子育てをどうする?
339425 みんな基準をこしらえる「みんな化語」2
 
匿名希望 18/09/24 PM11 【印刷用へ
リンク

「みんな化語」の機能

それでは、「みんな化語」はどのような場面でどんな機能を果たすのでしょうか。生活者の体験談を集めるため、博報堂生活総研が実施したweb調査で、20〜60代の男女に「みんな化語」の定義を説明した上で、実際に「みんな化語」を人から使われた時のことを自由回答で書いてもらいました。そして、調査人数1,500人のうち、563人の方から寄せられた体験談をもとに、「みんな化語」の機能を5パターンに分類しました。

@ 権威づけする
これは2つめのエピソードのわが娘の「ダサい」発言でも出てきた使い方で、個人の意見よりみんなの意見にした方が、発言が強力になることを狙ったものです。生活者への調査でも、子供が親に玩具を買って欲しくて「みんな持ってるよ。だから買って」という場面で頻出しており、「みんな化語」の使用例で、最も多いタイプになっています。

A 自己陶酔する
1つめのエピソードで、「国民の恥だ!」と叱責した男性の例は、@の動機もありますが、自分が国民代表であるかのように自己陶酔することにも動機がありそうです。@が他者への説得力を重視しているのに対して、Aは自己満足している側面があります。他の例では、一個人が「あの人の行動は国益に反する」と言うときなどに、この動機が潜んでいる場合があります(もちろん、まっとうな意見の場合もありますが)。

B 責任転嫁する
調査では、次のような事例を教えてくれた生活者がいました。

「駐車違反も、みんながやってるから、しょうがいないよね」

「(私のような)年寄りはモノが捨てられないから、断舎利は苦手なんだよ」

このように、「自分個人としては、駐車違反は良くないと思う/持ち物は整理した方が良いと思う」という体裁を示しつつ、「でも、みんなそうじゃないのだから、しょうがないじゃないか」と"みんな"に責任転嫁をする用法です。もちろん、ここで出ている"みんな"は本当に全員なのではなく、イメージ上でつくられたものです。

C 包摂する
@〜Bの「みんな化語」は、虚像の"みんな"を引き合いに出して自分の主張をするような用法ですが、「みんな化語」には誰かを擁護するようなポジティブな機能もあります。

調査で生活者が書いた事例のなかに、次のようなものがありました。

「これでいいのだ」

これは、故・赤塚不二夫氏の作品中の名言。バカボンのパパが、毎話のはちゃめちゃな展開の末、それでも最後に全状況を肯定する決め台詞です。

「これでいいのだ」が個人の視点からではなく、"みんな"をより大きくした"神"のような視点に立った大局的な言葉使いだからこその効果です(バカボンのパパは作品中ではある意味で"神"の位置にあるキャラクターとも言われています)。

この「みんな化語」は、例えば誰かが仲間外れの疎外感を持っているとき、「それでもあなたは、間違っているのではなく、いいことの範疇に入っているのだ」と包み込んでくれる言葉にもなりえます。

いわゆる均一的な"大衆"が存在していた漫画連載当時、バカボンのパパは常に異端者を演じていたわけですが、ライフスタイルが多様化した現在はいわば異端者だらけの時代とも考えられます。

そんな現代で、この台詞はより輝きを増しているのかもしれません。

D "みんな"をジェネレートする
自分の本音を代弁するために「みんな化語」を利用するだけでなく、「みんな化語」を使うことによって事後的に"みんな"の実態が生まれることもあります。

例えば、残業を重ねるような労働者が依然として多い日本ですが、「お前の働き方はもう古い」と「みんな化語」によるダメだしを一斉にしはじめることで、実際にスマートな働き方の人が多数派の"みんな"になっていくことがありうるでしょう。「多数派の中に入っていたい」と思う人間心理を反映していますよね。

"みんな"をジェネレートするという機能については、日本語の文字・語彙・意味の史的研究を専門とされている小野正弘教授(明治大学文学部)から2つの興味深いポイントを教えて頂きました。

1つは、「みんな化語」が地域コミュニティを作っていたという点。少し前までの日本では、地域ごとに必ず世話焼きな人がいて、「みんな○○なのよ」という話を方々でして回ることで、結果的に地域の情報がひとつになっていた側面があったのだそうです。

もう1つは、もっと昔の飛鳥時代に活躍した歌人の額田王(ぬかたのおおきみ)について。彼女は戦場に向かう船団が船出を見計らって待機していた時、船団全体の「いつが船出なのだろう?潮も満ちたしそろそろか?」という空気が閾値を超えたのを察知して「今こそ船出の時だ」という歌を詠んだという学説があるそうです。これから進軍しようとする全体にきっかけを与え、意気を高めたんだとか...。

全体のまだまとまっていない空気をひとつにして、"みんな"をジェネレートするためには、それに先んじて「みんながこう考えている」と「みんな化語」を発する人の存在が不可欠だということです。

実は、効果的な広告や話題になるキーワードも、実態より一歩だけ先んじて「みんな化」している場合が多いと思います。

諸刃の剣としての「みんな化語」

今回の記事では「みんな化語」の様々な例を通して、それらが日常的に使われていることと、使用者にとっていかに魅惑的かを論じてきました。

この「みんな化語」は、誤って作動すれば少数派を排除する快感にひたるポピュリズムにつながる危険性があります。一方で、異端者を包摂したり、世の中を善導したりするポテンシャルもあります。
 
  List
  この記事は 211321 への返信です。
  この記事に対するトラックバックURL  http://www.rui.jp/tb/tb.php/msg_339425
  ※トラックバックは承認制となっています。

[過去の記事へ]
[一覧へ戻る] [新しい記事へ]


◆実現論本文を公開しています。
 実現論 : 序  文
 第一部 : 前  史
 第二部 : 私権時代
 第三部 : 市場時代
 第四部 : 場の転換
 参考文献

 必読記事一覧
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28
大転換期の予感と事実の追求
実現論の形成過程
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(1)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(2)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(3)
自考のススメ1.未知なる世界への収束と自考(4)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(1)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(2)
自考のススメ2.現代の不整合な世界(問題事象)(3)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(1)
自考のススメ3.自考力の時代⇒「少年よ、大志を抱け」(2)
1.これから生き残る企業に求められる能力は?
2.私権圧力と過剰刺激が物欲を肥大させた
3.市場の縮小と根源回帰の大潮流
4.共認回帰による活力の再生→共認収束の大潮流
5.自我と遊びを終息させた’02年の収束不全
6.同類探索の引力が、期応収束を課題収束に上昇させた
7.情報中毒による追求力の異常な低下とその突破口
8.大衆支配のための観念と、観念支配による滅亡の危機
9.新理論が登場してこない理由1 近代観念は共認収束に蓋をする閉塞の元凶となった
10.新理論が登場してこない理由2 専門家は根本追求に向かえない
11.学校教育とマスコミによる徹底した観念支配と、その突破口(否定の論理から実現の論理への転換)
12.理論収束の実現基盤と突破口(必要なのは、実現構造を読み解く史的実現論)
近代思想が招いた市場社会の崩壊の危機
新理論を生み出すのは、専門家ではない普通の生産者
現実に社会を動かしてきた中核勢力
私権時代から共認時代への大転換
市民運動という騙し(社会運動が社会を変えられなかった理由)
民主主義という騙し:民主主義は自我の暴走装置である
統合階級の暴走で失われた40年
大衆に逆行して、偽ニッチの罠に嵌った試験エリートたち
新理論の構築をどう進めてゆくか

『るいネット』は、46年の実績を持つ起業家集団・類グループが管理・運営しています。るいネットワーク事務局(Tel:0120-408-333, E-mail:member@rui.ne.jp