生物学を切開する
39713 免疫系は個体発生後に完成される、その適応戦略2
 
吉国幹雄 ( 50 鹿児島 講師 ) 02/09/10 PM01 【印刷用へ
>さてもう一つは、生殖部における免疫の違いを押さえてみる<(39696

人類の胎児は母親から栄養補給を行っていると同時に、免疫系においても胎盤を通じて成体と比べれば不完全ながらも防衛される。具体的には移行するのはIgGという分子量の小さい免疫グロブリンである。IgGは人間では免疫グロブリンの約70%を占めるが、両生類以降に見られる主要な免疫グロブリン。これが、胎児の体のすみずみにしみわたって防衛するが、母親の約30%の免疫グロブリンと細胞性免疫(マクロファージなど)が胎盤を通ることが出来ない。また分泌されたIgGの働きの一つは、まさにこの通過を遮られた残りの免疫物質の排除にある。胎児と母体の接触面での両者の活発な活動が見られるそうだ。

哺乳類は妊娠中に細胞性免疫を抑えて胎児を守っている…。

つまり、母体にとって胎児(父親の遺伝子を半分持っている)は、母体内部の環境にあるものとは違うので、異物として排除しようとする。逆に、そうならないような免疫システムを哺乳類は獲得した(高度化した)と言ってもいいだろう。「体内保育」というシステムは、体内環境における免疫システムを修正した。「体内保育」という先端可能性にあわせて収束していったといってもいいだろう。それほど『体内保育』が、哺乳類にとって外圧適応戦略であったといえるだろう。

いずれにしろ、母体と胎児内の環境が違うので、早くに胎児の免疫システムが確立すると母体と胎児との免疫不全が起こり、両者の生命が危なくなるわけで、それゆえに、胎児の免疫システムは遅れて完成する必然があったといえる。

ところで、免疫システムは無脊椎動物時代に既に自然免疫(先ほどのマクロファージなど)を中心に発達している。B因子補体という抗体の原型も無脊椎時代に見られるようだ。もちろん、脊椎動物、そして哺乳類と免疫システムは高度化されていくが、上記で触れた点は哺乳類だけでなく、生殖分化が発生した段階で、すでに一部起こっていたのではないだろうか。分化によって、環境が分離され、それぞれの適応条件が変化したことで、その環境に働く免疫系そのものの分離・変異が最初に起こったのかもしれない。

実はこの母体と生まれてくる幼体の免疫が同一ではないということが、免疫システムの戦略的価値をさらに高めたのではないか。これまで、系統発生と個体発生という観点で考えてきたが、そもそも生命体は集団発生しているわけであって、種全体が同一の免疫であったとしたら、一気に滅亡する危険性もあるだろう。従って、個体の免疫に差異を生じさせることによって、ミクロな多様な敵に対する種としての免疫システムを完成させて、といえるだろう。

 
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39790 免疫システムを継承システム・学習システムととらえたらどうか 村田貞雄 02/09/11 AM11

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