素人による創造
352764 市民をイノベーションのパートナーにするリビングラボ
 
大森久蔵 ( 30代 横浜 専門職 ) 20/01/12 PM10 【印刷用へ
実際のユーザーを巻き込みながら製品開発を行う新しい手法、リビングラボ。
今やイノベーションもどれだけ幅広く追求仲間を集められるかが勝敗を決する、という事だと思う。

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 生活環境の複雑化にともない、企業に求められるサービスや製品も多様化している。その中で、一般生活者であるユーザーの声を聞きたいと考える企業が増えたが、従来の企業からユーザーへの一方通行の調査では、ユーザーの本当のニーズをつかむには困難なことが多い。さまざまな手法が試される中、サービスや製品開発のプロセスに、ユーザーを巻き込む手法が注目を集めはじめている。「リビングラボ」という取り組みだ。

 リビングラボとは、もともと北米で開発された手法(仕組み)のことで、2000年頃から北欧を中心に世界中に広まった。
その特徴は、ユーザー(市民)に、企業、行政、大学などと同等の立場で、サービスや製品開発の初期の段階から関わってもらい、実生活に近い環境で評価・改善を繰り返すことにある。
継続的な共創を通して、ユーザーが真に求めるサービスや製品を創出していこうというわけだ。
(中略)

 このリビングラボを、2017年にNTTテクノクロスが横浜で立ち上げた。

(中略)

 リビングラボにはどのような効果や気づきがあったのか?「はぐラボ」を運営するNTTテクノクロスの中谷(なかたに)桃子工学博士と、濱口(はまぐち)菜々氏にお話を伺った。

※UXデザイナーとは、ユーザーの「体験」に着目してサービスを設計するデザイナーのこと。

(中略)

──リビングラボをはじめるきっかけは何だったのでしょう?
濱口氏:
 私たちは普段、UXデザインに関するコンサルティング業務に携わっています。そこでは企業から「ユーザーの考えを知りたい」という依頼を受け、ユーザーに個別インタビューをした結果を、企業に伝えています。このやり方だと、企業側は直接ユーザーの声を聞くことができないし、ときに私たちが解釈したことが別の意味に解釈されることも起こり、企業とユーザーの距離が縮まらないと感じていました。それならば、企業もユーザーも一緒に集まって直接対話できる場を作ればいいのではと考えたのです。

中谷氏:
 一方、ユーザーの立場に立つと、普段自分たちが感じていることを企業に伝えられる場ってなかなかないと思うのです。それが今回のような場があれば、自分たちの声を直接伝えられるうえ、後々サービスや製品に反映されて、自分たちの生活がよくなることもあります。そういうお互いにWin-Winの関係も築けるのではないかとも考えました。

◇参加者がリビングラボに感じていること
 ここまでリビングラボの主催者の声をご紹介してきたが、参加者側はどのようなメリットを感じているのだろうか?

五十嵐さん:
 「はぐラボ」に参加することで、子育てをしながら社会とのつながりが持てるのがいいですね。企業さんと、どのようなサービスが必要かを考えることが、普段の生活の気分転換になるところもあって、ずっと参加しています。ほかの参加者からもいろいろな情報を得られて、子どもにとっても、自分にとっても有益な発言ができて、ストレス発散もできて、社会とつながることもできます。もっと多くの人が参加してくれればいいのにと強く思います。

長谷川さん:
 生活の中で抱えている育児の悩みなどを、たとえばママ友の会で話したところで、有益なことにはつながりはしません。ただ喋って発散するだけです。でも「はぐラボ」は違います。自分が普段抱いている悩みや不安に感じていることも、ここで発言すれば、何かのサービスになるかもしれない。そんな延長線上(の未来)が少し見えているところが、とても素敵な取り組みだなと感じています。

──これまでの活動で、今まで得られなかったアイデアや気づき、つながりが生まれたという経験はありますか?
濱口氏:
 たくさんあります。たとえば、今日実施したワークショップでは、ある企業のアプリ開発のために、子育て中の母親から、「子どもの気持ちを知りたい」と感じるシーンを教えてもらうというものでした。私が予想していたのは、子どもが泣き叫んでしまって、お母さんが困ってしまうシーンです。ところが、あるお母さんから「うちの子はあまり泣かないから、不満を抱えているのかどうか把握できない。だから不満を感じているのかどうかを知りたい」という意見が出たのです。それに対して周りの人も同意しはじめて、多くのお母さんたちがそう感じていることがわかりました。これって、この場だからこそ得られた気づきですね。

中谷氏:
 当初はサービスを作るとか、ニーズを聞き、課題を明らかにするといったことを目的に開催したのですが、意外とそうじゃない効果がたくさん生まれているなと感じています。たとえば、参加者同士のつながりが生まれたり、たまたま同じ開催時に居合わせた企業の人と、別の企業の人が知り合ったり、行政と企業の人がつながったり。われわれの意図してないつながりがどんどん生まれています。

──企業同士や、企業と行政など、あらたな共創のタネが生まれていると。
中谷氏:
 そうしたつながりから私自身が得るものも多くて、たとえば、われわれとは違う文脈で活動をしているNPO法人とつながることもできます。そうした人たちの価値観を知った上で、自分の業務に取り組めるようになったことは大きいなと感じています。

(中略)

──これまでのリビングラボの活動は、どのような実績をもたらしたでしょう?
中谷氏:
 来ていただいている企業の方とユーザーとの距離が近づいてきた、というのが大きいと思います。サービスを作るうえでは、ユーザーの声をしっかりサービス・商品に反映していく必要があると思っていますが、この場は無償開放していますので、企業の人が気軽にユーザーの声を聞くことができます。さらに、企業の方とユーザーが共創活動を行うので、お互いを深く知りながら、一緒に良いものを創りあげる機会になっていると思います。

濱口氏:
 はじめて会った人同士では難しいけども、ここで毎回会っている人同士だったり、あるいは私たちと信頼関係が築けたりしていると、いろいろな意見が出てきます。こちらから何かたずねなくても、自分から発言してくれたりするのです。
そこに、普通のインタビューにはない大事なものがあると考えています。コミュ二ティであることが、サービスや製品作りにおいてとても有効だと感じています。
 
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