生物学を切開する
81945 生物学に潜む危うい価値観の諸現象
 
吉国幹雄 ( 52 鹿児島 講師 ) 04/12/02 AM00 【印刷用へ
ドーキンスの『利己的遺伝子』は、明らかに個人に絶対的価値を置いた『個人主義』という倒錯観念に、『利己的』という価値観で色付けした「頭の中だけの遺伝子」を作り上げたものです。
最近ではさすがにこれはおかしいと指摘する生物学者も多くいますが、しかし、しばしば生物学には学者(あるいは専門学会)の持つ価値観が投影され、その価値観に基づいた発見や論証がまだまだ多いのではないでしょうか。
幾つか、事例を上げてみます。

1.価値観を有した遺伝子捏造
『利己的遺伝子』だけでなく、『恋愛遺伝子』『つがい遺伝子』『浮気遺伝子』など相変わらず多い。人間の欺瞞観念(頭の中だけの観念)である『恋愛』に該当する遺伝子を科学者が作り出して「発見」という。あるいは、人間の社会行動は規範・共認に基づくものがほとんどであるにもかかわらず、生まれながらにして持っているはずだと「遺伝子」を作り出す。
その結果、何にも行動指針も現実突破の可能性も開けないどころか、「遺伝子発見して終わり」の成果でとどまる。

2.個が原点であるという思考
デカルトばりの「考えるコギト」=自分→「個」を大前提にして現象を捉える思考するドグマ。これは相変わらず根強い。
・生物は集団や種を単位として存在しており、淘汰圧を個体間闘争に第一に求めたがゆえに、ダーウィンは「種の起源」といいながら、自然外圧や何よりも種間闘争圧力を組み込めず、種の進化を説明できていない。
・「個が集まって集団となる」というのは一見正しそうで、実は現象事実を説明できてない。例えば、プランクトンの中には海水中で発光するものがあるが、単独では光らないが集団となったときに初めて発光する。個の機能が集まって集団の機能が発現するのではなく、集団となって発現する適応機能がある。生物が複雑系と呼ばれる理由の一つ。
私は人類の生み出す新しい認識もそうだと思う。個人の認識のΣが皆の認識なのではなく、皆が集まってできた集団(場)が新しい認識を生み出していくのだろう。

3.「生まれ(遺伝子)」か「育ち(環境)」か
現在の生物学でも議論の真っ最中のテーマ。引き合いに出されるのはうつ病などの精神病・神経症の発現、あるいは知能の問題。どちらが決定しているのかという論争と、総合説に代表されるように「環境と遺伝子」の組み合わせで決着を付けようとする動きがある。知能は持って生まれたものと環境との相互作用によって決定されるというわけだが、ここにもドグマが二つある。

一つは、「生まれ」を一つの遺伝子に還元しなければ説明できないとするドグマ。そもそも「遺伝子」がこれほど勝手に価値付けられる背景には、発現・発見された「たんぱく質(アミノ酸)」と一対一で対応できる意味のあるものを「遺伝子」としたところにある。ところが遺伝子共同体はそれぞれが繋がって存在しているのであり、たんぱく質として発現されない「一対一では意味のよく分からない」ものが存在するのは当たり前。
また、遺伝子だけでなく細胞基質の関わりもあり、決して遺伝子だけが進化や形質発現の担い手ではない。

もう一つは、外圧と内圧を別のものとして想定している。自分と他者、主体・客体の二分法から抜け出せない。外圧適応体とは「外圧=内圧」の存在なのであって、決して両者が(別々に)総合的に関わって進化をとげたものではない。

このように事例を見ていくと、全て共通することは、結果として統合理論にならない=新しい可能性を開けないということでしょうか。
だからこそ、価値観を廃した事実統合の理論が今求められていると思います。
 
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