現代意識潮流を探る
335142 中・高校生の仲間関係は友達地獄〜学校という特異な空間が人間関係をも破壊する
 
宮田一郎 ( 東京 ) 18/04/26 PM01 【印刷用へ
学校における仲間関係は、勉強圧力よりもはるかに重たいものらしい。
仲間関係の表層化は十数年前くらいから顕在化している問題であるが、いじめと共に現在も若者たちを苦しめている。

私権圧力下の人間関係、仲間関係は規範や序列もあって分かりやすいものだったが、私権圧力が衰弱して以降は外圧対象が無くなったため何をもって関係性を築いていくのか、その紐帯、幹となるものが無く、好き嫌いの感情に委ねられる部分が大きく流動的である。かといって人間は共認存在である以上、仲間関係を捨象することもできず、友達地獄を彷徨うことになる。

学校の教室という、世間から切り離され、同学年だけが集まるという特異な空間である以上、学校における仲間関係の表層化、陰湿化、いじめ、、、に突破口は見えない。


◆「優しい」人間関係とは?
社会学者・土井隆義氏は、「優しい」人間関係をこのように定義しています。
・他人と積極的にかかわることでお互いを傷つけあうことを避ける
・「異様」と思われるほどの高度に配慮し、お互いの反感が表に出ないようにする
ゆえに、現在の中学・高校では「お互いの意見衝突」を避けるため、慎重に人間関係を営んでいます。そして、「優しい」人間関係で結びついた人間同士の絆はその場の「空気」によって上下・友人関係が簡単に崩れてしまうほどの非常に脆いものです。

「優しい」人間関係は非常に「繊細」で「脆い」ものであるから、「薄氷を履む」ような慎重さで相手の出方を探りながら自分の出方を決めなければなりません。そのため、現在の中学・高校生には常に「強いストレス」がかかっています。
ある中学生は「優しい」人間関係を次のような川柳で表しました。
「教室は たとえて言えば 地雷原」


◆「優しい」人間関係を壊す「KYさん」とは?
「優しい」人間関係は、強迫神経症のように「過剰に」同調に配慮したうえで成り立っています。コミュニケーションに深くかかわっていない人がそのことについて指摘すると、「優しい」人間関係というものは、きわめて脆い砂上の楼閣であることを白日の下にさらしてしまいます。

「裸の王様」という童話で、皆が裸であることを知っているにも関わらず誰もそれを指摘しないが子供は素直に「王様は裸だ」と指摘します。これと同じ関係が現在の中学・高校を包んでいます。これを今の状況に当てはめると、「皆が裸で…指摘しない」ということが「優しい人間関係」ということになり、「子供は素直に…」ということが「KYさん」ということになります。

「優しい」人間関係の下では、対人距離をうまく測れずに「近づきすぎる」という行為は「相手に負担をかける」行為になります。だから、運動会や遠足といった「イベント」で冷めた態度を取ったり、クラスの9割以上が乗り気でないにも関わらず一人「熱く」なることは、「優しい」人間関係という「秩序」を破壊する「破壊者」と見なされるわけです。

彼らにとって、「優しい」人間関係を維持することが最大の関心事になっているので、「優しい」人間関係を破壊されることを極端なまでに恐れます。であるからこそ、「相手を傷つけない」ことが中学・高校で生きてゆくためには必要なルールであり、それを厳守することが地雷原で生き延びる「最善策」ということになるのです。(と信じ込んでいる…といったほうが正しい)


◆「優しい」人間関係がいじめを生み出す?
土井氏は、「今の学校でいじめが行われる原因は昔と変わらない部分もあるが、個々の問題では解決できない共通の特徴があり、しかもその時代の固有の特徴が潜んでいる」と指摘しています。ゆえに、「いじめが起きた原因を調べるよりも、集団的な行為が継続的に行われる過程を分析したほうがいじめ解決には効果的ではないか」と土井氏は提言しています。

現在の「大人」たちは、「現在は人間関係が希薄化した」とよく言います。しかし、現実の中学・高校をのぞいてみると、自分の「対人レーダ」が常に働いているかを確認しながら人間関係を営んでいます。先ほども述べたように、今の中学・高校生は「他人と衝突」することを非常に恐れます。そのため「自分が他人から反感を持たれない」ように常に心がけていなければなりません。

このような「優しい」人間関係のもとで生活してゆくには、常に「身近な人」の言動に気を配っていなければなりません。その結果、「親密な友人」の範囲を狭め、意見の相違などからくる友人の乗り換えを困難にします。そして、人間関係の維持に膨大なエネルギーを使うため、「学業」や「外部の人間とのつながり」など「自分の将来を決める重要なもの」にエネルギーが回らなくなります。現に「クラスの人間関係維持」ばかりに力を入れていた生徒の成績が悪いままだった…というケースがあります。

「優しい」人間関係の下では、風通しが悪く、すぐ人間関係が「煮詰まって」しまいます。一度意見の相違からくる対立が表面化すると、その生徒には「取り返しのつかない致命的なダメージを受けた」と感じます。彼らは「今のグループでの人間関係」は「絶対」であると思っているため、他人との人間関係を相対的に見つめることができません。

このように意見の相違により人間関係が決裂すると、「対人レーダ」が必要以上に敏感になっているため「○○につくと自分も排除の対象になりかねない」と感じ、自己保身のため「○○」を「シカト(無視)」したり「持ち物を隠す」といった行為を「本人のいないところ」で「静かで密やかに」行うようになります。このようにして「いじめ」が始まるわけです。

今の中学・高校生は「人間関係が希薄」になったのではなく、「ものすごい濃厚な人間関係」の中で学生生活を送っているわけです。その点に「大人」が気づいていないのです。

相手の事情を詮索したり踏み込んだりしない、あるいは一方的に自分の断定を押し付けたりしないということで「相手との距離」を取る関係、すなわち「(相手に)優しい」人間関係は裏返すと、自分の立場を傷つけるようなことと自分に降りかかる責任を可能な限り回避する「自分に優しい人間関係」でもあるわけです。だから意図せずしてこの「人間関係」を破壊した者には容赦なく「制裁」(いじめ)を加えるというわけです。


参照:友達地獄−ドロドロした人間関係を生き抜くには リンク
 
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