学校って、必要なの?
329696 何故こんな検定が?検定制度の何が問題か 〜いらない!こんな教科書検定〜・・・B
 
加藤俊治 ( 64 大阪 ) 17/09/17 PM07 【印刷用へ
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●教科書を政府の広報誌・「教化書」にする教科書調査官の恣意的な検定
 沖縄戦における住民の強制集団死(「集団自決」)について、「日本軍の強制」を検定で削除させた問題について、伊吹文明文科相(当時)は国会で、「文科省の役人も、私も、安倍総理も一言も容喙(口出し)できない仕組みで教科書の検定は行われている」とくり返し答弁しました。ところが、沖縄戦の検定意見は、教科書調査官が作成した「調査意見書」がそのまま検定審議会で何の議論もないまま素通りして、検定意見になっていたことが明らかになっています。

しかも、「日本軍の強制」を削除させるという調査意見書の決済資料には、文科省初等中等局長、審議官、教科書課長、教科書調査官など教科書検定に関係する主要な事務方(官僚)の決裁印が押されていることが判明しています(「沖縄タイムス」07年6月23日)。伊吹文科相(当時)の国会答弁とは異なり、文科省の役人が介入、というよりも主導して検定意見がつくられていたのです。伊吹文科相の答弁は嘘だということです。

この文科省の役人の中で、実質的に検定意見を作成し、教科書会社や執筆者に削除・修正を強制する権力をふるっているのは教科書調査官です。沖縄戦検定においても、「集団自決」が「直接的な軍の命令に基づいて行われたということは、現時点では確認できていない」というのが検定審議会での確認であり、「軍の強制」については、何も確認していません。「軍命」と「軍の強制」とは同じことではありません。ところが、審議会の確認を勝手に解釈して、調査官は「軍の強制」記述を認めないという検定を恣意的に行っていました。このことは、複数の検定審議会委員が新聞の取材で証言しています。

これまでも、教科書調査官が学説状況を無視して、恣意的に自分の見解を押しつけて、削除・修正を強要した検定事例はたくさんあり、家永教科書裁判や高嶋教科書裁判でも、それが違法な検定として断罪されています。前回の検定で合格した記述・内容をそのまま載せて検定申請した場合でも、学説状況などに変わりがないのに、次の検定で意見がついて削除や修正を求められることがしばしばあります。これも調査官による恣意的検定の例です。

では、教科書調査官とはなんでしょうか。調査官制度は、1956年に政府・自民党が教科書の国家統制にために国会に提出した教科書法案で導入しようとしたものです。この法案は多くの国民の反対で廃案になりましたが、文部省は、同年秋に省令によって教科書調査官制度を導入しました。その意味では、調査官は三権分立の原則をふみにじって「違法」につくられた制度といえます(詳しくは『〈つくる会〉分裂と歴史偽造の深層』参照)。

調査官は国家公務員でありながら国家公務員試験に合格していなくてもなれる特別な役人ということです。しかも、文科省内では、他の事務方の役人が「先生」とよぶ特別な存在です。国家公務員試験合格の資格だけでなく、教職免許を持っている調査官もほとんどいません。教育現場を知らない調査官が、「教育的配慮」をふりかざして教科書記述の修正や削除を要求するという奇妙なことが検定では行われているのです。

少し古い話しですが、1986年に日本会議の前身の日本を守る国民会議が憲法「改正」の世論づくりと昭和天皇の在位60周年奉祝のために、高校教科書『新編日本史』(現『最新日本史』)を発行し、1986年に検定に合格しました。何年か後に、國學院大學の某名誉教授が「自分の弟子の嵐義人調査官にこの教科書を合格させるよう指示した」と述べています。

このような調査官が、検定の合否という出版社にとっては社運に関わるよう行政処分を行う絶大な権力をにぎり、先述したような恣意的な検定を行っているのが実態です。

−略−

ところで、この教科書調査官がどのような基準や手続きで専任されているのかは全く不明です。沖縄戦検定や訂正申請による「再検定」に関わった照沼康孝社会科主任調査官と村瀬信一調査官は伊藤隆東京大学名誉教授の門下生です。照沼氏は伊藤氏の紹介で調査官になったことは時野谷滋元主任調査官が認めています。伊藤氏は新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)元理事で、現行の「つくる会」歴史教科書(扶桑社版)の監修者です。2000年度と2004年度検定で「つくる会」教科書を検定合格させた時に、この二人の調査官がこの教科書の検定に関わっています。

調査官だけでなく、検定審議会の委員の選任についても基準や手続きが不明であり、文科省がいわば「勝手に」専任しています。私たちは、調査官や審議会委員は学会などの推薦を義務づけるべきだと主張してきましたが、文科省は一顧だにしていません。
 
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