共認心理学:現代の精神病理
347663 なぜ能力の低い人ほど自分を「過大評価」するのか
 
直永亮明 ( 24 広島県 会社員 ) 19/07/16 PM01 【印刷用へ
自身の能力を過大評価する。
現業の場面でも見られる、余計な思考。
しかも能力の低い人ほどその傾向が顕著に見られるというのが気づき

こういった余計な思考は必ずといっていいほど照準がブレる。
突破口は自身の思考の癖を知ることと無能の自覚。
自分はできていないと直視することでどうするが生まれる。
それしかないと思う。

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○「自分は平均以上」と勘違い

先日電車に乗っていたら、隣に中学生くらいの女の子が座っていました。かわいい子だったので、手元のスマートフォンを操作している振りをしながら、横目でチラチラと見ていました。

すると、あろうことか、彼女は席を立ってしまいました。

ジロジロ見過ぎてしまったことを反省しましたが、しかし、どうやら私の視線が気になって席を立ったわけではないようです。理由はすぐに明らかになりました。「どうぞ」と目の前のお年寄りに席を譲ったのです。

深く恥じ入りました。

気が利く、気が利かないとはなんでしょうか。

彼女は気が利く人です。一方、私は気が利かない人です。これは明らかです。でも、ここで問いたいのです。気が利かない人は、その時、自分を「なんと気が利かない人間だ」と残念に感じているでしょうか。

きっと感じていないでしょう。なぜなら、そもそもそのお年寄りが困っているという事実に気づいていないからです。気づいていてわざと席を譲らなかったら、それは気が利かないとは言いません。単に意地悪なだけです。

つまり、人は「自分がいかに気の利かない人間か」を知ることができないのです。ところが、他人が気が利かないことはすぐに気づき、指摘したり憤慨したりすることができます。

おそらく現実の自分は、自分に対して抱いている自己像よりも、気が利かない人間であることは間違いないでしょう。

これは気が利く気が利かないだけの話ではありません。日常生活全般において、似た状況は少なくありません。結局のところ人は実際のレベルよりも自分を高く評価することになります。

〈中略〉

○脳のクセを知らないと損をする

たとえば博士らは、ジョークを楽しむ能力について調査しました。

ユーモアは洗練された知識と機知がないと理解できません。65名の大学生を対象に、30個のジョークを読ませ、どれほど面白かったかを評価してもらいました。この点数でユーモアの理解度がわかります。これと同時に「あなたのユーモアの理解度は同年代の中でどのくらいに位置していると思いますか」と訊きました。

調査の結果、ユーモア理解度の順位の低い人ほど自己評価の高い傾向があることがわかりました。

成績下位25%以内の人は、平均して「上位40%程度にいる」と自分を過大評価したのです。一方、成績上位25%以内の人は「上位30%程度にいる」と過小評価していました。

つまり実際の能力の個人差は、人々がイメージする差よりも、はるかに大きいということになります。なお、この現象はユーモアだけでなく、論理的思考力や一般学力試験にまで、普遍的に見られます。

博士らは、この現象を次のように説明しています。1.能力の低い人は自分のレベルを正しく評価できない。2.能力の低い人は他人のスキルも正しく評価できない。3.だから、能力の低い人は自分を過大評価する。

この研究は心理学では広く認知され、博士らの名前にちなんで「ダニング=クルーガー効果」と呼ばれるようになりました。

この効果の面白いところは、ダニング=クルーガー効果について初めて知った人の多くが「たしかに自分を勘違いしている人はいますね。身近な人の顔が具体的に思い浮かびますよ」と笑顔で答えてくれることです。つまり多くの人は「まさに自分が該当する」かもしれない可能性に思い至らず、自分を棚に上げて、他人に例を探し始めるのです。

これこそが冒頭で説明した「気が利かない人は自分の気の利かなさに気づいていない」ことに相当します。これもまたダニング=クルーガー効果の亜型で、とくに「バイアスの盲点」と呼ばれます。

いずれにしても、ここで見逃せないポイントは、脳が無意識のうちに判断をミスしてしまうという点です。決して「わざと」でなく、あくまでも自動的で反射的な思考として「そう思ってしまう」わけです。

つまり、脳には特定の「思考癖」があるというわけです。

そうした脳のクセは「認知バイアス」と呼ばれます。認知バイアスは曲者で、しばしば奇妙で、ときに理不尽でさえあります。こうした心理のクセに気づいていないと、ふとしたところで判断を誤ったり、損したりしかねません。だとしたら、これをよく理解しておくことは、日常をよりよく生きることにつながります。

〈中略〉

○人間が好きになる脳のトリセツ

いかがでしょうか。認知バイアスは、そうとわかっていても、つい落とし穴にはまり、なかなか修正することができないクセです。だからこそ認知バイアスなのです。

人は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に生きているものです。最大の未知は自分自身です。

本当の自分の姿に気づかないまま一生を終えるなんてもったいないーー。せっかく人間に生まれてきたのですから、自分の認知バイアスについて知っておくのは、決して悪いことではありません。
脳に偏見があること自体は罪ではありません。クセは脳のデフォルトです。そして偏見はときに生きることを楽にしてくれます。
しかし、だからといって、その偏見は必ずしも礼賛されるとは限りません。もし全員が自分の「正しさ」を妄信したままコミュニケーションすると、不用意な摩擦が生じかねません。

脳のクセを知っていれば、余計な衝突を避ける予防策になります。それだけではありません。脳を知れば知るほど、自分に対しても他人に対しても優しくなります。そして、人間って案外とかわいいなと思えてくるはずです。
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