日本人と縄文体質
5135 縄文人と農耕技術
 
田野健 HP ( 40 東京 監理 ) 01/06/10 AM00 【印刷用へ
縄文時代になぜ稲作が拡がらなかったか。

以降「縄文から弥生への新歴史像」(広瀬和雄著)の抜粋含む。

”縄文時代には後期始めより畑稲作による食料獲得方法の手段が一般化してきており、それは寒冷期に突入した時代にあってそれまでの縄文人の網羅型(自然共生型)食料体系の一翼を担ったものにすぎない。”

”縄文人の食文化は採取、狩猟、漁猟といった、自然資源を最大限、能動的に獲得する技術をもっており、それは栗林の管理やひょうたんやりょうとくの栽培植物を持つといった営みをすでに縄文前期から獲得していた。”

コメやオオムギの畑稲作開始もあくまでその延長上にあると言った見方である。

”つまり、畑稲作はほかの植物性食料の獲得方法を駆逐して、みずからを選択的かつ集中的な食料獲得の手段に高めていったのではなく、旧来の食料獲得システムに新しい一つの方法を付け加えたにすぎない。”

”いうならば、植物性食料体系の幅を拡大したのであった。そういった意味ではけっして網羅的食料体系を破壊するものではなく、むしろそれを強化する役割を担った。”

では、なぜ強化する必要があったか?

”おそらく、気候の冷涼化が大きく作用したのではないか。縄文前期と後期とでは約4度ほど平均気温が違う。それにより前期では充分に採れた木の実やそれを食料とした動物が激減し、さらに前期〜中期にかけて増加した人口(約3倍)と相まって、それまでの安定調和的な共存関係の持続が困難になり、新しい植物資源の補充が渇望された。そうした条件が稲作受容の大きな要因となった。”

縄文人が稲作を拒否したのかについては・・・下記のくだりで説明できる。

”後期、畑稲作が始まった後も平行して網羅的食料体系は残っており、稲作が始まった後、他文明で見られる、階層社会の成立や戦争の開始といった社会のシステムや枠組みを大幅に変換させるような形跡は見られなかった。
それは、畑稲作は既存の共同体組織で充分に対応できたと思われるし、余剰を生み出さないイデオロギーが残存し、自然を大きく破壊しない、サイクルを変動させないタブーが存在したとさえ想定できる。
後期に登場した呪術の技術はそれ(自然との関係の破壊)を戒めるために使われたとも考えられ、そのことにより、縄文時代の農耕は伝統的な獲得経済の一部を構成したにとどまり、けっして支配的な食料獲得様式にはならなかった。”

稲作を拒否したのではなく、稲作による社会の変質を拒否したのである。
 
  List
  この記事は 5060 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_5135
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
298666 縄文文化と樹木1〜ナラ・ブナ1〜 匿名希望F 14/12/01 AM00
247753 縄文人が農業に転じなかった理由〜類稀な火山列島 田野健 11/03/23 AM03
243698 食料自給率40%を切っている日本がヤバいことを改めて認識した 志水誠 11/01/09 PM02
「稲作伝播は私権社会の引き金か?」2〜縄文人と農耕技術 「縄文と古代文明を探求しよう!」 09/12/14 PM10
197784 【書籍紹介】縄文農耕の世界―DNA分析で何がわかったか 丸一浩 09/01/20 PM00
縄文人が水田稲作を始めなかったのはなんで? 「縄文と古代文明を探求しよう!」 08/03/11 PM11
124:イネのプラント・オパール ―縄文農耕― 「歴史大好き考古学徒の日記」 07/07/27 PM08
125:畑状遺構と農耕 ―縄文農耕― 「歴史大好き考古学徒の日記」 07/07/27 PM08
149745 縄文時代の自然環境の変化・生活・人口 黎明の風 07/04/19 PM08
狩猟採集民(縄文人)の農耕民(弥生人)化の過程 「縄文と古代文明を探求しよう!」 06/09/27 AM10
縄文後、晩期の稲作の伝播について 「縄文と古代文明を探求しよう!」 06/09/10 PM11
5198 縄文人の気骨(その3) 毛針田万作 01/06/12 PM10

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
外圧適応態
外圧適応と多様化
根源的認識の理解、免疫系に見る…その2
収束と統合とは生きているという状態そのもの
雌雄分化における統合
闘争適応と共生適応の関係A
人類はDNAではなく、共認内容や観念内容を組み換えて適応している
ミラーニューロンと共認機能
改めて自然との共認
共認回路の特殊性
共認回路は個体境界を越えて情報を統合する
失語症の回復過程から言葉以前の共認を探る
主体認識と状況認識は一体では無いか
無意識とは本能・共認回路上の意識である
音読する感覚
音読と共認回路
対象への同化について
共認治癒力A
共認適応
ロール・レタリングという手法
脳構造についての視点
脳回路の2段階構造
胃腸から脳へ伝わる情報の方がはるかに多い
書籍紹介『奇跡の脳』B〜右脳マインドの働きとは?〜
書籍紹介『奇跡の脳』C〜左脳マインドの働きとは?〜
ドーパミンの基礎知識(ドーパミンの特異性)
ドーパミンは加速(増幅)物質
思考とドーパミンの分泌
エンドルフィンの不思議
エンドルフィンの不思議、その2
セロトニンの不思議、その1
セロトニンの不思議、その2
セロトニンの不思議、その3
「怒りのホルモン!」 ノルアドレナリン
「恐怖のホルモン!」 アドレナリン

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp