生物学を切開する
39689 個体発生によって系統発生が完成するのがヒトの進化適応戦略
 
吉国幹雄 ( 50 鹿児島 講師 ) 02/09/10 AM03 【印刷用へ
メキシコのサンショウウオの一種に「アフロートル」という動物がいるそうです。通常はエラ呼吸を行い、性的に成熟して子供を産む一生だそうです。ところが、ある環境条件のもとでは(例えば水槽で飼っていると)突然、変態をして肺呼吸を行うそうです…この現象は「ネオテニー」と名づけられました。

【ネオテニー(幼形成熟)】:幼形時の特徴がそのまま時間的に延長される。

1920年、L・ボルクは「人類ネオテニー説」を提唱しています。チンパンジーの幼形は人類とそっくりであるところから、ヒトはもともとチンパンジーのネオテニーではないかというわけです。幼体または卵が突然変異などで一斉に発育不全に陥り、ところがその中で何らかの適応機能を新たに獲得し性的に成熟できたものが現れ、それが進化してきたのが人類、という説。何がどのようにというところは明らかではないですが、人類が木に上れなくなった「先祖がえり」という現象とも通じる話で、あながち「トンデモ」というわけではなさそうです。

8月27日付の読売新聞夕刊に次のような記事が載っていました。
「人類が進化の過程で失った遺伝子が、人類の脳を爆発的に発達させる原動力になった、という仮説を発表」

日米のグループ(グループ名省略します)の発表によると、チンパンジーなどの多くの動物がもっている遺伝子で、約250万年〜300万年前に人類(ネアンデルタール人)が失った遺伝子があるというのです。働きは十分にわかっていないにも関わらず、仮説が発表されるところが少し首をかしげるところですが、遺伝子を失うことによって新たなる機能(脳の発達)が生み出されるというこの仮説は、ネオテニー説や、人類の先祖がえり説にも通じて、なかなか面白いのではないでしょうか。

確かに考えてみれば、人類ほどゆっくりと発育する哺乳類はない。
「個体発生は系統発生を繰り返す」、と言うけれど、大脳の発達などをみると、まるで人類は個体発生によって系統発生が完結する(進化で獲得した機能の発現を意図的に遅延させている)戦略をとっているように思えます。やむをえなき理由によって、あるいは意図的戦略によってか…。この遅延性の原因あるいは戦略といったところの中身を、会議室でいっしょに考えてみたいと思います。

まず、他の動物と比して圧倒的に遅れて発現されていると思われる点、三つあると思います。「性成熟年齢」「大脳の完成年齢」「免疫系の完成年齢」

「哺乳類は最終的に達する体重の30%で性的な成熟期に達するのに対し、ヒト以外の霊長類は60%をやや下回る体重で、またヒトは約60%の体重で性成熟する。大部分の哺乳類では脳は胎児期の終わりに形成されるが、霊長類は出生後までかかる。チンパンジーでは出生時の脳は大人の脳の容積の40%までしか発達しておらず、ヒトではわずか23%に過ぎない」(『科学10大理論』学研)

上記では触れられていない免疫系ですが、前回39191で「時間のずれ」の対策として体細胞における遺伝子組み替えを問題にしました。が、なぜ発生段階前に、多様な抗体が準備できないのかという問題は先送りになっています。この免疫問題を中心に次回検討したいと思います。

 
  List
  この記事は 39191 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_39689
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
40628 人類の大脳進化の見直し(胎児の脳、その発達) 吉国幹雄 02/09/24 AM00
39696 免疫系は個体発生後に完成される、その適応戦略1 吉国幹雄 02/09/10 PM00

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、48年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp