採集・漁撈・狩猟から栽培・牧畜・遊牧へ
58525 縄文・弥生論争への視点
 
北村浩司 ( 壮年 滋賀 広報 ) 03/07/11 PM09 【印刷用へ
現在弥生時代開始が500年遡るのではないか?との論争が花を賑わせている。しかし私はこの論争自体に少し違和感を感じている。

現在縄文時代と弥生時代を分かつモノサシは、稲作の開始、鉄器、土器の変化、階級社会化等に求められている様だ。しかしこれらの視点は次のように連関付けられている。

稲作の開始=農耕の開始→生産力の上昇と開墾⇒鉄器(鉄農具)の普及⇒余剰生産物の蓄積→階級分化、という図式である。(因みに土器の変化は自然信仰を反映した紋様から、機能性重視の形態への変化として連関付けられる)
つまりその背景にあるのは、マルクスの提起した、「生産様式が社会構造の根底にある」という見解である。あるいは近代経済学も含めて生産力の発達が文明の発展の根底にある、という見方である。
言葉を換えれば米を日本人の原点としてみなす見解ともいえる。

従って必然的に各指標の中でも「稲作の開始」が決定的に重要なものとされている。
しかし私はこの見解自体に異論がある。それは農耕=栽培と採取の間には連続性も存在するからだ。極端な言い方をすれば湿地にもみを撒けば稲は生えてくる。あるいは芋そのものを埋めればイモは生えてくる。それくらいの知識は採取文明にもあったはずだ。だから過去の投稿でも明らかにされているように起源を遡れば農耕の開始はかなりの年代まで遡れる。(世界史的には現在分っている範囲でも8000年から1万年前)また縄文時代においても現に三内丸山ではクリの栽培が行われている。従って農耕=栽培の開始が社会構造の転換において決定的であるという根拠が希薄である。従って農耕(稲作)の開始とそれに付帯する指標で歴史を区分することは本質を見誤る危険性を持つ、と思う。

私はこの点において注目すべきは社会統合の様式ではないかと思う。人類社会は共認によって統合されるが、私権社会は土地と女の私有権を共認し、それを巡って合い争う事で勝者敗者が生み出され、それが身分秩序のヒエラルキーを生み出し、最終的にはその力で統合される社会である。(従来の)弥生時代史を俯瞰すると、弥生前期に環濠集落登場つまり、集落間の(おそらく武力を含む)同類圧力が高まっている。そして後期には倭国大乱そして邪馬台国の登場にいたる。つまり弥生時代とは、私権圧力とそれを背景にした武力闘争の圧力をへて私権時代確立への過渡期の現象を示す時代であり、この見方の方が本質的と思われる。従ってこの弥生・縄文の時代区分論争においても中心に置かれるべきは、私権の共認と私権圧力の高まりを示す諸現象群で、これによって時代区分とその時代の位相を考察すべきではないか、と思う。
 
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