私権社会の婚姻制
67759 日本人はどのように恋愛観念を受容したのか?〜明治編@
 
山澤貴志 ( 38 鹿児島 ITコンサル ) 04/02/09 AM00 【印刷用へ
先日のなんでや劇場では「これからの男女関係は?」が扱われ、改めてサル以来の男女関係を振り返り、恋愛がイデオロギーに過ぎず、しかも日本の庶民層においては戦後60年(90年半ばからは実質衰退過程に入っていることを考慮すれば50年)の命しか持っていないことが明らかになった。
庶民が縄文以来の夜這婚=集団婚の実質を持ち、恋愛観念から無縁であったことは勿論のこと、武士階級といえども家意識で統合されていた訳で、結婚の実態は見合いであったことを思えば、江戸までは間違いなく男女関係の中心軸は性市場での恋愛ではなく、規範=役割意識に支えられた和合共認であったことは疑いの余地がない。(現に江戸時代の庶民に受け入れられた心中ものは、専ら私権意識やら身分意識に阻まれた男女和合を問題にしていたし、好色ものは集団婚なき都市における代替システムともいうべき遊郭を舞台にした奔放かつ粋な世界を描いたものである)

なんでや劇場でも問題として取り上げられたように、日本人になじみのない恋愛観念が定着するには、不倫をタブーとする厳格な一対婚規範が定着する必要があるが、日本人はどうしてそんな窮屈なものを受け入れてしまったのだろうか?自我の性が衰弱し和合共認が再生されつつあるにも関わらず恋愛観念の呪縛が解けないでいる現在、一対規範と恋愛観念受容の日本近代史の解明は、その突破口を考えるヒントを与えてくれるかもしれない。

まずは明治政府における婚姻制度改革の流れをおさえてみたい。明治民法の規定には「妻は婚姻によりて夫の家に入る」「夫は妻の財産を管理す」「家族が婚姻を為すには戸主(家父長)の同意を得ることとする」とあり武士階級の家意識が引き継がれたものになっている。しかしこの民法制定の前にフランス人法学者ボアソナードの起草に手を加えた旧明治民法が存在する。この旧明治民法は私権を広範に認めるものになっており家父長制度に反する内容を多く含み、「民法出でて忠孝滅ぶ」と大反発にあい、(自由民権色の強い)フランス法学よりは(民主主義後進国であった)ドイツ法学に依拠した作り直しが行われ明治31年施行となった。このように明治の支配階級においてはフランス流の急進的な自由民権思想(個人主義的で男女平等意識も含まれており家父長制を否定した夫婦同権論)と家意識を中心に置いた皇室中心主義的な思想の相克の時代であったといえる。前者の代表は福沢諭吉、森有礼らであり、後者の代表は初代東京帝国大学学長の加藤弘之であった。

「一夫一婦ともに老いて同じ墓に入るを最上の倫理と認めるべし。表向きの縁談なればとて当人の気の進まぬものを強いるは娼妓に売るのと変わらない。わが国の男女を憂鬱と殺風景から脱するには両性交際を自由ならしめ、相近づきて相見る集会の仕組みを設けるべし」・・福沢
「富貴なものたちが家に複数の妾を抱えている状態は問題である。妻には貞操を強要しながら自らは情欲をほしいままにしている。政府は本妻に子がない場合は妾の子に家を継がせることをよしとしているが、それを訂正すべきではないか」・・森
「夫婦対等は原理的にはそうかもしれないが、今日の欧州における交際の実態は婦権の方がかえって夫権を超えている。このままでは日本も婦権強大の弊害を被ることになる」・・加藤
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_67759
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
日本婚姻史1〜その8:日本人はどのように恋愛観念を受容したのか?〜明治編 「共同体社会と人類婚姻史」 10/03/30 PM09
現行の『婚姻制度』〜その中身と成り立ち(8) 日本人はどのように恋愛観念を受容したのか? 「感謝の心を育むには」 10/03/23 PM00
228565 「恋愛」という代償充足から脱却する時代が来た! 匿名希望 10/03/19 AM11
226730 恋愛観念の受容と日本人♪ これんじ 10/02/18 PM10
108594 結婚という概念変化を妨げているのは性の問題?それとも、制度? 高橋可奈 06/04/06 PM05
107231 恋愛至上主義が精神破壊の始まり 馬場康一郎 06/03/12 AM10
107212 統合原理としての一対婚と夜這い婚 大嶋洋一 06/03/11 PM11
107124 日本における一対婚の普及は、富国強兵の国策→観念主導 平野令 06/03/10 PM10
99843 活力と恋愛観 匿名希望 05/10/27 PM01
92023 夜這いの減少 上山昇良 05/06/03 PM11
89821 みんなで作っていく 立石裕美 05/04/30 PM11
恋愛 「なんで屋店長への道」 05/03/02 PM09
85993 フロイスの日本覚書 喜田育樹 05/02/20 AM00
84770 市場原理の導入によって婚姻形態が変容したのではないか 大森義也 05/01/28 PM08
84435 恋愛、一対婚の根幹ともいえる貞操観念の成り立ち 斎藤一浩 05/01/22 PM10
83110 神の許しを得ない日本の結婚 石川笑美 04/12/24 PM08
82903 マスコミや国家に管理されてきた婚姻史 田野健 04/12/20 PM11
67760 日本人はどのように恋愛観念を受容したのか?〜明治編A 山澤貴志 04/02/09 AM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp