生物の起源と歴史
360339 ウィルスの持つ多様な役割
 
北村浩司 ( 壮年 滋賀 広報 ) 20/09/19 PM10 【印刷用へ
近年「ネオウィルス学」という分野が登場している、それによれば、今まで病原体の塊と思われていたウイルスが、実は人の胎児を守っていることが明らかにされ、人びとに衝撃を与えた。母親の免疫系にとっては父親の遺伝形質は異質な存在であり、普通であれば免疫反応によって胎児内の父親遺伝形質を拒絶しようとするはずである。ところが、拒絶反応の担い手である母親のリンパ球は、一枚の細胞膜によって胎児の血管に入るのを阻止されている。一方でその細胞膜は、胎児の発育に必要な栄養分や酸素の通過は遮らないのだ。長らくこの細胞膜の構造は謎に包まれていたが、ヒト内在性レトロウイルスにあるシンシチンというタンパク質の作業により作られていることが判明した。ウイルスのまったく新しい側面が明らかになったのである。病気の原因とみなされていたウイルスが人間の存続に重要な役割を果たしていることが示されたのだ。

もちろん、ウイルスが影響を与えるのはヒトだけではない。例えばハチ。働きバチには、外敵が現れた際、女王バチを守るために攻撃するハチと逃げ出すハチがいるそうだ。両者の違いは何か。東京大学の久保健雄グループの研究によると、脳内がウイルスに感染しているか否かだそうだ。このウイルスに感染している働きハチは死を覚悟して攻撃行動に出るのである。ちなみにこのウイルスはカクゴ(覚悟)ウイルスと命名されている。

その他にも、ガンと闘うウイルスや、植物に干ばつ耐性や耐熱性を与えるウイルスなども発見された。ウィルスをがん治療に使おうという研究も始まっている。これらは、ウィルスと共存し、生命上の機能の一部を担わさせている事例であるが、DNAそのものに組み入れられたものも、特に人類には多い。
二〇〇三年に発表されたヒトゲノム(人の全遺伝情報)の研究の成果の中でヒトゲノムの九パーセントはヒト内在性レトロウイルス、三四パーセントがレトロトランスポゾン、三パーセントがDNAトランスポゾンだった。
トランスポゾンとは生物の間を自由に移動できる因子であり、その大部分を占めているレトロトランスポゾンは数千万年前に感染したレトロウイルスの祖先の断片とみなされている。さらにDNAトランスポゾンと共通の遺伝子構造を持ったウイルスの発見が二〇一一年に報告された。このように見ていくと我々が持っている遺伝情報の約半分はウイルスに関連したものということになる。

これらの事実はウイルスが単に病気の原因だけではあり得ないということを示している。

とくに注目されるのは霊長類が誕生した時にレトロトランスポゾンの爆発的増加があったことである。これからレトロトランスポゾンすなわちウイルスの祖先が持ち込んだ遺伝因子により霊長類が生まれたことが推測され、ウイルスが生物の進化の推進に重要な役割を果たしてきた可能性について関心が高まっている。変異性の強いウィルスは進化を加速させるという性質があるのかもしれない。また、さらに海洋のウイルスが地球環境たとえば二酸化炭素の蓄積、雲の形成にかかわっていることも明らかにされてきている。

>ウイルスは地球上に現れた最初の生命体という見解があります。・・・ウイルスはRNAワールドの遺物であって、それからDNAが生まれ、さらに原核生物である細菌、ついで真核生物の植物、動物が生まれたという見解です。・・・我々は陸地だけでなく海水も含めて、膨大な数のウイルスに囲まれて生きている。リンク

我々はウィルスと共進化してきただけでなく、環境そのものの一部をウィルスが作り出してきた可能性がある。

参考:『ウィルスと地球生命』
 
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360673 ウイルスを使って病気を治す 立川久 20/10/02 PM11

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