生物の起源と歴史
94248 免疫システムの再検討
 
吉国幹雄 ( 53 鹿児島 講師 ) 05/07/10 PM02 【印刷用へ
高等生物が進化とともに手に入れた「免疫システム」の強みは「抗原抗体反応=獲得免疫」。つまり、一度抗原に対して抗体を作ったら、その抗原が来たら二度と痛い目にあわない=その抗原を記憶しておいて抗体を一気に産出するシステムの高さにあります。つまり、「記憶システムと再現システム」に最大の特徴があります。

<免疫システム(獲得免疫)の参考サイト>(初めての人にも見やすいです)
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(免疫系を「自己同一性維持システム」と捉えて、独自にまとめたサイトが↓。自己同一性=対象同一性と読みかえて見てください。少し専門的です)
リンク

この獲得免疫(特異免疫)に注目して人類が開発したのがワクチン。1798年、E.Jennerが牛痘ウィルスを人に接種することにより、天然痘が予防できることを発見したのが初めだ。抗生物質がほとんど効かないウィルスに対して、このワクチンの発見は画期的な人類の知の勝利と言える。
が、このワクチン、いろいろ調べてみるとわからない点が幾つか登場する。
<ワクチンについての参照サイト>
リンク

>天然痘をおこす痘瘡ウィルスも、牛痘を起こす牛痘ウィルスも、ポックスウィルスというグループに属している。ヒトに牛痘ウィルスを接種すると、ヒトに軽い牛痘感染が起きると同時にポックスウィルスに対する抗体が出来る。その抗体はBリンパ球に記憶される。もし牛痘ウィルスに似た痘瘡ウィルスが侵入しても、記憶しているB細胞がすみやかに大量の抗体をつくる。<

抗原抗体反応のカギと鍵穴の関係は、日常のカギと違って「一箇所でもピタッとくるところがあればくっつく」というのはよく言われるところ。特異性といっても、実はそれほど厳密なわけでなく大雑把であるといえます。これは、赤ん坊の認知方法で知られる「外側効果」(22368)を連想します。

>細菌ではジフテリア、百日咳、破傷風などのワクチンはできるが、コレラ菌、赤痢菌などにはワクチンができない。これらの細菌はリンパ球に記憶されにくい抗原のようで、なぜ細菌の抗原性に対する記憶の強弱があるのかは不明である。<

記憶されにくい抗原と記憶されやすい抗原がある…?
上記の細菌の記憶されない理由は定かでないが、細菌の中には調べてみると「スーパー抗原」になるものもあるようです。

>スーパー抗原は細胞内に取り込まれることなく、ペプチドにもならずに、MHC分子の外側の縁の部分とT細胞レセプターとを無理矢理結びつけてしまいます。従って、抗原特異性に関係なく、たくさんのTリンパ球が一度に活性化されます。
 ある種の細菌やウイルスはこの「スーパー抗原」分子を作ります。それによって免疫反応を攪乱し、上手く免疫系の細胞内に潜り込んで生き延びたり、免疫反応による排除を免れたり、時には宿主を死に追いやったりします。<
(参照サイト リンク )

免疫系は抗原があれば抗体を作って対応しようとするが、これでは「作れ」とアクセルを踏みつづけているようなもの。抗原抗体反応は最終兵器なのではなく、むしろ一対一対応の硬直したシステムが命取りになる危険性があるということ。

ところで、ワクチンと言えば、擬似的に感染させといて生涯感染させない「終生免疫」をイメージするが、どうもそうではないらしい。『ブースター効果』も考えさせられる現象。

>「ブースター効果」とは体内に一度作られた抗体などの免疫機能が、その後何度かウイルスに接触することで、維持されるようになる働きのこと。実は、今まで言われてきた、終生免疫というのは、一度できた免疫が何度かウイルスに接触することで維持される「ブースター効果」が得られていたために実現していたものだったというのだ。<
(参照サイト リンク )

ウィルス環境が極めてよい無菌状態になった結果、記憶がどんどん薄れていくと言うわけ。刺激(外圧)があればいいが、なければいくら内部環境を整えても忘却される。免疫記憶は絶対ではないということだ。
考えてみれば、人間の記憶も何度も繰り返せば定着していくし、使わなければよほど鮮明な記憶でない限り忘れ去られる。記憶と忘却は表と裏の関係にあり、免疫システムの根幹が記憶・再現システムというのなら、当然のことながら忘却システムも備えていて当然なのかも知れない。

以上の点から浮かび上がる免疫システムを再検討してみると、特異免疫と言う言葉とは裏腹に、柔軟性・変容性の高いある意味では「適当な」システムが見えてくる。適応戦略上なぜそうなったのかの検討は一端置くが、少なくとも20〜30年も経てば免疫システムが変容していくというのは十分に考えられる。これは長寿を実現した人類特有の問題なのかもしれないが…
 
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