子育てをどうする?
85522 離乳・卒乳・断乳
 
吉国幹雄 ( 52 鹿児島 講師 ) 05/02/11 PM00 【印刷用へ
早期の離乳食がアレルギーの原因(65228、蘆原さん)という話は驚きですが、「ゴリラの離乳は2才で必要器官の完成が12才、だから人の場合には24歳でほぼ必要器官が完成するので離乳は4才ぐらいまででもいい」、という話もあるようです。ちょっと、それは長すぎるかなとは思いますが…。
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ただこの離乳時期が、腸の発達と連動するとすれば、『スポック博士の育児書』は大いに問題ありということになります。草食動物の腸は肉食動物と比して食物繊維を消化するために長いので、肉食主体のアメリカ人と魚介類や草食主体の日本人とでは腸が異なり、離乳時期を同一に語ることは出来ないからです。実際に調べてみると、国(民族)によって離乳時期は半年〜3年とかなり幅があるようです。

また、お乳はずっと成分が変わらないのではなく、授乳中にも吸い始めと終わりで成分が変化しているし、また免疫遺伝で初乳が重要であるとはよく言われるところですが、以後は同じお乳なのではなく月日を経過するたびに変化しているようです。まさに、「乳」で赤ん坊の発達を促しているわけです。
離乳時期は、その民族の食生活と赤ん坊の(器官の)発達時期に大きく左右されるといえます。
ただそれだけでなく、集団にかかる外圧状況と集団の育児共認、育児システムの影響もかなりあると考えられます。

まず、離乳を、卒乳と断乳に分けて考えます。
(参考リンク

>離乳期の子を親が追い払おうという「子別れ」として現われます。そのような親の「切断」によって子は、親がいつまでも自分の要求を受け入れてくれる存在ではないことを悟り、母乳から固形物へとその栄養源を切り替えていくというのです。そして、私がニホンザルを対象として行なった研究において、そのようなやりとりが母子間に確かに観察されました。それは「断乳」といえる離乳の姿でした。
 ところが、霊長類と一口に言っても、そこには約200種類ものサルがいます。もちろんヒトもその一つです。そしてそれらのサルたちの母子関係を動物園などで観察してその結果を比較してみた結果、サルの離乳には「断乳型」と「卒乳型」があるという重要なことがわかってきました。ニホンザルは「断乳型」のサルの代表であり、一方親から拒否の出にくい「卒乳型」のサルがいました。卒乳型としては、子の成長が早くてまたたく間に親から離れていくものと、長い間親子がそばにいて哺乳が長期間にわたるものがいました。そして、私達に近い仲間のチンパンジーなどは、親が子を追い払わないで子の成熟を待つ「卒乳型」の離乳スタイルの持ち主だったのです。<

「卒乳」とは、赤ん坊の器官発達の完成とオキシトシンなど親和物質が途絶えることによって実現されると思われます。十分な充足期間を終えて新しい収束先(充足先)があることが前提になります。チンパンジーについては(69423、村田さん)を参照すると、卒乳まで5年ほどかかり、次第に仲間集団に移行するようです。ただ、このような長い授乳期間を実現しようとすれば、集団全体での育児期間(生殖負担)が長くなるわけで、チンパンジーが外敵闘争に勝利して闘争圧力が下がってからの話じゃないかと思います。

一方、ニホンザルは断乳。オナガサル一般にいえるかどうかは分かりませんが、お乳が出る(オキシトシンの親和物質が分泌される)ということは、器官の発達が十分ではないが、集団の闘争上、母親の育児期間(生殖負担)を短期間に中断させて行動する・移動する必要があったからか…。あるいは、母親との親和や器官発達以上に、子育てする上でそれを上回る必要な何かがあったからか、ではないでしょうか。

現在のニホンザル集団でも、数日で京都・大阪を移動している報告もあり、元来のニホンザルは移動生の高い種であったと考えられます。その意味では、母親から子供を早期に離して一人立ちさせる必要があったでしょうから、闘争圧力の高さから断乳したという理由も頷けます。が、チンパンジーとは違い、集団性を現在まで強く残しているニホンザルであることを考えれば、母親による育児よりも仲間集団での育児、大人の闘争集団に組み込んでの育児のほうがはるかに一人前に育つ=共認回路が太くなったとのいうのが第一の理由ではないでしょうか。

…現在の日本の赤ん坊と母親。私権圧力が低下してきたのでその圧力低下が、「『スポック博士の育児書』は大いに問題あり」と言わせている、という見方も出来るのではないでしょうか。また一方で、「断乳」してからの育児不安、母親に代わる充足場のなさが断乳を躊躇させているという見方も出来ます。実際に私の聞いている範囲でも少しずつ「卒乳型」、あるいはそのような考えが増えているようです。

本源回路の土台である母親との親和がしっかりと出来るのであれば、私は「卒乳型」でも「断乳型」でもいいと思うのですが、現実社会において一方で、底知れぬ社会不全感が上昇しています。その不全感から赤ん坊収束しているとしたら、これは赤ん坊にとっても母親にとっても不完全な親和回路しかできないわけで、むしろ本源回路再生にマイナスの危険性があります。
いつ断乳するか、あるいはいつ卒乳するかの議論より、やはり、社会全体の育児システムの再生をどうするのかの議論の方が重要でしょう。
 
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