か。

という表面的なレベルがまず存在しますが、このレベルは、誰もが参加できる二者択一のお祭り的な議論にすぎず、「公務員は儲けすぎ」とか、「一部の民間企業が儲かるだけ」といった私権の相対比較に基づく感情的な意見に場が支配されがちです。むしろ、本質的な論点はその奥にあると思われます。

つまり、
A民営化の背後には、私権時代一貫して続いてきたグローバル化=市場開放の大潮流がある。そこでの主役は、新たなる市場拡大を目指して最後の聖域とも言うべき他国の公共事業を市場原理のもとに組み込んで、他国からの富の収奪をもくろむ多国籍企業です。

実際、今回のNHKスペシャルでも、フィリピンの水道事業に参入した欧州の多国籍企業がごく短期間で現地での収益を貪った上に、結局は通貨危機などを理由に数年で事業を放棄、フィリピン政府にその負債をおしつけて撤退したという経緯が紹介されています。

これは「民営化の失敗」というよりは、世界市場を牛耳る多国籍企業にフィリピン政府がだまされた、という方が正確であり、「水道代の値上げはしません」などのうまい言葉に乗せられて、フィリピン政府が検討不十分なまま多国籍企業の言いなりになってしまった、というのが実態に近いと感じました。

ただ一方で、一国の政府が、巨大な多国籍企業とは言え一企業にやすやすとだまされるというのも現実味に欠けます。ではその背後には何があるのか?

B多国籍企業の隆盛を支えているのは、その資本力、およびそれと密接に結びついた武力(軍事)力ではないでしょうか。実際に、多国籍企業は欧米の巨大財閥グループと一心同体であり、自ずとその影響力は国家間の政治にも関係してきます。

国家の最大課題は、秩序の安定です。そこに付け入って、不安定を作り出すことができれば、国家へのビジネスチャンスが生まれる。彼らはそこを切り口にしているように見えます。

例えば、ある国家の周辺に仮想敵国を作り出し、国民に不安を与えることで、武器の輸出チャンスが生まれます。また、麻薬や武器の流入が進めば、更なる不安定と追加需要も見込めます。あるいは今回のフィリピンでの水事業民営化のように、「雇用創出」や「公共料金の軽減(あるいは値上げストップ)」といった甘い言葉を武器に公共事業の民営化を迫ることもできるでしょう。

このように、先進国における貧困の消滅にもかかわらず、他国の公共事業にまで目をつけて市場の拡大をもくろむ強力な多国籍企業のビジネス(世界統合)モデル。これに代わる統合モデルの提示と実現が今、真に必要とされているのだと思います。

その答えは、フィリピンの水道事業民営化にしても、日本の郵政事業民営化にしても、当事者意識の低いごく一握りの政治家や官僚だけに、国家の命運を託しているだけではダメだ、ということ。どれだけ多くの国民が「社会の当事者」を自覚して、マスコミに代わる共認形成に参加し、政治家や官僚に代わる社会統合課題に参加できるか。

旧観念を全否定した全く新しい認識が必要だということである。それは、これまで彼ら発信階級が撒き散らす観念をただ受信するだけであった『みんな』の協働によってしか生み出せない。<(44391

ということに気付けるか、にかかっていると思います。

その意味で、今回の郵政民営化をめぐる一連の社会の動きは、徹底的に社会構造と歴史構造を掘り下げて共認をはかるのに絶好の機会ではないでしょうか。
 
  List
  この記事は 44391 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_96393
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
220002 公共事業を民営化する騙しのフロー 酒井俊弘 09/11/19 AM00
161494 上下水道管理を開放、市場化テスト16事業追加・政府 ⇒狂った政治から一刻も早く脱却を! 丸一浩 07/09/17 PM03
157051 『郵政民営化は世界的な潮流』の大ウソ!〜各国の郵政民営化に失敗した実例 猛獣王S 07/07/17 PM09
本当は少ない日本の公務員 「新・サムライなんで屋」 05/10/18 AM11
郵政民営化の問題抽出 3 「なんで屋−驀進劇−」 05/10/12 PM06
98012 今や待ったなしの社会状況 田中一成 05/09/27 PM11
96518 大衆は、民営化にも市場拡大にも可能性が無いことには気づいている。 長谷暢二 05/08/27 PM10
郵政民営化の問題抽出3 「なんで屋−驀進劇−」 05/08/27 AM02
96472 「刺客」というフレーズが流行っているが… 石橋創 05/08/26 PM10
郵政民営化の問題抽出 2 「なんで屋−驀進劇−」 05/08/26 PM03
郵政民営化の問題抽出 2 「なんで屋−驀進劇−」 05/08/26 AM02
郵政民営化の背後にある問題1 「なんで屋−驀進劇−」 05/08/25 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
人類の進化
ヒトは何種類いたのか? 「異種同時共存説」による人類進化
「アフリカ起源説を補強する新証拠で、窮地に陥った多地域進化説」 @
「アフリカ起源説を補強する新証拠で、窮地に陥った多地域進化説」 A
単一起源か?多地域起源か?(その2)
アニミズム(精霊信仰)について
シャーマニズムと幻覚回路
原始人類集団のリーダーは、精霊信仰⇒祭祀を司る女であった
共時一体感覚にささえられる文字による共認 2
不安発の古代宗教と感謝・同化の精霊信仰
ネアンデルタール人は「野蛮」だったか?   人類の生活をどう復元するか
スンダランド海洋航海民の誕生
黒曜石、翡翠の広域に渡る存在は、交易ではなく贈与の結果ではないか@
黒曜石、翡翠の広域に渡る存在は、交易ではなく贈与の結果ではないかA
ポトラッチの実態
捧げものが同類闘争圧力により変質したものがポトラッチ
贈与の意義
採取時代の適応原理
「祭り」の多面性と核心
祭りは共生適応ではなく集団統合(解脱+闘争)共認の場
人類の本性は共同性にある@
人類の本性は共同性にあるA
人類はなぜ大地を耕しはじめたか? 寒冷期と農業の起源
4大文明の多元的・同時発生説
戦争がなくならないのはなんで?:ノート2
原始時代〜部族連合時代〜武力支配時代
武力時代の東洋の共同体質⇒秩序収束⇒規範収束
西洋の自我収束⇒観念収束⇒唯一絶対神信仰
白人の部族移動の歴史
山賊・海賊によってつくられたギリシア・ローマ
戦争の起源
西欧だけが性を罪悪ととらえる文化であるのはなぜかA〜古代ギリシア・ローマに快楽敵視が存在した証拠はない
西欧だけが性を罪悪ととらえる文化であるのはなぜかB〜隠蔽したいローマ帝国崩壊後の空白の200年間

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp