収束不全:やりたいことが見つからない
80872 実存主義の思想家 ハイデガーの思想1
 
阪本剛 HP ( 31 千葉 SE ) 04/11/15 PM11 【印刷用へ
 ここでは、20世紀の最大の思想家ともいわれる、ハイデガーの思想を見てみる。

■マルティン・ハイデガー(1889〜1976)
 ハイデガーは教会の堂守(番人)の息子として生まれた。フッサールの弟子・協力者として出発した。弟子のハンナ・アレントと一時的な恋愛関係があったことが知られている。主著は『存在と時間』など。
 ハイデガーは、第二次世界大戦前のヨーロッパを、人間が自分自身の根拠を失った時代として捉え、生の根拠、意味を問おうとした。そして、人間を根無し草の状態に追い込んだ時代として、近代を批判した。
 ネオナチが出現したヨーロッパでは、ナチスに協力的だったといわれるハイデガー哲学への評価・判断は、現在的問題でもある。

■20世紀初頭のヨーロッパの不安
 ハイデガーの哲学の背景には、当時のヨーロッパを覆っていた自信喪失、ペシミズムがある。

 その最たる原因は、第一次世界大戦の経験である。
 文明の中心を自負していたはずのヨーロッパで、人類史上最も悲惨な戦争が、科学技術という理性の産物を駆使する事によって引き起こされたことは、文明、理性に対する不信を生んだ。

 例えば、ドイツの哲学者オスワルト・シュペングラー(1880〜1936)は、第一次世界大戦後の1918〜22年に、『西洋の没落』を著す。
 シュペングラーは、この著書の中で、文明を有機体ととらえ、生物が誕生し、栄え、やがて死に絶えるように、文明も、生成、隆盛、没落するのであり、ヨーロッパ文明の没落は必然だとした。

 このような理性、進歩といった近代の価値観への懐疑、非合理や神秘主義への傾倒といった当時のヨーロッパ社会の空気からハイデガーの哲学は生まれた。

■「世界・内・存在」「現存在」
 ハイデガーの哲学は、一言で言えば「存在の意味の探求」である。 
 デカルト以来の哲学は、存在=モノがあり、モノが三次元の座標で表現されるような「空間」の中にある、と考える。人間はその空間の外側にいるような存在である。
 
 しかし、ハイデガーは、人間は、「世界の、中に、ある」=「世界・内・存在」だという。世界の中にある、ということは、世界の中で、人間が人間やモノと出会うことである。
 世界の中で私達が出会うモノは、抽象的な空間に、抽象的に存在しているわけではなく、常に「〜のためのモノ」というような意味を伴って現われる、という。例えば、コップは、水などを飲むためのモノ、というような意味を伴っている。

 ハイデガーの「世界・内・存在」は、ユクスキュルの「環境世界」(ウムヴェルト)の概念から影響を受けている。「環境世界」とは、行動の主体としての生物にとって、周囲の環境がどのような意味を持っているか、という観点からとらえる考え方である。
 例えば、ダニにとっては、動物の血の臭い、皮膚の柔らかさ・温もりといった、ダニにとって意味のあるものによって、ダニの環境世界が構成されている。

 人間にとって、世界は意味のつながり=「意味連関」の世界であり、その世界の中で出会うモノは、「道具存在」(フォアハンデンザイン、ドイツ語で「手元にある存在」というような意味)というあり方で現われる。

 ハイデガーは、上のようなモノ一般の存在の仕方に対して、人間は、「今ここにある」存在、「現存在」(ダーザイン)として存在するという。この「現存在」という言葉には、存在の意味をより明らかにするような存在、というニュアンスがある。ハイデガーの哲学は、彼独自のこのような造語によって展開される。

 
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