政治:右傾化の潮流
348684 米軍の下請軍隊として機能するための改憲 秋の臨時国会が焦点(その2)
 
わっと ( 熟年 東海 ) 19/08/21 PM06 【印刷用へ
リンクより引用
(その1)からの続き

改憲4項目がめざすもの
 
 こうした改憲論議に向け、自民党が昨年3月に決定したのが改憲優先四項目の「条文イメージ」(たたき台素案)【表参照】である。四項目は、@安全保障にかかわる「自衛隊」(九条改正)、A統治機構の在り方に関する「緊急事態」(緊急事態条項導入)、B1票の格差と地域の民意反映が問われる「合区解消・地方公共団体」、C国家百年の計たる「教育の充実」である。
 

 「九条改正」関連では「戦力不保持」と「交戦権の否認」など九条の条文自体は変更しない。そして現在の条文の後に「九条の二」をもうけ「前条の規定は、自衛の措置を妨げない。そのための実力組織として内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛隊を保持する」という内容を盛り込む手法だ。だがこの「九条の二」の新設によって、現在の九条は「自衛の措置」を掲げれば全面否定されることになる。それは「戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認」をすべて骨抜きにし、「参戦、攻撃兵器保有、交戦権容認」を認めた憲法になることを意味する。これは自衛隊が明確な攻撃兵器の空母保有を具体化したり、ホルムズ海峡への自衛隊員派遣を検討する動きとも連動している。
 
 そしてこの「自衛措置」発動の引き金になるのが「緊急事態条項」である。これについて自民党は巨大地震や津波の対処を前面に押し出し「選挙実施が困難な場合における国会議員の任期延長」を規定した。同時に「国会による法律制定をまつ暇(いとま)がない特別の事情があるとき内閣が国民の生命、身体及び財産を保護するため政令を制定することができる」と規定した。確かに大規模災害の対処は必要である。だが今回自民党が狙っているのは、一旦内閣が緊急事態を宣言すれば、国会審議もへず内閣が自由に法律(政令)を制定できる体制である。
 
 また2012年に自民党がまとめた改憲草案は、今回の条文イメージより突っ込んだ方向性を示している。草案の「緊急事態」の項では、九八条一項で内閣総理大臣に閣議のみで緊急事態宣言を発する権限を持たせ、同条二項で事前の国会承認がなくても発動できることを明記している。さらに九九条一項では内閣に法律と同じ効力を持つ政令を制定する権限を持たせ、内閣総理大臣が「財政上必要な支出その他の処分」をおこなうことを認めている。内閣総理大臣が緊急事態宣言を発すれば内閣が自由に法律をつくることもできるし、内閣総理大臣が国家予算を意のままにできる体制である。
 
 憲法はもともと内閣(行政)、国会(立法)、裁判所(司法)の3つの独立した機関が相互に抑制しあってバランスを保つ「三権分立」を基本原則としてきた。国会と内閣の関係でいえば、内閣が国会召集や衆院解散の権限を持つが、国会側は行政に必要な法案整備の権限を持ち、内閣不信任決議を上げたり、内閣総理大臣を任命するなど、内閣がおかしな方向へ進むことを牽制する役割がある。とくに国会は国民が直接政治に参加する場であるという性質から「国権の最高機関」と位置づけている。ところが緊急事態宣言を発すればこの三権分立を否定し内閣に法律をつくる権限が移る。それは国会を何の権限もない飾り物にする意味合いを持っている。
 
 そして問題はどのような事態を「緊急事態」と規定するかである。九八条では、@外部からの武力攻撃、A内乱等による社会秩序の混乱、B地震などによる大規模な自然災害、の三点を例示した。しかし自民党は「ここに掲げられている事例は例示であり、どのような事態が生じたときにどのような要件で緊急事態の宣言を発することができるかは、具体的には法律で規定される」(自民党改憲草案Q&A)とのべ、さまざまな事件を「緊急事態」と規定できる余地を残した。条文にも「その他の法律で定める緊急事態」を適用項目に潜り込ませた。
 
 こうして総理大臣が「緊急事態に指定する必要がある」と認めればテロ、全国的なストライキや大規模デモをともなう抗議行動、死者を多数出すような交通事故や事件、大規模停電によるインフラ機能の停止、周辺諸国との軍事緊張…などあらゆる事象が適用対象にできる。それはワイマール憲法や大日本帝国憲法で規定した国家緊急権の焼き直しであり、国民的な論議も承認もないまま内閣が勝手に戦時立法を制定して戦争動員や大量虐殺に駆り立てていく危険性を持っている。
 
 「合区解消・地方公共団体」は一票の格差是正が表向きの理由だが、ここに「地方自治」の性格にかかわる条文を盛り込んだ。もともと「地方公共団体は」としていた規定を「基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本…」と変えた。これは民意が反映しにくい広域自治体や道州制を基本的な単位にしていくという内容である。
 
 「教育の充実」では「教育を受ける権利」や「義務教育無償」の条文の後に「国は、教育が…国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み…教育環境の整備に努めなければならない」と追加した。九条改定や緊急事態条項導入を盛り込んだ国の利益に尽くす国民育成に国が強力に関与する姿勢を示した。国が「教育の充実」や「教育無償化」を掲げて学問・研究分野への統制へ乗り出す方向が露呈している。

(その3)に続く
 
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