交叉婚は、「男発の独占の性関係」とは言えないが(母系氏族間の交叉総偶婚)、結果的には女の性的商品価値=婚資が登場したのは確かで、それは交叉婚の成立及びそのシステムに解く鍵があると思われます。
この間の投稿にあるように、同類闘争圧力の高まりを受けて、集団統合力を強化する必要から、氏族毎の全員婚である兄妹婚から交叉婚に転換したわけですが、具体的には遊牧部族からの戦争圧力を受けて、農耕部族は部族連合(=軍事連合)を組んで防衛する必要があったからではないだろうか。(一方の狩猟部族も同様の圧力を受けて勇士婚に転換した。)
1万数千年前に洞窟から地上に出た人類の婚姻様式は、それまでの全員婚(チャネリング)を踏襲しただろうし、1万年〜8000年前頃には集団規模の増大から氏族単位に分割したが、やはり氏族毎の全員婚(兄弟婚)を踏襲した。
この頃既に西アジアでは農耕・牧畜も始まり、8000年前頃には最初の遊牧部族も登場し、6000年前頃には草原地帯にひしめき合い初期掠奪闘争の痕跡もある。(52477、52832)
遊牧は、小集団(小氏族)で移動する男原理の父系闘争集団であり、草原をめぐる縄張り侵犯から小競り合いは頻発したであろう。特に乾燥期は激化し、防衛軍を結成し部族連合に組み込む(服属させる)ことで止揚した。この闘争(戦争)圧力は農耕・牧畜部族にも伝播し、それに対抗する必要から部族連合⇒交叉婚に転換したのではないだろうか。
交叉婚はかなり複雑で(77613参照)、例えば部族内にA〜D氏族があるとして、A男とB女、C男とD女の組み合わせとした場合、問題はその子供で、B女の女の子供が生殖年齢(13歳頃)に達した時、そのままA男が相手なら父親との関係になり交叉婚の原則に反する。だからと言って子供だけをC男に組替えると、その氏族の女全員の原則に反する。
そこでB女の子供が全員生殖年齢に達して、C男に組替えたのではないか。つまり生殖寿命を40歳くらいとすると「生涯2回婚」になり、さらにその次はA男というように繰り返す。(アボリジニの老若交代の2回婚(77088)はその名残であろう。)
問題はもう一つ、子供全員が成人し新たな組み合わせになるまでの待ち状態(=空家状態)の発生がある。女の空家状態は、最大の存在理由欠乏が宙に浮いてしまうので深刻で、族長の集中婚に組み入れて解決したのではないか(初夜権の起源)。しかし男の空家は、モグラ以来首雄以外の男の性は封鎖されてきたことから放置されたのではないか。
この男の空家状態から性欠乏が増大し、女の性的商品価値=婚資が発生した。加えて、男の通過儀礼等に伴う序列評価も自我欠乏を増大させ、戦争圧力から集団自我も発生し、次第にチャネリングが不可能になって、自我の性が混入していった。ここに男の自我発の性の萌芽を見ることができるように思う。 |
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