新しい男女関係(→婚姻制)の模索
360403 男性性の変貌 1/2
 
姜ヨセフ ( 28 東京都 会社員 ) 20/09/22 AM01 【印刷用へ
これまで、ジェンダーという概念をさまざまな視点から考察し、それが社会的、文化的に構築されたものであるという前提に立ち、いかに脱構築が可能なのかを議論。ジェンダーが社会的に構築されているからこそ、男性と女性にはそれぞれに異なる権利や義務が課されているのであり、異なる言説やふるまいを生み出し続ける、そしてその異なる言説やふるまいこそがジェンダー・イメージを強化するような言説を再生産する、という負の循環を指摘さ。

性別役割分業に象徴されるように、性別や性差という概念が意図的に社会的に構築され、男性と女性は、非対称的な力関係を基盤に異なる役割を与えられてきたわけですが、今、世界的に活発化している「男性学」に違和感を覚えるのは、そうした構造がなぜ生まれたのかまで議論されることが少ないからだと先生も指摘。与えられた役割や力はあくまで本質的だとした上で、男性たちも大変なんだ! と。だからこそ今一度、社会はどんなふうに男性性を構築してきたのかを振り返ることが大切。

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近代の男性性がどんなふうに形成されていったのかを簡単に説明すると、その原型は国民軍の創設に、見出すことができると考えます。ナポレオンは100万人のフランス軍を率いて全ヨーロッパを制したわけですが、それまでの軍隊というと王様にお金で雇われた傭兵で構成されていたのに対し、フランス革命政府は、自分たちの命や思想は自ら守るんだと国民を鼓舞して、王ではなく共和国政府のために戦う国民軍を結成しました。ここに生まれたのが、いわゆるナショナリズムです。そうして軍隊という存在が男のロマンになり、自国を守るために戦える男こそが、勇気のある素晴らしい人間なのだというイデオロギーを持つ近代国民国家ができたわけです。だから女性と差をつけて、女性には市民権を与えなかった。こうしてナショナリズムに駆り立てられた男性たちの勇気や力が、男性性となって近代社会を引っ張っていった。

それが現代まで連綿と続いている。日本においても同じことが言える。日本においては、こうした軍隊のやり方がそのまま官僚制に引き継がれ、日本の企業社会や組織論に採用されていったと言える。日本企業における現在の組織論は、いまだに明治政府以来の官僚制の名残を引きずっていて、その原型は軍隊だと。そこでは、あくまで優先されるのは組織であり、その成員である一人ひとりの能力や専門性ではない。本来、就職というのは「職業に就く」ことですが、日本の場合はいまだに「就社」なんです。一方、欧米では、例えば私なら教師、みなさんだったら編集者というように、ある組織に属することではなく職業人として専門能力を高めることが目的とされる。それは大きな違いですね。日本はいまだに職業アイデンティティという考え方が確立されておらず、組織を中心に動いているんです。それでは働き方改革がうまくいくわけはありません。

■稼ぐ能力と男性らしさの関係。
どの企業に属し、どれだけ稼いでいるかということが、男性らしさと直結してきた。これは男性学の研究者の方々もよく言っていることですが、日本社会の男性性は、稼ぐ能力と強く結びついているんです。例えば現在のヨーロッパでは性的魅力、アメリカであればパワーというようなものが男性性を象徴するのに対し、日本は歴史的に、稼ぐ能力がすなわち男らしさであり、男性のアイデンティティのよりどころとされてきました。そしてその能力は、どの組織に属するかによっても変わってくる。だからいい企業で安定した雇用を手に入れている人は、稼得力を自分らしさ=男性性として認識しがちなんです。私が大学教員になった頃、当時の大学院生の男の子たちが皆すごく自信がなかったのは、稼いでいなかったから。一人の院生の男の子が、「日本の男性というのは稼ぐことに焦点を置きすぎですね」と吐露していたのを覚えています。つまり彼は、自分は収入を得ていないから一人の男性として認められていないと感じた。高い給料を得る=出世することで一廉の男性になれるというのが、日本における男性性のベースになっています。

第二次世界大戦の敗戦、バブル崩壊や金融危機など、貨幣価値が足元から揺らぐ経験をしたにも関わらず日本の男性性は変わらなかった。バブル崩壊後、さまざまな調査を行なったが、残念ながら、男性性という意味ではほとんど変わらない。むしろ、そういう経済状況でも自分をなんとか強く見せたいという思いから、かえって性別役割分業意識を強める傾向が読み取れたほどです。自分の稼ぎが減ったことは負い目であり、だけどそれには触れてほしくない。だから女性たちの中には、腫れ物に触るように、男性の傷ついた心を癒してあげようというような傾向を強めた人もいました。

■アイデンティティの所在。
経済状況が悪化の一途をたどった90年代の日本だが、ストリートでは、新しい男性像を彷彿させるスタイルが生まれた。旧来の男性性に抗うようなユニセックスなファッションに身を包んだ「フェミ男」と呼ばれる若者たちだ。つまり男性性と女性性をめぐる社会構造自体は変わらなかった、と。

男性たちが経済危機の中で非常に傷ついている。それをきっかけに男性性のイメージを変えようとか、男女の役割を転換しようという男性学の着眼点はいいと思うのですが、なぜ傷ついているのか、そもそもなぜ自分が評価されていると思えていたのか、という根本にまで踏み込んで考えないといけないと思う。自分のアイデンティティの所在が、企業という組織から家庭や地域にスライドしたところで、男性性の根本に目を向けなければ何ら変わりませんから。男性学には、男性が正規から非正規雇用に変わって「自尊心が傷ついた」という観点から男性の非正規労働の問題を扱おうとする向きがありますが、それは正規雇用が男性の当然の権利であるというような働き方のイデオロギーに囚われているに過ぎない。
 
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