生物の起源と歴史
39816 母乳! 免疫系の学習と獲得
 
吉国幹雄 ( 50 鹿児島 講師 ) 02/09/11 PM03 【印刷用へ
村田さん、そうか、母乳ですね。

この間の「進化論」あるいは「科学論」の議論で、種々の「システム遺伝」と「学習の必要性」については共認された事項ですね。しかし、「免疫」については、生物(特に哺乳類)にとっては極めて重要な防御システムでありながら、【免疫系は個体発生後に完成される】。この進化論的意味を明らかにしたいと思っての前回39713の投稿でした。「免疫系」が個体発生後に完成する必然の根拠を探りながら、しかしどうも納得できない何か(システムを駆動させる中間項のようなもの)が抜けていた感じがしていたのですが、母乳ですね。

>例えば、母乳の中には、その集団内に棲息する細菌に対して生成した、抗原・抗体機反応の成果物・グロブリン等が含まれている。乳児に母乳を与えることで、この最終武器を受け渡し、乳児側の安全率を高めている。
そして、母乳の免疫成果物が徐々に減って行き、乳児自身の免疫システムの発現、学習が始動する。<(39790、村田さん)

免疫系の発現は遺伝的には以下のようにまとめられるでしょうか。

1.母体から胎児へ「免疫システム(免疫機能)」の遺伝。母体の免疫環境の遺伝。

母親の胎盤を通して受け渡される抗体の一部は、胎児を取り巻く内部環境物質となっており、それは母親の免疫系からの攻撃をも免れている。ということは、既にそれは胎児の先行免疫として作動していることになります。また、当然のことながら、母体は母体内部に免疫環境を形成しているわけだから、胎盤を通過する前にほとんどのウィルスや異物質は排除されていることになる。つまり、胎児は母体の免疫環境の中で守られているわけです。

2.出産後、母体から胎児へ母乳を通じて母体の獲得免疫物質が継承(遺伝)。胎児の「免疫系」の「学習」機能の発現。

赤ん坊は、1年間は風邪をひかない、とは昔から言われていることですが、これは母親の獲得した免疫物質を使って、「免疫系(環境)」が作動しているからです。この期間は母親から伝えられた免疫物質を使って、赤ん坊のおそらく胸腺で「免疫発現」を学習する期間と言えます。だから、学習が不十分であると、体の弱い子になってしまうのでしょう。

*人間だけでなく、先だってパンダ(超ミニサイズです)の出産でも母乳を受けなければウィルスに対する赤ん坊の免疫が作動しない様子をテレビで放映していました。母乳は形質遺伝・システム発現に本当に欠かせないものです。哺乳類にとっては、「出産後に伝える(遺伝)」というこの「哺乳システム」こそが、他の生物の持つ「遺伝システム」を越えた適応戦略と言えます。

*現在、『現代板の幼少青壮老』の方で、母親と育児のテーマが扱われていますが、集団の免疫システムを高める上では、必ずしも「生みの親」の母乳が外圧適応上よいかどうかは疑問です。「遺伝子組み替え」の多様性が「性システム」の本質であることを考えれば、「免疫システム」を母親から受け継いだ後の学習過程においては、他の母親からの学習のための免疫物質を引き継ぐことは、「多様性の戦略」としては優れたものになると思われるからです。

3.子どもの「免疫系」の「獲得」免疫の発現。子ども自身が内部に侵入してきた学習してきたことのない外敵・異物質に対して免疫システムを作動させる。

人間のすごいところは、「学習」に留まらず「獲得」することにあります。「学習」とは多様性から個別具体事例を選び出して定着させるという演繹性が生命ですが、「獲得」とは多様性から自ら普遍性を見つける機能性に価値があると私は思います。簡単には「創発」するということ。子どもの内部環境において、多種多様な抗体を試行錯誤的に作り出して、最適の「免疫物質」を獲得していく。そして、それをまた子孫に伝えていく、まさに「免疫の連続性」を感じます。

 
 
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