生物の起源と歴史
352642 交尾に明け暮れて死ぬネズミ
 
匿名希望 20/01/08 AM01 【印刷用へ
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アンテキヌスは体長が10センチメートル程度しかない。彼らは小さなネズミのような有袋(ゆうたい)類である。有袋類というのは、カンガルーのように袋の中で子どもを育てる仲間だ。

有袋類は未熟な胎児を産み、袋の中で子どもを育てる。一方、一般的な哺乳(ほにゅう)類は、有胎盤類と呼ばれている。有胎盤類は胎盤が発達しており、母親のお腹の中で子どもを十分な大きさにまで育てることができるのである。

有袋類と有胎盤類とは、もともと共通の祖先を持つが、1億2500万年以上前に枝分かれして、それぞれの進化を遂げたと言われている。

世界では有胎盤類が多様な環境に適応して、多様な進化を遂げたが、オーストラリアでは、有袋類がさまざまな進化を遂げた。

たとえば、有胎盤類のネコのように、有袋類ではフクロネコが進化した。また、有胎盤類のオオカミに対して、有袋類のフクロオオカミ、有胎盤類のモグラに対して、有胎類のフクロモグラ、有胎盤類のモモンガに対して、有袋類のフクロモモンガというように、その進化はよく似ている。

有胎盤類も有袋類も環境に適応してよく似た進化をしているのである。ちなみに有袋類のカンガルーは、有胎盤類ではシカ、有袋類のコアラは有胎盤類のナマケモノに相当すると考えられている。

アンテキヌスは、有胎盤類ではネズミによく似ている。

ネズミは弱い生き物で、さまざまな動物たちの餌にされる。そのため、ネズミは1年程度の短い寿命の間に、たくさんの子どもを産んで生き残るという戦略を選んでいる。

アンテキヌスもネズミと同じ戦略である。

彼らの寿命も短い。アンテキヌスのメスは寿命が2年程度である。オスの寿命はさらに短く、1年に満たないとされている。

彼らの一生は忙しい。

アンテキヌスは生まれて10カ月で成熟し、生殖能力を持つ。つまり、大人になるのだ。

人間が20歳で大人になるとすれば、それまでに240カ月かかっている計算になる。アンテキヌスは、この24倍もの速さで大人になるのだ。

アンテキヌスは冬の終わり頃の2週間程度が繁殖期になる。そして、大人になったアンテキヌスのオスは、メスを見つけては、次々と交尾を繰り返していくのである。

哺乳類のメスは、オスを選り好みする例が多く見られる。1回に産むことのできる子どもの数が限られている哺乳類では、いかに優れたオスの遺伝子を子どもに託すかが重要なのだ。そのため、交尾相手のメスをめぐって、オスどうしが戦い、強いほうのオスだけがメスと交尾をするというルールを持つ動物も少なくない。

ところが不思議なことに、アンテキヌスのメスは、どんなオスでも受け入れるという。おそらくは、それだけ繁殖をし、子孫を残すことが難しいということなのだろう。選り好みをしている余裕がないのだ。

交尾に明け暮れて死ぬ
もちろん、オスのほうもメスを選ぶことはない。手当たり次第に、と言えば言葉は悪いが、オスも出会ったメスと次々に交尾を繰り返していく。

強いオスだけが子孫を残すことができるというルールであれば、オスたちは体を大きくして闘争能力を高めていく。しかし、アンテキヌスにとっては、強いことには何の意味もない。どんなオスでもメスは受け入れてくれるのだから、少しでもたくさんのメスと交尾したオスが、より多くの子孫を残すことができる。そうなれば早い者勝ちだ。アンテキヌスにとっては、他のオスと戦っているような暇はない。

他の動物たちは、ライバルと競い合ってパートナーを選び、甘い鳴き声やスキンシップで愛を育みながら、愛の結晶を宿す。しかし、アンテキヌスのオスは、恋だの愛だの言うことは一切なく、ただ交尾相手を探しては交尾をし、また次の交尾相手を探すことを繰り返す。

それも無理のない話だろう。何しろ、アンテキヌスに許された繁殖期間はわずか2週間しかない。それが、アンテキヌスにとって生涯で1度にして最後のチャンスである。この期間を過ぎれば、オスは寿命が尽きてしまう。そのため、アンテキヌスのオスは、この間、不眠不休でメスを探し続け、ひたすら交尾を行っていくのである。
 
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