心の本体=共認機能の形成過程
5824 「獲得された無力感」と「効力感」その2
 
槇原賢二 ( 30代 大阪 塾講師 ) 01/07/05 PM02 【印刷用へ
では、内発的動機づけをはたらかせて、効力感をもちながら課題をすすめられる要件としてはどのようなことがあるでしょうか。

心理学者には、効力感の形成には、まず、努力の主体、行動をはじめ、それをコントロールしたのは、ほかならぬ自分であるという「自律性の感覚」を持つことが重要であるとの意見が多くみられます。

例えば、以下の実験に対する解釈にみられます。
課題の成功に対して、「ごほうび」などの報酬を与えることを事前に知らせておくことは、一時的には活動は活発になる。しかし、その後はむしろ、課題に対する活動の意欲は低下する。低下を防ぐには、次々に「ごほうび」の質を上げなければいけない。そして、最後には、「ごほうび」が与えられない課題に対しては意欲や興味を示さなくなる。また、教師が「点数をつける」などの成績の外的評価をすることは、内発的な興味の低下を招き、さらに、より高い課題に挑戦してみようとする向上心を弱めてしまう。

上記の実験に対する心理学者の解釈は、以下のようなことです。
金銭、ごほうびなどが与えられるとそれを得ること自体が目的となったり、外的評価が与えられるとなるとその基準に合わせるようになり、行動の主体が自分ではない、自分で自分の行動をコントロールできていないとの感覚が生じ、内発的動機付けが弱められるとします。よって、効力感を感じ、内発的動機付けが生じるには、自分は自分の行動の主人公であるという感覚が大事である。

しかし、上記の実験からの解釈は、個人主義思想の傾向が強く、典型的な個人の達成志向社会に生きるアメリカの心理学者からの考察です。この点に関して、疑問があり、問題性を感じます。

上記の実験では、子供は点数をつける教師を「管理者」ととらえているはずです。そこからの評価では、課題を自分のものとしてとらえることはできません。そういった課題に対しては、効力感が生じないのも当然です。すぐにまわりに影響されない「自律性の感覚」が重要であるとの結論には疑問があります。評価でも仲間とか、年長者といった同一視できる対象からの評価はむしろ、効力感を導きます。仲間からの好意的な反応、暖かい交流、自分の成し遂げたことが他の人の役に立った、喜んでもらえたことは、ある意味で評価です。そういった「実感ある評価」はむしろ、達成感を増幅させ、効力感を導き、仲間から必要とされているという確かな手ごたえは効力感を高める際、不可欠に思います。

競争関係での条件では、勝った者は、自分を必要以上にえらいと思い自分に必要以上に自分にたくさんの賞を与え、負けた者に対しては必要以上に価値を低くみる、そして、自分が負けると、自分の能力のなさを必要以上に責める傾向がみられます。そして、結果は自分では変えられない能力や運によって決まると考える傾向がつよくなります。このような条件では効力感は持てません。

効力感を感じるには、自分やまわりに対する肯定的な見方が必要です。そのためには、「自律性の感覚」というよりは、仲間どうしのやりとり、できる者ができない者に教える、年長者が年少者に教えるといった関係の中からくる「実感ある評価」が必要に思います。

教える教えられる関係では、教えることで、教える者に自分に対する自信や、自分に対する肯定的なイメージの発達が促されることが心理学的にも認められています。

また、ひとつの課題の達成をめざして、仲間どうしがやりとりする協同学習条件では、個別学習条件で学習した子供に対して、いくつかの効果が認められています。
@自分は友だちから好かれていると感じる子供の割合が高い。A友だちは喜んで自分を助けてくれる存在であると感じる子供の割合が高い。B学習場面に対する肯定感をもつ子供の割合が高い。

参考文献:『無気力の心理学』『人はいかに学ぶか』(波多野誼余夫、稲垣佳代子)
 
  List
  この記事は 5673 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_5824
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
6002 [効力感」の得られる社会の実現を。 槇原賢二 01/07/14 PM09
5841 自律性の感覚 野村徹 01/07/06 AM07

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
「日本は世界5位の農業大国〜大嘘だらけの食料自給率〜」の書籍紹介(1)
日本の農業は過保護…これ、大ウソ!
地球環境の主役 植物の世界を理解する?〜森への同化意識を継続させたアジア農耕部族〜
農業・百姓を通して見た現代人−A
緑と人間−A
『わら一本の革命』 @科学技術の完全否定と誰でもやれる自然農法
EMのエネルギー整流力とは?
【汚染米・食料危機に備える】(2) 備蓄をどうする?
「緑の革命」の事例: 貧しい国を助けたいという善意と情熱だけでは、市場派に利用され片棒を担ぐ事になる
日本の「食」もアメリカに支配されている
日本のマスコミでは報道されない「遺伝子組み換え作物の健康被害」
日本での人工物質の影響は想像以上
ヤマザキパンの添加物〜パーマ液の2剤と同じ物質も!?〜
コップ2杯の海水が飲めますか?〜カップラーメンの危険性〜
地球上でマクドナルドのハンバーガーを「食品」と認識する生物種は人類のみだった!
衝撃!コンビニおにぎりは腐らない
Re:環境問題への関わり方
なぜ、「問題」は解決できないのか?2 「問題」の捉え方自体の欺瞞性
環境圧力を感じる場A>消費の場に環境問題は圧力として働くのか
温暖化は嘘、氷河期が到来している!A〜「地球温暖化」と言う作り話は切迫した真の問題を隠すための煙幕
法律の数字は目安?
「電子レンジ」の使用を禁止した旧ソビエト
電子レンジの恐ろしさ
JRが口を閉ざす“のぞみ号”の凄まじい電磁波〜新幹線は窓側、クルマは後部座席が異常数値〜
コンクリート・ストレス〜コンクリート建築は、なぜ問題なのか〜
子供の脳を破壊してしまう危険な化学塩
都市鉱山の活用法〜単純な技術で高含有比率の粉砕物を取り出すことが可能〜1
マグネシウムがエネルギーを生む社会!!
『次代を担う、エネルギー・水資源』水生圏の可能性、水力エネルギーの活用<番外・予告編>.火山列島・火の国日本の可能性〜高温岩体発電・マグマ発電が国産エネルギー資源の切り札!〜
微生物による放射能除染を反エントロピー物理学で見事に説明できる(その2)
テスラの技術はフリーエネルギーへの転換が出来るので封印されたのです
Keshe財団が開発した重力と磁場を同時に保持しているシステム

『るいネット』は、43年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp