日本人と縄文体質
76379 日本人の観念探索は潜在思念と現実の肯定視を導いてきた
 
山澤貴志 ( 39 鹿児島 ITコンサル ) 04/08/12 PM07 【印刷用へ
>振り返って歴史を遡ってみたとき、日本人には「自我」とか「如何に生きるか」のような思考が極めて希薄だったのではないでしょうか? 75049
>日本人が「如何に生きるか」の思考が希薄だったなどとは言えない75558

日本人と西洋人の観念収束力の違いは?といわれれば、西洋のほうが東洋よりも観念収束力は強いとみるのが一般的かもしれません。西洋文明に起因する精神病理とはいえ、デカルトの探究心やギリシャ以来の膨大な観念の体系はまぎれもなく「文明の中心」であった。それに比して日本人の思想はどうであったか、そして生物史的なパラダイム転換⇒収束不全を乗り越えていく観念収束が登場する基盤はユーラシアの最果ての地においてあるのだろうか?24848において既に「東洋的な構造認識の先駆形態」の存在については言及したが、改めて通史的に考えてみたい。

大衆の思考の主軸をなしていたのは、原始以来の精霊信仰であり、舶来信仰の代表である仏教も地蔵信仰や神仏習合に代表されるように「八百万の神」に取り込まれてきた。中沢新一は「精霊の王(講談社)」の中で、インド仏教ではアーラヤ識(潜在思念の基底部分を意味する仏教概念)を正邪の二元論でとらえる認識体系が主流であるが、日本仏教は生死は即涅槃であり、煩悩は即解脱であり、無明すら即明であるという一元論的な認識体系(あらゆるマイナスが即プラスに転換可能であるという、相即論)へと変化したと述べている。

また儒教においても、朱子学や陽明学のように世界をどう認識するかという認識論を主題にした学問もありはしたが、結局は「おとこらしさ=ますらおぶり」を肯定する賀茂真淵の国学、「もののあわれ」を肯定する本居宣長の古学へ、つまり観念以前の潜在思念の肯定思想へと深められている。「本居宣長にみる旧観念無用」75630

このふたつは共に潜在思念を観念的に追及していくと、その果てに観念無用の地平へと到達し、その先には徹底した潜在思念の肯定、現実の肯定という意識が登場して来るという思考様式をもっている。禅宗がその典型ではあるが、儒教、平安仏教(天台宗・真言宗)、中世仏教(浄土真宗・法華経)等流派を超えて、この「潜在思念の肯定視、現実の肯定視」は共通した思想潮流といっていい。

第2次世界大戦中の「近代の超克思想」もこうした流れを汲んで展開されている。西田幾多郎はデカルトの独我論を批判した分析哲学のマッハや、実存主義のハデッガーの成果を踏まえた上で、座禅体験をベースに「主もなく客もなく、知識と対象が全く合一している状態」を純粋体験と呼び、それこそが事実であり唯一の実在である展開する。彼は西洋の観念論全体を徹底した観念的思索の果てに捨て去っている。

更に戦後、構造主義や実存主義が流行したが、それも「観念探索の果てに潜在思念に帰る」という思考様式故であり「真理より現象」「観念より実存=実感」というテーゼが日本の知的風土に合致したからだとも言えそうである。

つまり潜在思念レベルにおいて、豊かな共認回路を持つ日本人であれば、舶来観念の思索の先に常に、現実否定の舶来観念無用=潜在思念肯定=現実肯定の地平に到達するというのが、日本知識人の一般特徴といえるのではないでしょうか?そして知識人がこうしたスタンスを取ったその背景には極めて現実肯定的な大衆実態、庶民の実像があったからだと考えることができます。
 
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124505 潜在思念と肯定視 あずみ 06/07/01 PM04
77042 共同体への帰属意識 鈴木龍也 04/08/27 AM00
76665 日本人の意識の根源は? 匿名希望 04/08/18 PM02

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