’70年貧困の消滅と私権の衰弱
4857 市場拡大停止の原因(3)
 
雪竹恭一 ( 38 大阪府 営業 ) 01/06/01 PM11 【印刷用へ
 簡単に整理すると、
 「市場拡大停止→需給ギャップ→金余り→投機経済のバブル化と、
一方での実体(物的)経済のデフレ化→バブル崩壊(及び円高)で、
一気にデフレ圧力顕在化→強烈なコストダウン圧力→売上減少と生産拠点の海外移転(土地の輸入)→地価の下落→企業・銀行の財務内容悪化→不良債権問題の深刻化→株売り圧力→景気の不透明感とさらなる需要(消費)マインドの萎縮→さらなるデフレ化(以下循環的繰り返し)」

ということになりますが、企業のリストラとそれに伴う失業率の増大、所得水準の低下、及び景気の先行き不透明感などから需要(消費)マインドはますます落ち込み、それがさらに企業売上を減少させるというデフレスパイラルに陥っていることが、事態をより深刻化させています。

 これに対して政府は、なりふり構わず財政赤字の拡大と金融緩和の麻薬注射を行って、あるいは、経済戦略会議やその柱としてのIT戦略などの景気刺激策を総動員して、総需要喚起の政策をとってきたわけですが、一向に消費は盛り上がらず、結果は国や自治体の借金を拡大しただけです。これらの事態を冷静に分析すると、やはり「物的欠乏(需要)は、ほぼ飽和限界に来ており、市場拡大は停止している」という根本の事実を認めざるを得ないでしょう。
(ITのインフラ整備や新産業育成のための規制緩和が遅れているという議論もありますが、市場全体の拡大問題から言えば、本質問題ではないでしょう。経済のソフト化(第二次産業から第三次産業へのシフト)が世間で言われているほどには、市場拡大に寄与しないことは米国で実証済みです。IT化は本質的には、物流の合理化等を通じてデフレ圧力として作用するものです。)

 さて、「なぜ、物的欠乏(需要)は限界にきているか?」という本題ですが、この原因にはいろいろ考えられますが、私はこれは経済問題ではなく、本質的には人々の価値観・思想の問題ではなかろうかと考えています。つまり、「物的に豊かになることが、人々にとって第一の価値ではなくなった」ことが本質原因ではないかと思います。これは各種の世論調査でも現れていますが、人々の多くは、「物的な豊かさ」よりは、「家族や友人との語らい」や「趣味などの自由時間」などに物的価値以上の価値を見出そうとしています。これは経済構造を考えるうえで大きな転換です。実際、大多数の人々の家の中は、物財であふれかえっていますし、着るものだって食べ物だって余って捨てているくらいですから、もう大して必要なものは残されていないのです。住居だって一部の住み替え需要はありますが、マクロ的には世帯数を住宅数の方がとっくに上回っており、かつての市場拡大期ほどの需要はもうありません。車だって車の必要な地方では一人に一台が当たり前になっており、残るのは買い換え需要だけです。

 さらに付け加えるならば、市場経済の本質には、 帝国主義的市場の覇権闘争という問題もあると思いますが、そのような思想そのものが曲がり角にきているというのが人々の価値観の転換の背景にあるのではないかという気がします。人々の多くは(少なくとも日本人の多くは)、これ以上環境を破壊してまで、後進国を搾取してまで、カネを稼ぐために嫌な疎外労働をしてまでも、人より豊かになりたいとは思わなくなってきているのではないでしょうか。
私は、少なくとも生活感情レベルでは、市場拡大至上主義(或いは私権第一)の思想は転換点を迎えているのではないかと思います。

 しかし、現実の世論としては、市場拡大への期待はなくなることはありません。次の問題は、「市場拡大幻想はなぜなくならないのか?」ということかと思います。
 
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