原始共同体社会
4881 エスキモー族に見る性関係
 
かなくぼたろう 01/06/02 AM02 【印刷用へ
 エスキモー族は、インディアンのうちでは一番後にアメリカに到着し、その文化は、シベリアからグリーンランドまでもの広がりを持っていたとされる。
エスキモー族には、(インディアン系では希有で)種族全体を統一する組織がなかった。あったのはクジラ漁をしたり、トナカイの狩りをしたりする時に作られる、共同作業の集団であった。このような経済活動に基礎を置く集団は、どれに属してはならないというような規則はなく、個人の自由が大幅に認められていた。内陸でトナカイをおっていた者が、海岸の集団に移ることもあり、その逆もあった。(青木晴夫著 『アメリカ・インディアン』)


 彼等の中で、権力者と呼ばれる者の尺度は女性で決まっていた。つまり、女性を通じて人を動かす影響力を持っている者がそれに値した。その背景には、社会での力関係の拡張=自己勢力圏の拡大の意図があり、結婚を味方の増加目的とするものがあった。また、結婚は一夫一妻とは限らず、一夫多妻も多夫一妻もあった。若い男女がセックスの関係を結び、お互いに充足した時に結婚が成り立つとされた。(しかし、子どもができるまでは正式に決まったものとは考えられなかった。)そして、二人の間に不和が生じたときは、簡単に離婚は成立した。時として若い男の妻を、年上の男が盗むことがあった。このような場合、妻を取りかえす為には、親族の応援による力関係の逆転が必要で、これが不可能の時、妻は年上の男の第二もしくは第三の妻となってとどまった。また、更年期がすぎると、女は魔法を使うことができると信じられていて、その力で熟女が若男を夫にすることができた。この夫が、後に別の女と結婚して、一夫二妻になることもあるが、一家の力(労働力)を増加することになる為、一番目の妻は反対することはない。

 セックスについての彼等の見解は、実にあけっぴろであったという。子どもに隠れて性行為をすることも、子どもがセックスについていろいろと実験をするのを止めることもなく、純潔を尊重する習慣もなかった。少女が妊娠しても、その相手である可能性のある男性数名全員が、結婚を承諾するのが普通であった。お腹が大きくなったということ、子どもが産めるということを実証したことになり、歓迎されたのである。

 上記より、エスキモー族は経済活動を基礎にした組織体制であったといえる。そして、彼等にとって結婚とは、愛や恋とは無関係のものであった。女は、狩りに出て獲物をとり、舟を作り、犬の世話をする男を必要とし、男は、皮をなめし、肉を貯蔵し、炊事をし、衣服を作る女を必要とした。男と女は、担当する仕事の種類こそ異なれ、同様に働く意義は家族の充足にあった。
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_4881
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
どうしてセックスは恥ずかしい秘め事になったの?? 「男と女の職場話」 10/03/26 AM01
228744 女性の役割が多いほど集団は強くなる?! ちよ 10/03/22 PM10
217018 エスキモー(イヌイット)は季節によって集団規模を換えている 向芳孝 09/10/12 AM00
216868 なぜエスキモーは家族単位が主体なのか? TAB 09/10/10 AM00
216867 エスキモー(イヌイット)の社会 りんいちろう 09/10/10 AM00
216866 エスキモーの夏・冬の集団規模の変化は外圧適応によるもの 新川啓一 09/10/10 AM00
エスキモー族(イヌイット)の性について 「共同体社会と人類婚姻史」 09/05/13 AM00
4986 エスキモーを通じて現代のゆがみが見える 麦秋 01/06/05 PM10

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

「合同板」必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
風土、生産様式、婚姻制
原始婚と性習俗
原始人類(後期)の全員婚
村落共同体の規範について
『日本婚姻史』の概略
日本の交叉婚の特殊性
「交叉婚」の集団性は?
交叉婚で発生した男の自我
江戸時代の結婚〜制度から見た男女の地位〜
西洋人の精神構造と異常な性意識
近代思想の結果が、現代
資本主義とセックス
セックスが「罪深くいやらしいこと」であるから、「処女性」が尊重される
処女観、初交観
夜這い「オコモリ」1
夜這い「オコモリ」2
夜這い「オコモリ」3
夜這い「オコモリ」4
和島家族論
水野家族論
夜這いの解体と一夫一婦制の確立1
夜這いの解体と一夫一婦制の確立2
夜這いの解体と一夫一婦制の確立3
恋愛も代償充足
その関係そのものが、心が通じ合えない構造にある
恋愛は共認不全をごまかす為の価値観念
性的独占意識の心理的転機
多くの男に女として認められること
オヤとコ(柳田民俗学から)
親の囲いが、対象を遮断し、活力を衰弱させる
過保護空間
「子供」という旧観念
婚姻が社会と切り離されて50年も経ってない
「二分の一成人式」に欠落しているもの
謝罪と感謝の方法
心の器
「セクハラ」の驚くべき事実。
イイ子・ワルイ子

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp