脳回路と駆動物質
343803 細胞分裂を指揮する「中心体」。それを指揮する「細胞膜」
 
麻丘東出 19/03/03 PM08 【印刷用へ
DNAが倍化し細胞分裂するとき、その前段に細胞内小器官の「中心体」が2つに複製されて「紡錘体」を形成し、染色体を引っ張って分ける。つまり、中心体が細胞分裂を指揮する。
その中心体は「細胞膜」が指揮している、という研究報告を紹介します。

以下、「基礎生物学研究所『細胞分裂方向のコントロールに関わる"にょろにょろ"と伸びる新しい細胞内構造を発見』リンク」より引用
-----------------------------------------
細胞分裂は生物の最も基本的なイベントの一つです。そして、生命現象の色々な場面で細胞分裂の方向が厳密にコントロールされることも良く知られており、古くから研究が行われています。

 今回、基礎生物学研究所の根岸剛文研究員、上野直人教授、フランス国立科学研究センターの安尾仁良グループリーダーらの研究グループは、ホヤの発生過程において細胞分裂方向のコントロールに働く、新しい細胞内構造を発見しました。
今回の研究で、@この新しい構造は、細胞膜の一部が細胞分裂に重要な小器官である中心体に向かって“にょろにょろ”と伸びることで形作られること、Aそして最終的に中心体を引っ張る力を持つようになること、を見い出しました。この張力が細胞分裂の方向を決めていると考えられます。
このような細胞分裂に関わる細胞内の膜構造は、他の動物種においてもこれまでに報告がなく、細胞分裂制御の理解に全く新しい視点を与えます。この成果は、2016年8月9日にオープンアクセス科学雑誌eLifeに掲載されました。また、注目論文として同誌の"Insights"にて取りあげられました。

【研究の背景】
 すべての動物は、発生する際に一つの細胞である受精卵から細胞分裂する必要があります。その細胞分裂は無秩序に起こるのではなく、多くの発生の場面でタイミングや方向がコントロールされています。また、その分裂方向は器官や動物の形に大きな影響を与えます。
 一般的に細胞分裂は、中心体という分裂に不可欠な構造が複製されることから始まります。複製された中心体が核の両側にそれぞれ移動し、一直線に並びます(図1A)。その後、DNAを含む核を覆う核膜が消失し紡錘体が形成され、その際に中心体は紡錘体の極となります。多くの細胞では、この紡錘体の向きが細胞分裂の方向になります(図1B)。すなわち、紡錘体の向き、またその極となる中心体の動きによって、細胞分裂の方向がコントロールされています。
<中略>

【研究の成果】
 研究グループは、カタユウレイボヤ胚の体を包む表皮細胞の第11回目の分裂に着目して研究を行いました。カタユウレイボヤの表皮細胞は、受精卵から数えて正確に11回だけ分裂することが知られています。そして、この分裂の前、10回目の分裂までは、分裂の方向が揃っていませんが、最後の11回目の分裂では、ほとんどの表皮細胞が体の前後軸に沿って分裂することが知られています。

 そこで、この同一な分裂方向がどのようなメカニズムでコントロールされているのかを調べるために、詳細なライブイメージング観察を行いました。この観察中に細胞膜の一部分から胚の前方方向へ”にょろにょろ”と伸びる構造を見い出しました(図2)。
この構造の多くは胚細胞の後方から前方へ向かって伸びます。また、2、3本が交わり“角(かく)”を構成する様子も観察できました(図2右図:赤矢印)。
<中略>

興味深いことに2本の膜構造がつくっている角(かく)の頂点には必ず中心体が存在していました(図3)。この新しい膜構造は細胞分裂の方向制御に必須である中心体へと伸長していることから、ホヤの表皮細胞の分裂方向のコントロールに関わっている可能性が高いと考えました。

 実際にこの膜構造と中心体の動的な関係を光学顕微鏡でタイムラプス観察してみると、中心体は核とともに後方へ引き寄せられ、さらに複製後に核の両側にそれぞれ移動していました(図4)。この観察により、この膜構造は中心体へと伸長し(図5A)、続いて中心体を後方へ引っ張り寄せ(図5B)、複製後の中心体を核の前後に非対称に移動させることにより(図5C)、分裂方向をコントロールしているという仮説を立てました。

 この仮説(図5)が正しいとすると“にょろにょろ”と伸びた膜構造は張力を受けているはずです。このことを検証するために紫外線レーザーによる膜構造の切断を行いました。その実験の結果、切断された膜構造は後方へ急速な収縮を見せました(図6左図)。本実験によって膜構造が張力を受けていることを確認できました。さらに、この膜構造の向きを乱すと中心体が後方へ偏らなくなり、さらに分裂方向も揃わなくなりました(図6右図)。以上の結果は、仮説を強く裏付けるものです。

 中心体は細胞分裂に関わる一方で、繊毛の形成時には、その基部(基底小体)として、中心的な役割を担うことが知られています。基底小体の位置は、繊毛の形成される場所を決め、この繊毛の位置は体の左右の決定など生物の体作りに非常に重要です。
カタユウレイボヤ胚では、今回注目した第11分裂期の間に表皮細胞に繊毛が形成されることが知られています。今回発見された膜構造と繊毛形成との関係を調べるために、電子顕微鏡、光学顕微鏡ライブイメージングにより観察を行いました。
その結果、この膜構造は繊毛の位置のコントロールにも働いていることが強く示唆され、細胞分裂の方向性の決定と繊毛形成の位置決定が密接に関わっていることがわかりました。

【本研究の意義】
 本研究において、研究グループの発見した”にょろにょろ”と伸びる膜構造は、この細胞膜に生じる張力により、中心体を後方へ引き寄せることで細胞分裂の方向性をコントロールしていると考えられます。このような制御様式はこれまでに知られておらず、研究グループはこれらの中心体が関わる重要な現象において全く新しい知見を提供できたと考えています。
 
  List
  この記事は 343734 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_343803
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、47年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp