’70年貧困の消滅と私権の衰弱
50 私権社会の打破のために
 
山城貢司 ( 神奈川県 ) 01/02/10 PM02 【印刷用へ
 私権原理に基づく社会システムは、私権原理を再生産する。我々の課題は、私権原理に基づく社会体制を打破し、それにかえて、新たなる共同体を打ち立てることである。
 まず始めに、欲動という言葉と私権という言葉の使い分けに注意を促しておこう。欲動という言葉は、ここでは、人間存在以前の全生命体に波立ち騒ぐ力の総体という意味で用いられる。一方、私権という観念は、(私権の追求も一種の欲動の充足である、という意味で、欲動一般との深い関わりを有するにも関わらず)人間社会に特有のもので、人間存在の本質という観点からの特別な考察が必要である。このように二つの言葉の区別を明確にしておくことは、今後の議論の上で非常に大切なことである。
 欲動と私権という二つの言葉の以上のような区別を念頭においた上で、我々には、三つの(互いに関連する)課題が与えられていることを力説したい。
 一つ目の課題は、人間存在のレベルにおいて、欲動一般から私権を区別しているものは一体何なのか、という問いの探求である。これは換言するならば、人間存在の次元において、欲動がいかなる過程を経て、私権の志向へと変成するのか、ということである。この問いは、歴史社会学的・人類学的見地からは、原始社会とそれ以外の社会を差異化するものは何なのか、という問いに、言語学的見地からは、私権と言語活動との関係を巡る問いに、生物学的見地からは、大脳の発達と人間存在の特殊性との関連性に関する問いに、歴史経済学的見地からは、社会経済の発達に伴う私権原理の君臨の過程についての問いに、それぞれ書き直すことが可能であろう。この際、欲動一般と私権の追求の橋渡しをするものとして、原始社会が興味深いモデルを提供してくれる。原始社会においては、欲動は人間的次元にまで高められて、表象化作用を経ている一方で、私権の追求という形態をとるには至っていない。原始社会において、何が私権の追求への志向を抑制していたのか、という問題は、私権社会の打破を目指す我々にとって、(理論的・実践的両面において)量り知れない重要性をもっていると思われる。
 二つ目の課題は、人間社会と私権原理の関係の考察である。ここで問題となるのは、一個の人間存在が社会に包摂される過程において、私権のイデオロギーに捲き込まれて行く(従って、私権原理が再生産される)構造プロセスである。ここでは、人間存在は、本質的には私権を追求する存在なのではなく、私権原理に基づく社会構造の中で、私権を求めることを余儀なくされている存在である、という理解を前提にしている。この点については、改めて他の個所で検討したい。
 私権に基づく社会が、自ずから私権原理を再生産していく過程の分析は、同時に実践的な課題でもある。なぜならば、そのような過程のからくりを喝破することが、我々がとらわれている固定観念の打破に通じるからである。
 三つ目の、そして最後の課題は、私権原理に基づく社会にかわる新たな社会モデルの提示と実践である。果たして、歴史上連綿と続いてきた私権社会の系譜の果てに、私権原理に基づかない新たなる共同体を実現することは可能なのだろうか。新たなる共同体において、人間の生とは、一体どういったものになるのだろうか。
 以上に述べた三つの課題、そしてそこから派生してくる諸問題について、今後、それぞれ対応する個所で、詳細に分析していきたいと思っている。
 
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235788 共認充足の方が支配できる かつまた 10/08/07 PM03

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