子供を叱れない親が増えたのは何で? 子育て真っ最中の母親だけでなく、孫のいるようなお年寄りからも選ばれるなんでや露店の人気お題であり、再度考えてみたい思う。
第一には叱る中身に自信がないから。現在の母親が子供の頃、つまり’70の豊かさの実現以前は、私権という統合軸が明確に存在したため、親は私権獲得のため、「勉強しなさい」等「〜しなさい」「〜してはいけない」と自信満々に子供に叱れた。子供もその必要性や目的を問うこともなく、言われたとおりに従っていた。
私権原理から共認原理に大転換した現在では、親は自分自身の子供の頃とダブらせて、子供を叱ってみるものの、思う通りにならない。逆に子供から「何で勉強しないといけないの」と聞かれても全く答えられない。
第二に子育ての場の変化が挙げられる。昔は祖父母が同居していたり、親戚が頻繁に来たり、また近所に恐いおじさんがいたり、大家族プラス地域全体で子育てをしていた。今では核家族化し、母子べったり関係が当たり前となった。上記の時代の転換から子供が自分の思う通りにならないという子育て不安が母親には常に存在する。子供を母親の思う通りに無理やり従わせようとすると、育児ストレス、ヒステリー、虐待とエスカレートする。逆に迎合しだすと、機嫌取りやかばうことにばかり気を使い、子供にとっては家庭は、楽チンな無圧力空間と化し、外に出たくなくなる。すると関係能力も身につかないし、引きこもりに至ることも多い。
このように考えれば、現在の家庭内では親が子供を叱れないのが普通であり、叱ることが必要なのではない。時代がどう転換し、昔と何が違うかを、「何でだろう」を親子でお互いに出し合いながら、共に考えたり、調べたりすることが必要なのである。
さらに昔と違い生産課題を包摂しない現在の家庭は、現実の圧力に晒されることもなく、教育機能を完全に失っている。その家庭内で親の旧い常識で子供を縛り付け、囲い込むことは子供をダメにするだけである。将来子供が社会に出る頃には、どのような時代になっているのか、そのときに何が必要なのかをみんなで考える。このなんでやのような場を広めて、みんなで新認識を身につけていくことこそが望まれているのである。 |
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