もはや学校は終っている
347668 学校に行かないと決めた、12歳の哲学者が教えてくれること
 
大川剛史 ( 28 東京都 会社員 ) 19/07/16 PM07 【印刷用へ
不確実性の高い現代、いい大学に行き、いい会社に入って、出世して……というこれまで理想とされてきたキャリアのあり方が揺らいでいます。一方で、それに代わる選択肢を見つけだし、周囲に流されず決断し、行動することが難しいのも確か……。

そんな私たちに示唆を与えてくれる、一人の「少年」がいます。それが、現在12歳、この春から中学校に進学予定の中島芭旺(ナカシマ・バオ)さんです。

「物事に重さはない。ただ、その人が『重い』と感じている。ただそれだけ!」「『こわい』は、やりたいということ。やりたくなかったら『やりたくない』って思う。『こわい』ということは、やりたくないわけではない」

芭旺さんの言葉は海外の人たちの心にも響き、韓国、台湾、ノルウェーでも翻訳され、出版。その後、ドイツ、ベトナム、ポルトガル、中国でも出版が決定するなど、「小さなからだの哲学者」として世界で高く評価されています。

その才能には、ビジネス界も一目置きます。ソフトバンク会長兼社長の孫正義さんが、私財を投じて次世代の異能の力を開花させようとする「孫正義育英財団」の準財団員にも選ばれ、これからの活躍が期待されているのです。

このように芭旺さんが年齢、国、領域を超えて注目される理由の一つは、その「生き方」——。

小学3年生のとき、「学校へ行かない」ことを宣言し、自宅で学習したり、読んで「面白い」と思った本の著者の講演会に一人で出かけていったりして学ぶことを選びました。そして現在は、その日によって「学校へ行く/行かない」を自ら選択しています。

「学校へ行くのが当たり前」「学校を卒業したら、会社に勤めるのが当たり前」「会社へ行くのも当たり前」……そう考える私たちが芭旺さんの言葉からあらためて学んだのは、「自分の頭で考え抜く」ことの重要性でした。

学校のシステムへの疑問から「前向きな不登校」に

―芭旺さんが小学校へ行かなくなったのは、なぜですか。

いじめがあったのもきっかけの一つなのですが、学校のシステムに「疑問」を持ったのが大きな理由でした。

何かを勉強していて、すごく興味のあることでも、授業時間が終わると、勉強をやめないといけない。なんで2時間じゃなくて、50分とかそのくらいなんだろう、って。

テストのときもそう。問題を早く解き終わったら、本を読みたいのに、「まだテスト中なんだから読んだらダメ」「ちゃんと見直ししなさい」と言われる。見直したとしても、10分もあれば終わっちゃうのに。

勉強することは好きだったけど、学校のシステムが自分に合っていなくて、嫌いだった。それで、お母さんに「もう学校に行かない」と伝えたんです。


僕は不登校はひとつの才能だと思います。それは不登校するという決断を出来るという才能。自分を信頼できるという才能。(『見てる、知ってる、考えてる』より)

「今日学校に行くか、誰に学ぶか」すべて、自分の決断
―学校へ行かないと決めてから、どんなふうに過ごすようになったのですか。

自分で教科書を読んで勉強したり、知りたいことを調べたり、知識を得たことについて深く考えたりするようになりました。

あと、会いたい人に会うようにしています。本を書くきっかけをくれたホリエモンさんにも会いに行って、「学校に行っていないんです」と話したら、「いいじゃん」と言ってもらえました。ホリエモンさんの、自分に正直に生きているところや、自分のやりたいことを実行しているのが、いいなぁと思っていたんです。

―自分でやることを決めたり、勉強したりするには、自立心や自制心が必要だと思うのですが、戸惑いはありませんでしたか。

もちろん、勉強しない日がないわけではありません。でも、僕はもともと勉強が嫌いではなくて、むしろ好きなほうだったので、自主的にがっつり勉強するときもあるんです。

家庭教師の方に来ていただいたこともあったのですが、僕は「教わる」というより、自分の気になったことをネットや本でとことん調べるほうが合っていたみたい。

何をどう学ぶかも含めて、「自分のことは自分で決める」と覚悟していたので、大きな戸惑いはなかったと思います。

―最近はまた学校へ通うようになったんですね。

何か特別な変化があったわけではないんです。ただ、「学校に行きたくないときに無理して行かない」「自分のことは自分で決める」と決めてから、かえってやる気が出るようになったのは確か。それでまた通うようになりました。

もともと学校そのものが嫌いというわけではなかったし、学校に行くことで楽しめることも、もちろんあります。「強制的に行かなくてもいい」となると、なんとなく気が楽になって、自然と行きたいと思えるようになったのかもしれません。

今は、朝5時くらいに起きて、その瞬間に学校へ行くかどうかを決めています。学校の先生もそれを受け入れてくれているみたいで、昼から行ったら「朝の会ではこんなことがあったよ」と話してくれたり、僕からも「こんな人に会ったよ」と話したりします。

―ちょうど小学校をご卒業されて、中学校へ進学されるんですよね。環境が変わることで、何か心境に変化はあるのでしょうか。

同じ小学校の子がそのまま中学へ進むので、「中学に入ったらこんなことをしたい」という具体的なイメージがあるわけではないんです。

未来なんて、分かるはずのないこと。「未来」に縛られるより「今」を生きたほうがいい。なので、今はそれに集中しています。

仕事にしても、「どうして毎日同じところへ行かなきゃいけないんだろう」という疑問は、もともとたくさんのひとが持っているんだと思います。疑問を持って、その答えに納得できればいいけど、それができなかったら、疑問が疑問のまま残ることになる。それを表に出せるかどうか、なんです。

―「自分だけが幸せになる」のではなく、「一人ひとりの幸せを尊重できる」ということなのかもしれませんね。

たぶん、そう思えないんだったら、その集団が自分に合っていないということなんだと思います。そういう集団は、抜けてしまえばいいと思う。

人っていっぱいいるじゃないですか。僕も学校を休んで、クラスの子と会わなくなったけど、インターネットでいろんな人と出会えて、いろんな話ができるようになりました。居場所はどこにでもある。もっと、自分のことを大切にしてもいいんじゃないかな。
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_347668
  ※トラックバックは承認制となっています。

 この記事に対する返信とトラックバック
347703 不登校のほとんどがフリースクールに通わない理由 北口真穂 19/07/17 PM11

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp