生物学を切開する
38839 解読システムの高度化が進化をささえる
 
本田真吾 HP ( 45 香川 建築家 ) 02/08/28 PM11 【印刷用へ
北村氏の投稿を見て、遺伝子解読システムと結果としての発現形態の差を、全面的にDNA変化にまで結びつける必要はないと思った。よって暫定変化という部分は取り下げたい。むしろ、解読システムの高度化が進化を支えているともいえるのではないかと思った。

例えば、ヒトゲノム解読がほぼ終了し、ヒトの遺伝子総数は31000個程度であることが解ってきた。単純な線虫で18000個、ショウジョウバエで13000個、ヒトはこの2から3倍程度である。複雑化した生物ほど、形態発現をつかさどる多くの遺伝子を持っているのではないか、という従来の常識を覆す結果になった。(当初予測では10万個程度だったらしい。)

しかし、事実としてヒトの体は線虫やショウジョウバエよりかなり複雑な要素をもち統合されている。そして、複雑さは多様な組織で体が出来ていることで成り立ち、多様な組織は多様なタンパク質によって支えられる。では、線虫とたいしてかわらない遺伝子数から、複雑な体(多様な組織とそれを支えるタンパク質)を実現するシステムはなにか?

1つ目は、同じ遺伝子から数種類のタンパク質を生み出すシステムである。これは、遺伝子中の複数の情報コードから読み取るコードを選択することで実現される。全コード数より選択されるコード数は少ないので、複数のコード組み合わせができる。そして、読み取ったコード一つにタンパク質1つが決定される。

これを、選択的スプライシングといい、ヒトでは多いもので5種類くらいになる。また、選択的スプライシングの対象となる遺伝子は、ヒトで全体の60%程度、線虫で22%程度らしい。

2つめは、出来上がったタンパク質の一部(特に物質性状を担う部分)酵素で切り取ったり、脂質等が付加されたりして、性状(活性)をかえることができることである。これをタンパク質の修飾という。

これらを大きく捉えると、線虫のような単純な生物では1遺伝子から1タンパク質という過程が主流になり、単純な構造の割には遺伝子数が多い。それに対して、ヒトのような複雑な生物では、解読システムの高度化で、少ない遺伝子から多様な種類のタンパク質を作り出すことができる、と言えそうだ。

つまり、進化とは解読システムの高度化である。というのが次の仮説である。そして当然、パーツとしてのタンパク質の種類の多さだけでなく、それらはどのように統合されているのかが次の問題になる。

 
  List
  この記事は 38482 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_38839
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
形体変化と遺伝子変化 「Modern Science Critique」 05/09/05 PM01
38964 生命体は既存分子の多面的利用によって発達してきたのでは? 北村浩司 02/08/30 AM01

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp