素人による創造
347437 盆地京都を庭園都市と見立てる庭園は総合生活空間
 
高梨俊寛 ( 56 島根 プランナー ) 19/07/08 PM08 【印刷用へ
大きな水がめの上に立つ京都平安京。京都は長い歴史の中でこの水と向き合い知恵を絞って水の文化を守り続けてきました。

ミツカン水の文化センターリンクより

NHKが『アジア古都物語‐京都千年の水脈』(日本放送出版協会、2002)の中で、地下水盆の上に平安京の都市発展があったというこれまでにない京都像を描いています。京都以外にも日本全国の盆地で、水とともに生きていくさまざまな文化があったと思いますが、京都は他の都市と比べスケールが大きかった。それで地下水盆の上に形成された都市として、特に注目されたのでしょう。

とは言うものの平安京の計画段階で、すでに水の流れや地下水脈等が完全にわかっていたとはとても考えられません。やはり、政治的、心理的、宗教的感覚で立地を決めた部分が大きかったのでしょう。そして、いったん都市の形ができてから「しまった、えらいところに道路を造ってしまった」といった失敗を繰り返して、水とうまく折り合いをつけるやり方を身につけていったのだと思います。計画都市だからこそ、一つひとつ解決せざるを得なくなり、水と闘い、妥協・共存をしたところから、知恵が蓄積されていきました。

確かに水の条件は良かった。しかし扇状地で山が周囲にあって、そこから川が流れ出るという構造を持った土地は、京都以外に日本中どこにもあります。京都が「水の文化」という点で関心を持たれるのは、他より抜きんでた都市を人工的に造ってしまった結果、困った事柄に解決策を与えてきたという知恵の蓄積のおかげだと思います。これが水に関わる文化的蓄積です。

平安京以降の京都の人は、先に家を建て、水を探し、井戸を掘り、湿地帯を上手に住宅地に変える知恵で、水と何とか折り合いをつけてきました。「京都人は賢いから水を上手に使っている」と言うほど、京都人をほめる気はありません。先に都市計画を造ってしまったから、生きていくためには何とかするより仕方がなかった。鴨川もつけかえたし、堀川をわざわざ掘ったのも洪水対策です。水が出て困るから流路をうまく造ったというのがきっかけとなって、結果として水を上手に使うという文化に育っていきます。

私は「水と暮らす京都」という言い方を、キャッチフレーズとしてはいいと思っています。しかしそれは水のことを賢く良く知っていたということではなく、必要に迫られ長い時間をかけて問題に適応し続けてきた歴史を持っている、という意味だと思います。他の町だと数十年〜数百年の歴史しかないわけですが、京都は1200年もの歴史がある。いろいろな人の知恵の中からうまいアイディアが生まれ、それが蓄積しているから京都はすごいというわけです。ただ、何といっても歴史があることはありがたい。

水と暮らすにはそうした長い体験の蓄積がいるということは、一種の教訓かもしれませんね。

今、京都全体を庭園と見てはどうかと考えています。京都という都市を庭園として見立ててみれば、いかに水を上手に利用するかを考えると、汚さない、滞らせないための新しいアイデアが出てくるのではないでしょうか。交通の邪魔になるから川を埋める、という開発理念から都市を守るためには、やはりコンセプトが必要です。これまでの暮らし方、水とのつながりを守るためには、京を庭園都市として見たいですね。

以前、建築評論家の川添登(かわぞえのぼる)氏が、300の大名が上屋敷、中屋敷、下屋敷とすべて庭を持っているということから、江戸を庭園都市と呼びました。京都はそれとは異なり、山に囲まれ川があり谷があります。盆地の中にコンパクトな空間が広がり、借景にも恵まれていますから、それ全体を庭園と呼ぶことができます。京都全体が一つの総合庭園。そのような意味で、将来の都市を考えてみてはどうかと思っています。
 
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