共認心理学:現代の精神病理
352871 「一見、いいひと」が一番やばい
 
匿名希望 20/01/16 PM05 【印刷用へ
「一見、いい人」に悩むのは現代社会の病理
編集部:ここ10年ほどで、スマホやSNSが当たり前になって、人とのつながり方も大きく変わってきたと思います。そのせいもあってか、過度に「空気を読む」人も増えている、言い換えると同調圧力が高くなっているようにも感じます。また、世の中全体に「許容度」というべきものが減っているように感じる人も少なくないでしょう。これらと、今おっしゃった「現代の病理」とは関係があるでしょうか。

下園さん:まさにそうだと思います。私たちが子どもだった数十年前と今では、コミュニケーションが大きく変わりましたよね。少し極端かもしれませんが、田舎の集落の人間関係をイメージしてみてください。「誰が誰と仲良し」だとか、「〇〇さんちでこんなことがあった」とかをみんな知っている。とにかくリアルな人間関係が濃厚。あまりに濃すぎて、若者は疲れて都会に飛び出す、というようなケースも多かった。

一方、今は、ほんの数メートルの距離にいるのにメールでやりとりする時代です。SNSでゆるく広くつながるコミュニティがあるなど、人とのコミュニケーションが大きく変わりました。「メッセージのやりとりだけですむ」というのは一見楽に思えますが、実は、直接対面で話したり、電話で話すのと違い、情報の全体像が見えにくいという側面があります。

ここで、自衛隊での話を例えに説明しましょう。

相手は自分に敵意を持っていないか、相手が敵意を持っていた場合に自分にどのくらいのダメージを与えるか、そのためにどのような対策を準備しておくべきか、などの心づもりをすることを自衛隊では「敵の可能行動」の考察と呼びます。私たちは、対面で話すときに、相手の表情や口調から、「相手には敵意がないか」「こちらが言ったことを根に持ってないか」「相手の口調を素直に受け取ってよいか」ということを無意識のうちに探っているのです。

ところが、メールなどの言葉だけのやりとりだと、「敵の可能行動」が見えにくい。もしかして怒っているかもしれない、という相手から「大丈夫です」という言葉だけもらっても「本当かな。どう大丈夫なんだろう」と悩むことがありますよね。

このように、メールの文面だけではどうしても疑心暗鬼になり、不安軸で物事を捉えることが多いのです。相手の意図がどこにあるのか、こんな可能性があるのではないか…などと考えるのはエネルギーを使います。将棋では、何手か先までを予測しなければいけませんから、膨大なエネルギーを消費するそうで、プロ棋士は一局で体重が2〜3キロも落ちることがあるという話を聞いたことがあります。同じような「配慮疲れ」による消耗が現代人を疲れさせていると思います。

編集部:なるほど、「いい人なのに、モヤモヤする」と悩むことが、「疲れ」に結びつくのですね。コミュニケーションがデジタル化したことで、それが顕著に出る可能性があると。…とはいえ、対人トラブルは、人と人がある限り起こるもので、今に始まった話ではないという面もありますよね。

下園さん:そうなんです。ただ、質が変わってきたと感じます。少し前までは、パワハラ系のおじさん、例えば、誰もが引くような暴言を吐く人、ひどいケースでは、すぐ殴ったり蹴ったりと暴力に及ぶ人も日常的に存在していました。「あのおじさんってひどいよね」というような、誰が見ても「明確な悪」を目にすることがわりとあったのです。

しかし今は、明確な悪が量的に減っています。「パワハラはNG!」という認識が広がってきたこともあるでしょう。その分、悪の姿がモヤモヤと曖昧(あいまい)になっていて、見えにくくなっています。

私はこの現象を勝手に「花粉症現象」と名付けています。昔はウイルスや菌が身の回りにたくさん存在し、免疫システムはそれを叩くのに一生懸命でした。しかしそれが少なくなり、今度は花粉症が増えてきた。花粉ごときで、免疫システムが過剰に反応するのです。さらには、何もないのに自らを叩くようになる自己免疫疾患が起こるようになる。免疫が作動する対象が変わっているのです。

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