健康と食と医
362689 未だに「かき出す中絶」が行われている日本の謎
 
匿名希望 20/12/16 PM09 【印刷用へ
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日本では、妊娠初期の中絶の約33%が掻爬法、約47%が掻爬法と電動吸引法(※3)の併用で行われている(※4)。つまり約80%で掻爬法が行われており、日本で主流の中絶方法といえる。

また、日本では中絶だけでなく稽留けいりゅう流産(※5)に対する手術においても掻爬法が行われることがあるため、掻爬法を経験したことのある女性はかなりの数に上るだろう。

(※3)子宮口を開く処置をした上で、子宮内に金属製の吸引管を入れてチューブにつなぎ電動で妊娠の組織を吸引する方法
(※4)Sekiguchi A, et al., Int J Gynecol Obstet 2015; 129: 54-57
(※5)妊娠が継続せず自然に終わり、出血などの症状がなく胎のうや胎児が子宮内にとどまっている状態のこと

産婦人科医として中絶を施術する立場となった私は、とにかく合併症を生じさせないように慎重に、葛藤を抱えながら必死に掻爬法の技術を習得した。

しかし、私が必死に習得した掻爬法は、もはや世界のスタンダードではなかった。WHO(世界保健機関)は「掻爬法は、時代遅れの外科的中絶方法であり、真空吸引法または薬剤による中絶方法(Medical Abortion)に切り替えるべき」と勧告している(※6)。実際、欧米を含む先進諸国では掻爬法はほとんど行われていない(※7)。掻爬法の実施率は、アメリカでは0〜4%、イギリスでは0%と報告されている。

なぜ日本の中絶は、世界基準から外れた状態になっているのだろうか。そして世界から見て異様ともいえるこの現状を、私たち日本人は知らされてきただろうか。

中絶に関する問題は、国によってさまざまな違いがあり、歴史、文化、法律、宗教、政治、保険制度、医療水準、倫理的背景、ジェンダー問題などを多角的に考える必要があるだろう。

中絶について考えていく上でまず共有したいことは、「性と生殖に関する健康と権利(Sexual Reproductive Health & Rights)」(※10)だ。私たちには一人ひとり、安全で満足できる性生活を送り、子どもを産むかどうか、産むとすれば、いつ、何人産むか決定する自由を持ち、適切な情報とサービスを受ける権利がある。しかし日本では、こういった権利があることを教えられず、適切な情報を知らされず、世界的な基準で見て、安全なサービスを受けられていない現状がある。

(※10)国際人口開発会議・行動計画(1994年)

当然ながら、医療には人を裁いたり、罰を与えたりする役割はない。どんな人に対しても、その人の身体的、精神的、社会的健康を守るために、世界標準の安全な医療が提供されるべきである。それは中絶に対しても変わるものではない。

9月28日は、国際的に安全な中絶について考える日「International Safe Abortion Day」だ。世界中の人が性と生殖に関する権利を満たすことを目指すWomen’s Global Network for Reproductive Rights(WGNRR)が2011年に定めた。この機会に、より多くの人に日本の現状を知ってほしいと思う。
 
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