経済破局は来るのか?
338062 日本の長期金利上昇後の世界金融はどうなるか
 
匿名希望 18/08/12 PM11 【印刷用へ
ビジネス知識源(吉田繁治氏)
2018年8月10日 Vol.384:世界の低金利のアンカーになったジャパンマネー  HP: リンク 
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7月31日の金融政策決定会合(日銀)で、「長期金利0.2%までの容認」を発表して以降、わが国の10年債の利回りは0.1%から0.12%の間を不安定に波動しています。
7月20日までは0.03%台だった金利が0.12%に上がっても、わずか0.09ポイントという誤差のような上昇に過ぎません。
しかし上昇の倍率では4倍です。政府の、これ以降に発行する国債の利払いが、今の4倍になる規模です。
国債は、その時の市場金利を、発行額面に対する表面利率として、政府から売られるからです。国債に入札する銀行が、発行額面に対していくらで買うかによって、長期金利が決まります。

【国債の発行と、市場の金利の仕組み】
約1000兆円という大きな残高がある既発国債の流通価格は、10年債の金利が0.1%上がるにつき、0.8%(8兆円)下落します。長短国債の平均残存期間は8年だからです。
金利が1%上がると、8%(80兆円)下落し、2%上がると、16%(160兆円)の含み損が、金融機関(国債をもつ日銀、銀行、生保)に生じます。
日本では、既発国債が1000兆円(GDPの1.8倍)と、経済規模に対して世界最大であるため、普通は問題ではない1%や2%の金利の上昇が、銀行の資産下落から金融危機を引き起こす規模の、国債損を生みます。
1%や2%金利が上がっても、何も起こらないというエコノミストは、GDPの1.8倍の1000兆円という国債の発行残を無視しています。
(注)政府の借入金を含む総債務は1280兆円ですが、そのうちの国債は1000兆円です。

【既発国債が大きすぎる日本】
わが国では、普通の金利より低くても、金利2%辺りから、金融危機に向かうでしょう。
値下がりする既発国債の残高が1000兆円と大きく、金利の上昇が、国債をもつ金融機関の資産の損失を招き、その損失が、金融機関の信用の淵源である自己資本(総計で150兆円)を超えるからです。

【超低金利国債が、金融機関に高く買われるのが、国債バブル】
表面金利1%以下の10年債を、2012年以降、金融機関が発行額面以上の価格で買ってきたということは、「国債が高く買われ過ぎた、国債バブル」を示しています。
1000兆円の、マイナス金利も含む超低金利の国債は、わずかな市場金利(予想金利)の上昇により、下落します。

【リーマン危機を超短縮すれば】
2008年のリーマン危機(米国の金融危機)は、2000年から2倍に上がっていた米国の住宅価格が、2006年にピークをつけ、2007年から下落しはじめ、2008年には住宅ローン証券の暴落(-40%)に至り、関連するデリバティブの全面崩壊を招きました。住宅価格の下落額の、何倍もの債券の下落が生じたのです。
リーマン危機での、金融機関の総損失は、$4兆(440兆円)と推計されます。FRBはQE(量的緩和)として、$4兆のドル増発を行い、金融機関の資産損を埋めたのです。FRBがもつドル信用を使って、民間に与えたと言えます。

【FRBは、今も、ドル増発のままである】
FRBは、金融危機が終わった現在も、$4兆(440兆円)を増発したままです。買ったMBSと米国債をFRBが売れば、米国債の価格が下がり、MBSは再び暴落して、金利が高騰することが容易に予想できるからです。
ここまで考えると、米国の金融は、3回のQE(量的緩和)により正常化したのではなく、銀行システムには、危機が「内包」されているままと言えます。QEのマネーは、落とし穴の覆いです。加えて、米国の株価の3倍への上昇も、危機を覆い隠しています。金融機関は株を買っているからです。株価が下がれば、穴の大きさも分かるでしょう。

【FRBの利上げ(2018年度は4回の予定)】
「金融資産・負債が大きすぎるため、サイクル的になった金融危機の内包」の中で、2018年度の4回の利上げ(0.25%×4回)に、向かっているように思えます。
なぜ経済には悪い影響がある利上げをするのかと問われたイエレン前議長は、正直に答えています(2016年)。
「FRBが、信用つまりバランスシートを拡大したままで、しかも金利ゼロを続けていれば、次の金融危機のとき、ドル増発と利下げという手段を取れなくなる」(イエレン前議長)
このとき、労働経済学者のイエレンが想定していたのは、住宅価格の下落からの金融危機ではなく、リーマン危機から3倍に上がった米国の株価でした(IMFの、クリスティーヌ・ラガード専務理事とのTV対談)。
(注)この発言は、FRBのドル信用を使って$4兆以上の増発はできても、そのときは、外為市場で米ドルの下落が起こるため、増発効果は相殺されると表明したことと等しい意味をもっています。
FRBの信用の限界を言った重要な発言です。FRBが発行する通貨が、外為市場で大きく下げないうちは、FRB信用があることになります。

【中央銀行の信用とは、発行権をもつ通貨の信用である】
机上論で言うように、「中央銀行の信用は無限」ではない。発行通貨の価値下落(世界の通貨に対する実質実効レートの低下)という形で、限界が現れます。中央銀行の信用は、通貨の信用です。
1997年のアジア通貨危機のとき、タイ、マレーシア、インドネシア、韓国の中央銀行は、通貨の増発は自国通貨の下落をとめることはできなかった。それぞれの経済力がバックになった中央銀行の信用の限界、つまり通貨増発の限界に達していたからです。
株価下落から来る次の金融危機のとき、FRBがドル増発の対策を取れないと、1929年から1933年のような、金融危機が実体経済の大恐慌(GDPの30%低下と失業率25%付近)になると言いたかったのでしょう。
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