生命原理・自然の摂理
5263 多細胞生物の認識機能の高度化の足がかり
 
吉国幹雄 ( 48 鹿児島 講師 ) 01/06/14 PM05 【印刷用へ
石野さん、多細胞生物の認識機能の一つ手前かもしれませんが…。
 
>多細胞生物への20億年以上の歴史の中で、認識機構はどのように進化していったのか。特に動物は、外部世界に対する認識機能を発達させていくが、かなり早い段階で同類他者を識別する機能が備わっている。<(5217、石野さん)

単細胞生物がコロニーを作る時も、実際に互いにホルモン様物質を出しているようですから、この同類他者の認識機能は認識機能のうちでも、根源的な位置にあると思います。

>多細胞生物に必要な2つの特徴は、細胞の専門分化とそれらの協調である。分化と協調により豊かな機能を獲得することができるとともに、全体が統合された生物体となりえるのである。そのために必須なのが仲間の認識ということになる。< (5217、石野さん)

この点については、同意です。

>ボルボックスは、5万個にも及ぶ細胞が集合しているが、細胞は細胞質の橋によって連絡しコミュニケーションをとっている。これによって、鞭毛の動きが統合され群体全体を動かすことが可能になる。また、生殖細胞が分化し新しい群体を作るが、その他の細胞は相互に強く依存し単独では生きることが出来ない。バラバラにすれば死んでしまうのである。< (5217、石野さん)

群体は、細胞分裂のたびごとに娘細胞が分離しないことで、細胞質が繋がっているので、情報物質は同じであり、より協同作業を強めたと考えればよいでしょうね。でも、どちらかといえばこれは多核細胞化ですね。多細胞化には、多核化からの道と細胞集合(そして細胞融合するものもありますが)からの道(アプローチ)があるのではないでしょうか。

真性粘菌は多核細胞になりますが、初めはバラバラだった粘菌が集まって一つの細胞を形成しますよね。真正粘菌は多少湿った場所の古材または枯れた植物体上に生息していますが、胞子から単細胞のアメーバになり、バクテリアなどを食べ、やがてえさがなくなったり環境が悪化すると、それぞれの粘菌が集合していきます。集合した粘菌細胞は融合して一個の細胞になります。だから多細胞というわけではないのですが、多核細胞ということになり、有糸核分裂は起こるが細胞分裂はしないため、単細胞のため核の数は増えどんどん大きくなるそうです。この多核細胞を変形体といいますが、変形体は接触させると融合するのですが、逆にきるとそれは独立した変形体になります。

**ところが、細胞性粘菌は、土壌アメーバですが、一般にはその生涯は、胞子→アメーバ(バクテリアを食べます。単細胞で生きています)→<餌がない>→移動体(細胞集合体)→累積子実体→胞子という生活環を描きます。この移動体はまさに多細胞の生きものです。移動体にはやがて身を支える柄になる細胞群(予定柄細胞)と、やがて胞子が詰まった実になる細胞群(予定胞子細胞)の二つのグループに分かれます。多細胞生物でいうところの機能的分化が見られるわけです。**

ところで、細胞の中で見られる原形質流動。これは単調な一方向の流れではなくあるリズムを持っています。周期的変動、一定のリズムが見られるわけです。また、情報の流れという視点で捕らえれば、化学物質の流動によって情報伝達をするということでしょう。真正粘菌などのように細胞融合し変形体になっても、この原形質の流動が見られます。まず接触(融合)するとその刺激によって位相が刺激点と周囲とで逆転をし相互作用(引き込み現象)がおこり、やがて二つは同じリズムを持つ(同調)ようになります。さらにどんどん融合が進んでいくとある時から一斉に同じ位相を持つわけです、つまり完全に一つの個体となります。そして、だからといって原形質流動つまり物質の循環が細胞が大きくなって時間がかかるようになったにも関わらず、その周期は単細胞の時よりも遅くなるわけではないのです。しかも大きなリズムを起こしているのです。つまり電気信号による情報伝達のスピードアップです。一つの細胞となって同調することによって、一斉に行動を起こしやすいくなるということ、一斉に反応しやすくなるということでしょう。多核細胞の戦略の一つとしての、認識系(情報伝達系)の高度化ですね。


群体・粘菌(真正粘菌・細胞性粘菌)、いずれも多細胞化戦略に繋がる辞令だと思いますが、微妙に違うようですが、認識機能の高度化の足がかりとしてはおもしろいですね。
 
もっとも、多核細胞といえば、身近な面白い例として人を初め哺乳類の精子形成における多核細胞があります。発生中の生殖細胞が通常の有糸分裂と減数分裂をする際に、完全には細胞質分裂をしないのです一つの精原細胞に由来する分化途中の多数の娘細胞は、細胞質の橋で繋がったままの多核細胞(シンシチウム)を実は形成しています。この細胞細胞質の橋は、精子分化の最終段階で個々の精子が細精管の内腔に放出されるまで残るそうです。

これで、成熟した精子が細精管のどの領域からも同調して生じることができるということですが、まずここに多核細胞の意味があります。協同作業を強め、同調する、コヒーレントな状態を取り易いということでしょうか。精子分化の最終段階まで多核細胞であるという意味は、精原細胞由来の細胞質基質をまさにそのまま使っているということ。(細胞質遺伝)。さらに精子は分化のほとんどを核が減数分裂を完了して一倍体になったあとでおこなうわけですが、発生中の一倍体の精子では細胞質が連絡しており、隣の精子と細胞質を共有するので、見方を変えれば二倍体ゲノムが生産した物質を受け取っているとも見えるでしょう。つまり、精子は親の二倍体の染色体産物の影響下にあるといえます。このことは、一倍体の変異に対する危機管理と考えら得るでしょう。多核細胞化はだから、多細胞化よりも安全策をとっている、といことでしょうね。個=全体ということでしょうね。分化よりも協同を優先しているように思えます。
 
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