戦争の起源
330607 考古学が解き明かす「人類史上、戦争はいつどのように始まったのか」
 
山上勝義 ( 53 京都 建築士 ) 17/10/23 AM00 【印刷用へ
yahooニュース リンク より、以下転載
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考古学が解き明かす「人類史上、戦争はいつどのように始まったのか」

■戦争は人類の本性によるものではない
 私たち人類社会の「宿痾」ともいえる戦争。

 戦争は、人類史上いつどのようにして始まったのだろうか。それが文字の出現よりもずっと昔にさかのぼる以上、戦争開始のプロセスとメカニズムを突き止める仕事は、考古学にしかできない。

 この仕事に初めて取り組んだ日本の考古学者は、佐原真(元・国立歴史民俗博物館館長、1932〜2002)だ。佐原は、対人用武器や防御施設などの「戦争の考古学的証拠」が、狩猟と採集の時代にはなく、農耕の時代になってから現れると述べた。

 このことから、戦争は人類の本性によるものではなく、農耕や、そこからくる富というものをもつようになってから後天的に生み出したものだと主張したのである。

 だからこそ戦争は止められる。そのように佐原は、現代社会に向けてのメッセージを発した。

 日本の場合、本格的な農耕は弥生時代に始まる。始まるや否や、佐原のいう「戦争の考古学的証拠」は早くも現れる。

 福岡県糸島市の新町遺跡では、鋭利な磨製石鏃(石を磨いて作った矢じり)が大腿骨に深々と突き刺さった熟年男性の人骨が見つかっている。日本最古の戦争犠牲者といえるだろうか。

 九州から東の各地へと農耕が伝わり、それに根ざした古墳時代の王権が作られていく過程で、戦争は無数の考古学的証拠を残した。

 武器の充実、防御施設の発達、戦士や武人を葬った墓の増加など、古代国家への道筋には戦争が濃い影を落としている。国の始まりは、戦争の始まりでもあるのだ。

個体どうしから集団どうしの闘争へ
 だが、農耕以前に、戦争とまでは言えなくても、その源になるような争いの行為が存在していたことまでは否定できない。

 狩猟と採集をなりわいとする社会の遺跡からも、闘争で傷ついた人骨などが出土する。縄文時代も例外ではない。個体どうしの生存競争によって種の継続が保たれるという生物学の原理は、ヒトにも当てはまるのだ。

 重要なのは、このような個体どうしの闘争が、集団どうしの間の闘争である戦争に、どのようなメカニズムでつながっていくのかという問題である。

 集団間の闘争そのものは、昆虫のような比較的下等な生物から、ヒトともっとも近いといわれるチンパンジーのような霊長類まで、生物界にはめずらしくない。

 その中でヒトの集団間闘争が特異なのは、戦い合う集団の規模が、群を抜いて大きいことにつきる。

 ヒトに近いチンパンジーの闘争は、数頭からせいぜい十数頭程度の集団の間で行われる。

 この集団は父子・兄弟などの濃い血縁を軸としたものだから、もし闘争で命を落としたとしても、自分と同じ遺伝子の多くが生き残った個体に受け継がれ、次世代に伝えられる。

 つまり、集団レベルの闘争への参加が個体レベルの生存競争にもプラスに働く点で、生物学的に合理的だ。

 これに対してヒトの場合、たとえば国家間や宗教勢力間の戦いを思い浮かべるとわかるように、闘争と引き換えに守られる遺伝子のほとんどあるいは全部が、そこで命を落とす個体とは関係がうすい。生物学的には不合理である。

■私たちの内なる何か
 このような生物学的不合理を超え、膨大な数の個体がその場に立つような闘争こそ、「戦争」とよぶにふさわしい。

 すなわち戦争とは、そこに参加する多数の個人に、不合理を合理と認知させて命の争奪までおこなわせるさまざまな仕掛けと結果の総体だ。

 これらの仕掛けが、いかなるメカニズムによりどんなプロセスで生み出されるかを見きわめる仕事こそ、戦争の始まりを解き明かすことだろう。

 仕掛けの多くは、複雑に進化したヒト独特の大きな脳に由来する。たとえば、ヒトの脳は虚構や幻想を創り出し、多人数でそれを共有できる。

 実際の血縁関係をはるかに超え、あまたの人びとを虚構の血縁意識で結びつけた「同胞」や「民族」の概念などはそれだ。

 抽象的思考もまたヒトの脳ならではの産物で、目には見えない理屈や制度で不特定多数の人の心や行動をひとまとめにする「国家」というしくみを生み出した。

 民族や国家といった概念・組織に対するさまざまな意識や感情――私たちの内なる何か――が、不合理を合理と認知させる仕掛けを作り、動かす源泉となってきた点を注視しなければならない。

 防御より攻撃を優先した武装、城壁をもたない古代都市など、命を危険にさらすことを厭わないばかりかむしろ美化するような戦いの様式が発達した日本は、このような仕掛けがもっとも強力に働いた例として注目に値するだろう。

 このようなことが考えられるようになった今、狩猟採集か農耕か、などといった経済的要件のみに戦争の理由を求めていたかつての考えは、単純のそしりをまぬがれなくなった。

 農耕社会に戦争は多いという傾向そのものは依然として認められそうだが、なぜそうなのか、どのようにそうなのかについては、もっと深くて複雑な分析が要りそうだ。

 ヒトの脳に深く根ざしたそれらの問題を解き明かすため、いま、世界各地の考古学者を中心に、人類学者、生物学者、認知心理学者などを広く動員して、戦争発生をめぐる学際的研究のいくつかが発足しつつある。まずは十年後の成果を期待したい。
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