原始共同体社会
5293 原始社会のギブ・アンド・テイク
 
三ヶ本万州夫 ( 壮年 兵庫 講師 ) 01/06/15 PM01 【印刷用へ
 原始社会での物々交換は、現代人が考えるような、等価値の物品同士の単純な交換ではなく、命がけで入手した交易品には万感の思いが込められていたはずです。それには言わば、贈与者のマナ(霊的な力)が込められている。俗に言えば「心のこもった贈り物」ということになり、当然功利的な打算など優先されることもない。

 「人々が、まだ狩猟をおこなっていた時代には、人間が手にすることのできる富や財産のなかに、およそ堅固なものは、なにひとつ存在しなかった。ときたま獲物として手に入る動物も植物も、生命を育て、いつくしむ森の神のものだった。人間は森の神からこれらの獲物を「贈与」として受け取るのだ。・・・そして人間はそのような贈り物をしてくれる、森の神の好意に答えて、さまざまな返礼をした。人間が自然にたいしていつも礼儀深く、感謝の気持ちをおこたらないかぎり、森の神は人間への贈与を続けてくれた。ここから、自然のエチカ(倫理)が発生したのである。」
(中沢 新一)
 
 アイヌは単なる狩猟・採集民族とは割り切れないほど、幅広い交易活動をしていたようです。彼らにとってもまた、交易は単なる経済的行為としての物々交換ではなく、「贈与」の思いが込められていたようです。

 「物交(ウタサレ)だって贈答だって、お互いが出し合う品物にゃ、それぞれの人の精力が入ってて、相手の人にわたるわけよ。そう考えなくちゃ、物交とか贈答した後に、何とはなしにお互い様がとろりとして仲良くなるわけが、わからなくなるじゃないかね。」  (アイヌの長老の言葉)

 こう見ると、アイヌの交易はドライな商売であるはずがなく、異民族との間にも、期待・応望の関係をベースに置いていたことが想像できます。事実、アイヌは人種的偏見の少ない民族だと言われています。

 さて驚くべきことに、この、ギブ・アンド・テイクに基づく互酬性のルールは、人とカムイ(神)との間にも成立するのです。彼らにとってカムイは超越神・偶像神ではないのです。両者には断絶はなく、ある意味で徹底した平等観をもって捉えられていたのです。

 そこには度を越えた神聖視や、絶対者への恐れなどはなく、彼岸での魂の救済などの、おなじみの幻想観念とは無縁です。彼らはカムイに対してさえ、ある意味で「対等な取引関係」を想定していたと言えるのです。カムイとの特別な交易としての祈りや祭りについては、続けて考えていきたいと思います。
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_5293
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp