生物学を切開する
340259 巨大ウイルスから見える新たな生物界の姿@
 
渡辺卓郎 ( 46 東京 設計士 ) 18/10/25 AM00 【印刷用へ
人間がイメージする「生物」からかけ離れた振る舞いをするウイルスは、多くの生物学者にとって、生物の定義から当てはまらないとされてきた。

一方で、ミミ(mimic:擬態)ウイルスと言われる巨大ウイルスは、複製を宿主に依存するだけにとどまらない自立性を持っており、ウイルスの多様性に注目が集まっている。

以下引用します。

巨大ウイルスから見える新たな生物界の姿
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これまで、ウイルスは生きものではないとされてきた。ところが2003年に、ミミウイルスと呼ばれる巨大ウイルスが同定され、ウイルスの概念が変わった。巨大ウイルスがどのように進化し、生物界でどのような役割を担っているのか。そこから新しい生物界のありようを解明したいと考えている。

1.これまでのウイルス観
地球上の生きものは、大きく真正細菌、古細菌、真核生物という3つのグループ(ドメイン)に分類される。ウイルスはどの生きものにも感染し、真正細菌に感染するものをバクテリオファージと呼ぶ。中心にはDNA あるいはRNAのどちらか一方の核酸があり、それがカプシドと呼ばれる殻に包まれ、ウイルスによっては、さらに外側をエンベロープと呼ばれる膜が覆っている。

生きものに感染したウイルスは、細胞内でウイルス核酸の複製とウイルスタンパク質の合成を行い、それらが集まって新たなウイルス粒子を形成し、細胞から出て行く。動植物から細菌にいたる全ての細胞が二分裂で増えるのに対し、ウイルスは組み立て方式によって細胞内で増殖するのである。この時に使われるエネルギーやタンパク質は、感染した宿主細胞の機能を利用してつくり出す。そのため、ウイルスは生きものとは見なされてこなかったのだが、近年の研究によって新しい考え方が必要になってきた。

ミミウイルスの中心にはDNAの固まりが、周りには糖タンパク質と考えられている固く長い繊維が観察できる。古くは「ろ過性病原体」と呼ばれていたように、多くのウイルスは100nm程度の大きさしかなく、光学顕微鏡で観察できない。ほとんどのウイルスのゲノムサイズは、真正細菌(約0.15—12Mbp)と古細菌(約0.5—6Mbp)より小さく、例えば大きいとされている単純ヘルペスウイルスのゲノムサイズでも約0.15Mbp(遺伝子数は約80個)である。ところが、2003年にミミウイルスと呼ばれる巨大ウイルスが同定されることによって、これまでのウイルス観が変わった。

2.常識を覆す巨大なミミウイルス
ミミウイルスは、1992年にイングランド北部の病院内で見つかった。病院ではアメーバを使って肺炎の原因になるリジオネラなどの病原性細菌探索という作業が行われており、その際に空調機冷却水サンプルからアカントアメーバにより増幅・単離されたのである。光学顕微鏡で観察出来るほど大きく、グラム染色されることから初めはグラム陽性菌の一種と考えられ、発見された町名にちなんで当初はブラッドフォード球菌と名付けられた。しかし、そこにはタンパク質合成に関わるrRNA遺伝子がなく、細菌としての特徴付けは難航した。

それから10年ほど経った2003年、フランスの細胞内細菌の専門家・ディディエ・ラウルトのグループにサンプルが渡り、電子顕微鏡での詳細な観察から、それが巨大ウイルスと結論付けられた。本体の直径は約0.4μmでエンベロープはなく、正二十面体のカプシドに包まれていることが分かった。カプシドには糖タンパク質と考えられる長い繊維が付いており、それを加えると直径約0.75μmもあった。それまで巨大ウイルスとされていた天然痘ウイルスやクロレラウイルスの直径が約0.2μm、小型の真正細菌・マイコプラズマの直径が約0.3μmであるから驚きの大きさである。最初は細菌とみなされていたという経緯から、細菌を真似ている(mimic)という意味でミミウイルスと名付けられた。

Aへ続きます
 
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