同じ記事からの続報です。
(3)オフライン・サービスとオンライン・サービスとの連携
[1]オフライン・サービスでの投資をオンライン・サービスで回収する仕組み
ラーニングセンター運営の目的のひとつは、運営する電子コミュニティSeniorNet Onlineを活用するコンピュータ・リテラシーの高いシニア(つまり、スマートシニア)の育成。育成されたスマートシニアが、積極的にオンラインショッピングなどに参加すると予想され、パートナーである民間企業は、SeniorNet Onlineにおけるオンライン通販などを通じて収益を上げる構造。
実際、シニアネットは、電子コミュニティであるSeniorNet Onlineでのオンライン通販で、大きな売り上げを確保。例えば、シニアネット会員に対し、全ての必要なソフトウェアが予めインストールされたパソコンを特別価格で通販している。これが会員から好評であり、よく売れている。ラーニングセンターのスポンサーであるIBMやマイクロソフトなどの民間企業は、ラーニングセンターで築いたブランドイメージをもとに、SeniorNet Onlineでの商品販売で成果を上げている。
[2]コミュニティ・マーケティングでシニアのナレッジベースを構築
大手保険会社のメトライフ(生命保険会社)は、SeniorNet Online上に「Metlife Solution Forum」という電子フォーラムを開催し、多くのシニアの声を収集。フォーラムのテーマ例は「成功する歳のとり方」「医療制度の未来」「人生の終わりについて」というように、シニアの問題意識に直結するものが多い。このようなテーマ設定の結果、例えば「成功する歳のとり方」フォーラムでは、わずか2週間の間に1,000件近い意見がシニアから寄せられている。
メトライフはこのようなフォーラム運営を資金的に援助することで、間接的な広告効果とともに、シニアの潜在ニーズに関する膨大なナレッジベースを獲得している。これは従来とは異なり、電子コミュニティを活用することで、広告と市場調査とを統合する全く新しいマーケティング手法。
[3]シニアネットとの共催セミナーをビジネスに有効活用
チャールズ・シュワッブは、インターネットを活用したシニア向けの資産運用セミナーをシニアネットと共催し、新規顧客を開拓。セミナーでは同社の宣伝広告は一切せず、インターネットを活用した資産運用に関する講義のみに絞っている。
しかし、逆にそれが幸いし、セミナー終了後、インターネットを使ってミューチュアルファンドを購入するにはどうしたらよいか、という相談がセミナー受講者から相次いだ。シュワッブ単独のセミナーであれば、主催者の「売らんかな」の魂胆が見透かされてしまうため、警戒心の高いシニアはあまり積極的に参加しない。しかし、ブランド力のあるシニアネットとの共催ということで敷居が低くなり、大勢のシニアの参加が得られている。
[4]オンラインとオフラインとの連携によるトータルサービスがカギ
以上のとおり、シニアネットは、[1]ラーニングセンターというスマートシニアの「直接育成サービス」、[2]SeniorNet Onlineというスマートシニアに対する「情報支援サービス」、[3]資産運用セミナーのような「生活支援サービス」を組み合わせて提供。
言い換えると、ラーニングセンターなどのオフライン・コミュニティとSeniorNet Onlineなどのオンライン・コミュニティとの相互連携によるトータルサービスが、シニアネット成功の大きな要因といえる。
『スマートシニアがけん引する21世紀のシニア市場』
(「Japan Research Review」1999年9月号、日本総合研究所発行より)
以上、長々と引用しましたが、シニアネットで最も注目すべき点は、『新たな生活ツールの学習』が出発点になっていることです。たまたま、コンピュータ・リテラシーの学習になっているが、この初期学習行為には、人々は必ず『お金』を払ってくれる。
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