新資源・新エネルギーの開発は?
360399 台風をエネルギーに変えるマグナス効果を利用した風力発電
 
山澤貴志 ( 55 鹿児島 ITコンサル ) 20/09/21 PM11 【印刷用へ
日本は年間十数個にも及ぶ台風が接近・上陸する台風大国。それは時に家屋や農作物などに甚大な被害をもたらし、内包するエネルギーも膨大だ。それをエネルギーにかえる。そんな研究にチャレンジしているのが墨田区の下町ベンチャー「チャレナジー」。

リンク より引用

「日本は風力発電大国になれるほどのポテンシャルがあるといわれています。一方で、風の強さや向きが変わりやすい環境のため、プロペラ式風車には厳しい環境であり、さらには台風による事故も起きています。そこで、台風でも安全に発電できる『プロペラのない風力発電』の実用化を目指しています」

台風が直撃している環境下で使える発電方法は現状ないと清水氏は語る。

「風力発電は、風が強ければ強いほど発電量が増えていきます。台風のような強風ではたくさん発電可能に思えるかもしれませんが、実際には秒速25mを超える強烈な風速下では、暴走や破損の可能性があるため停止する仕様になっています。莫大なエネルギーがすぐ近くにあるのに、それを使えないのはもったいない話だと思いませんか?そこでどうにかして電力に利用できないか──という発想がチャレンジのきっかけでした」

日本は山々が連なり、起伏に富んだ地形が多い。それゆえ風が吹く方向や強さが定まらず、乱流になりやすい。加えて、台風や暴風雨のような過酷な状況にも見舞われやすい。この自然環境こそが、風力発電の普及を妨げる一因だったのだ。

「欧州や中国のように、大陸で風が比較的安定した環境であれば風力発電を導入しやすいでしょう。欧州で粉ひき風車が大昔から利用され、風力発電としても100年以上前に開発されたのは、そうした地の利があったからだと思います。しかし日本ではそうはいかない。現在主流のプロペラ式風車は風向きの変化に対応しずらく、強風下では破損や暴走のリスクがあるという欠点があります。日本で風力発電を普及させるためには、日本の環境に合った風車を新たに開発する必要があると感じました」

そこで清水氏は、風力発電に関する約5000件もの特許を片っ端から調べ、たどり着いた一つの答えが“マグナス効果”だった。

マグナス効果についてごく簡単に説明すると、空気の流れ(風)の中に回転する円筒や球を置いたときに、流れの方向に対して垂直方向の力(揚力)が発生する現象のこと。

例えば、野球や卓球、サッカーなどの球技で、球を放出するときに回転を加えると、曲がったりあるいは浮き上がったりするが、これはマグナス効果によるものだ。

マグナス効果を風力発電の新たな仕組みに活用しようと決めた清水氏の試行錯誤の末に誕生した「垂直軸型マグナス風力発電機」。

「さて、日本の環境に対応するためには、風向きにも左右されにくくする必要があります。一般的なプロペラ式風車のような水平軸の風車には向きがあり、正面を風に向ける必要がありますが、風向きの変化に追従しきれない場合があります。そこで、垂直軸の風車にしています。垂直軸の風車には向きがないので、風向きの変化に影響されません。また、垂直軸型マグナス風力発電機は風車全体がゆっくりと回転するため、騒音が小さく、鳥が機械に巻き込まれるバードストライクなどの事故も起こしにくいと考えられます」

「垂直軸型マグナス風車は、台風のみならず、あらゆる環境下で発電できる風力発電システムです。国や場所を選ばず、さらに既存のプロペラ式風車にないメリットがあるので、特に自然環境に対して意識の高い国々での普及が期待できます」

その中で清水氏が最も注目しているのがフィリピンだ。

「フィリピンは日本同様、年間にいくつもの台風に見舞われています。そして点在する小さな島ではほとんどの電力を小さなディーゼル発電機でまかなっているところも多いのですが、燃料の輸送も大変ですし、地球環境的にも望ましくありません。でも風力発電なら、そうした島々にもクリーンで十分な電力を提供できると考えています」

今後の展望を語る清水氏。その表情が物語る通り、グローバルな視点で見ても垂直軸型マグナス風力発電機の未来は明るい

続けてさらなる可能性についても言及してくれた。

「将来的にはタンカーに大型の垂直軸型マグナス風力発電機を搭載し、台風の近くに出向いて発電。その場で海水を電気分解して水素に変換し、運んでくる。そんなことも実現可能かもしれません」

これぞまさに“台風発電”といえるだろう。
 
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