健康と食と医
347603 科学が進んだ未来、人の食生活はどうなっているのか
 
匿名希望 19/07/14 AM02 【印刷用へ
未来の食材として「昆虫」が期待されているが・・・

 私たちホモ・サピエンスの祖先は「雑食」を選んだ。これにより、いろいろな食材を得られるようになり飢餓リスクが減った。反面「何を食べるか」と選ぶことも宿命づけられた。今後、食材の幅はどれだけ広がるだろうか。どんな材料が食材に加わるだろうか。

 まず、大きく現況を捉えると、世界の人びとの食習慣の「類似度」は高まっているらしい。つまり、小麦、米、トウモロコシ、砂糖、搾油作物、動物性食品などからエネルギー摂取が増えているのだ。だが、その一方で、食習慣の類似度が高まるということは、その食材が使われてこなかった地域で新たにその食材が使われることを意味する。よって、食の多様化も進んでいるという。

 つまり、大きく見れば食は均質化しているが、個々で見れば食は多様化しているわけだ。


世界ではすでに1900種類以上の昆虫が伝統的に食べられているという。

 こうした状況の中、今後、人類にとっての新たな日常的食材は生まれるだろうか。本書で取り上げているのが「昆虫」だ。資源として得る上で効率性が高く、栄養面でも高タンパク。2013年には、国連食糧農業機関(FAO)が、動物性タンパク質の代替食品として推奨した。海外ではレシピ本も出始めたという。

 では、昆虫がいまより数段、ヒトが頼りにする食材になる日はくるだろうか。その必要性があるかが大きな鍵となりそうだが、筆者(私)にはやや疑念がある。

『成長の限界』を共著書にもつヨルゲン・ランダースの予測では、食糧生産量の増加により、少なくとも2052年までは食糧は十分あるという。また、本書では直接的に触れていないが、ゲノム編集技術の台頭で、ヒトがよく食べてきた食肉や魚類などの個体を大きくすることは可能となろう。昆虫食が必要に迫られる状況は限定的ではないか。

 著者も「未来の食材としてある程度生産・消費されるには、何らかの仕掛けが必要」と述べている。

人類史の過去における調理器具といえば、火を用いて加熱するための鍋などの道具が挙げられる。エネルギー摂取の効率性を高めた点で貢献してきた。調理器具にはどのような進歩があるだろうか。テクノロジーの進み方には、突然変異的な要素も多分に含まれるため予想は難しいだろうが、それでも著者はテクノロジーの現況から敷衍(ふえん)して、未来の調理器具を描く。

 本書で大きく取り上げているのが、「3Dフードプリンター」だ。インクカートリッジにタンパク質や脂肪などをセットし、3次元に“プリントアウト”することで「誰でもどこでも作ることができる」。単独で使うのではなく、利用者の健康状態や嗜好などの個人データと組み合わせれば、3Dフードプリンターの技術を中心に、個人に最適な食をもたらす「個別化食」への潮流も強まってこよう。

 より筆者(私)が興味を持ったのが「録食」の実現化についてだ。録音や録画するように、録食する。料理の見た目、味や香りの成分、構造などの情報を「料理スキャナー」で取り込んだり、人間による調理をロボットやマシンが再現できるようになれば、レシピよりも詳細に料理を後世に遺すことができる。

 すでに英国で「モリー」という自動調理キッチン(ロボット)が開発されている。録食が普及するかどうかも、社会がどこまでそれを必要とするかによるだろう。技術的には遠い未来の話ではない。

「趣味ダイエット、特技リバウンド」の現代人

 食と健康の関係性は強い。食の個別化が進んだ未来社会では、個人の健康状態などのデータと人工知能(AI)を活用し、その個人にとっての理想的な食が得られるようになるかもしれない。これは、一歩先に個別化が進もうとしている医療の今後のあり方とよく似ているように思える。

一方で、私たちヒトの体の進化は、技術の進化とは比べようもないくらい遅い。過去の飢餓の時代に機能していた体重を維持する仕組みは、現代の飽食全盛の時代において多くの人びとには無用の長物となってしまった。現代人を「趣味ダイエット、特技リバウンド」と著者は表現する。言い得て妙だ。

 これからの人類も、現代の課題である肥満を抱えていくことだろう。この課題に対しても、人間の意識を先回りする「見えない医者」や「見えない管理栄養士」が私たちの健康維持をサポートすると著者は期待を寄せている。

 栄養補給という点では、人間に必要な栄養素をすべて配合した合成食品「完全食」が世に出始めた。米国Rosa Labsの「ソイレント」、日本企業コンプの「COMP」などだ。従来からあるサプリメントは文字どおり日常の食事では不足しがちな栄養成分を「補助」する食品だが、完全食となれば機能的には日常の食事に取って代わるものになりうる。

技術は進むが、人間の心は・・・

 こうして食を巡る未来の状況を見ていくと、科学が裏打ちし、技術が用意したプロトコルに従って人間が食生活を送りさえすれば、食への思考を放棄しても生きていけそうな感もしてくる。でも、そうだろうか。筆者(私)にはそう思えないし、著者もそうは考えていまい。

 たとえ、食の完全管理化が可能になったとしても、その食によって人間の心がすべて満たされることは決してないだろう。食は「生きるためのもの」にとどまらないからだ。

 筆者(私)もそうだが「食べるために生きている」人間も多くいる。また、著者も本書で重要な指摘をしているとおり、食は「人となり」を作るし(逆に人が「食となり」を作るともいう)、食は「人と社会とをつないでいる」ものでもある。

 技術の進歩により、人間がより人間らしく生きるようになる時代がやってくるとよくいわれる。その「人間らしく」のなかに「食べる」という行為は入っている。食を巡る科学や技術はこれまでより加速しようとも、食べることに対する人間の心は過去から現在にかけてと比べて、さほど変わらないのではないか。
 
  List
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_347603
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp