生命原理・自然の摂理
5825 死の戦略、その3>鈴木さん
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/07/05 PM08 【印刷用へ
鈴木さん、有性生殖の意味について、興味ある視点を追加していただきありがとうございます。

>今までは1倍体から2倍体への変異と言えば遺伝子の安定に寄与するのだと思っていましたが、細胞の役割分担の機能を獲得するための重要な変異である様です。<(5800、鈴木さん)

最初に出現した真核生物は、原核生物と同じようにゲノム的には一倍体細胞生物であったのでしょう。現存生物としては、アメーバやミドリムシ、細胞性粘菌、酵母(二倍体もありますが)などの菌類、クラミドモナスなどの藻類などがあげられるでしょうか。そして、一倍体真核生物の中から融合(接合)などによって一時的に二倍体になる現象が現れてきた。例えば一倍体で増殖している(分裂)酵母は、栄養分がなくなったり、温度が下がったりと環境条件が悪くなった時、接合することによって二倍体となり、胞子を作って休眠状態に入る。クラミドモナスも環境条件が悪くなると接合(生殖細胞化)が起こり、二倍体化して胞子を作る…。

この二倍体化は、鈴木さんの言われるようにゲノムの保持という面で有利であったのでしょう。すなわち一倍体のままでは突然変異が起こった場合、それが直接的に形質に現れてしまうため、多くの場合は変異は「死(ネクローシス)」に繋がる。ところが、二倍体ではどちらかが影響を受けずに残っているので安定性が高くなる。と同時に、さまざまな突然変異を保持することが可能となったということです。つまり適応態としての可能性が高くなるということでしょう。もちろん、DNA量が増えること(染色体が線状になったことも深く関係すると思いますが…)によって、いろいろな反応を精密に制御する機能を持つ機会も増えることとなったと思います。細胞としての高い安定性と変異可能性の保持と新機能の獲得ということでしょうか…。ところが、この二倍体化と安定性と機能の獲得とを組み合わせていくと、少し問題が起こってきます。

ところで、多細胞生物への進化の途中と思える二倍体単細胞生物として、ゾウリムシがいます。ゾウリムシは細胞内器官が発達していて多細胞生物一個体と間違えるほどです。(行動するための繊毛。光を感じる眼点と呼ばれる視覚系。口や肛門…。)一つの細胞として極限にまで分化した姿なのかもしれませんね。二倍体単細胞生物は普通は無性生殖で殖える機構を残していますが、先ほど述べたように、環境条件が悪くなると接合を行います。もっとも、ゾウリムシでは無限に分裂できるのではなく500〜600回で死んでしまうそうです。恐らく、細胞内器官を必要以上に高めたため多くの活性酸素によってDNAが傷つき、これが二倍体の安全装置の限界なのかもしれません…。

もちろん、分裂回数の限界点に達する前に接合をして遺伝子の組換えを行うのですが、やはりそのきっかけは環境条件でしょう。環境といえば栄養分と他の種(病原性のあるウィルス)の両方の条件でしょうか。遺伝子に(突然)変異が起これば、違う防衛機能を獲得できる可能性が開けるのでしょうが…。二倍体化・線状化によって、DNAを増やし新たなる機能を獲得していったが、機能が複雑になるということは、直接的には代謝系(酵素系)の高度化に繋がります。酵素といえば、人間などのホルモン系を見ても分かるように、Aという酵素に対してそれを促進するBという酵素、それを制限するCという酵素…というように、一つの機能に対して複雑な酵素系ができあがっていきます。だから、ある酵素の遺伝子が変異を起こし、それが協同的に働くためには他の関連する遺伝子も変わらないと、すぐには活用できない、へたをすると細胞にとって「死」に繋がるということでしょうか。それゆえ、二倍体化し高度な機能を獲得した生物ほど修復系を発達させているのだと思います。(逆に蛇足ながら、問題の代謝系を捨て去り、より身軽になって変異促進態として発達してきたのがウィルスという気もします。全くの仮説ですが)。そうすると、二倍体化し細胞内器官を発達させ、安定性を増したのはいいが、いくら突然変異を保持するといっても、それではウィルスの防衛には追いつかない(進化的に変異可能性が小さすぎる)、つまり絶滅してしまうことになるわけです。だから、接合により遺伝子の組換えを行うという戦略をとったのでしょう。

>そして、見方を変えると細胞の役割分担の機能を複雑にするためには「死」の機能が必要になったとも言えるのではないでしょうか。そして同時に種としての存在を維持しながら「死」を超えるためには、一度減数分裂によるハプロイド細胞への回帰も必要になる。この仮定に多様性の獲得機能も取り入れるとは感嘆するしかありません。有性生殖の意味には多様性の獲得と同時に複雑性の獲得(高度化と言っても良いかもしれない)があるのではないでしょうか。<(5800、鈴木さん)
 
私は、役割分担の機能を複雑にするために「死」の機能が必要になった、というのは少し先走りかなとは思いますが、免疫系を見てもそういう側面は確かにあると思います。また、発生過程における「形態形成」に関わるアポトーシスの重要な機能もありますので、役割分担が現実の形質と発現するためには当然「死」の機能が前提にありますね。ただ、「死」の機構の起源は「有性生殖」と密接に関係あると思います。先ほど(突然)変異に関する協同性という問題を述べましたが、にも関わらず遺伝子を組替えるというのは、実は生物にとっては一発逆転の戦略であって、そのこと自体が「死」と直面する大きな選択であるということだと思います。つまり、シャッフルすることによって出来上がったものが、成功するとは限らないわけですから…。「有性生殖」とは、そもそも原始生物にとっては「生死」をかけた危険なかけだったのではないでしょうか。それほど根源的な「性」戦略であったように思います。
 
P.S.またゾウリムシの接合における細部の仕組みに目を移せば、既に死の機構が確立していることが分かります。また、細胞性粘菌の生活環における胞子を巡る死の機構も考えさせるものがあります。この点についてはまた後日触れたいと思います。
 
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