試験・身分制度の根深い害
328602 日本の教育の最も危険なのは均質化にある。〜内田樹のコラムより
 
田野健 HP ( 56 兵庫 設計業 ) 17/08/06 PM05 【印刷用へ
内田樹氏の研究室からコラムを紹介したい。
内田氏はフランス文学を専門として教えているが、私は内田氏のポリシーは平凡でないという事だと思っている。学問とは常識や平凡と闘う事というように考えておられると思う。それほど平凡は危険である。
学問の面白さとは平凡からの脱却であり、追求とはそこにある。
日本の教育の最も危険なことは格付けすることではなく格付けする為に均質化している事にある。

〜内田樹の研究室よりリンク
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「教養教育とは何か」
(前略)
日本の教育史上最も成功した教養教育は旧制高校だと私は思う。そこでは若者たちが起居をともにし、文字通り「同じ釜の飯を食う」生活をした。彼らはその生活を通じて、集団内部での自分の果たすべき役割を学んでいった。のちに大きな仕事をした人たちが高校時代を回顧して、「・・・に出会って、この分野ではこいつには歯が立たないとわかったので、自分は・・・を専門にすることにした」と述懐する言葉を私は何度も読んだことがある。

旧制高校が教育機関として成功したのは、それが同学齢集団の中でどういうふうに「ばらける」と集団としての知的パフォーマンスが最高になるかを十代の頃から熟慮させる仕組みだったからだと私は思っている。

今の学校教育では、学生たちを単一のある「ものさし」を使って格付けして、上位者を優遇し、下位者を処罰するという競争原理が幅をきかせている。けれども、精度の高い格付けを行うためには、それに先立って、できるだけ学生たちを均質化する必要がある。「それ以外の条件をすべて同じにする」ことでしか「ものさし」は当てられないからである。

精度の高い格付けと多様性は共存できない。どちらかをあきらめるしかない。日本の大学は格付けを優先して、多様性を捨てた。21世紀に入ってからの日本の大学の学術的アウトカムの劇的な劣化はそれが原因で起きたと私は思っている。

学生ひとりひとりの「学力」を査定して、点数化して格付けすることにはそれなりの意味はあるが、「それなりの意味」以上のものはない。むしろそれがいま私たちの社会と学校教育の場に及ぼしている害毒についてもっと自覚的でなければならないと私は思う。教育の成果は最終的には個人ではなく、集団単位で考量すべきものだからである。

私たちは学校教育を通じて、私たちの共同体の未来を担うことのできる次世代の成員たちを育てている。彼らの知性的・感性的な成熟を支援することによって、私たちの共同体が存続できるようにすることが学校教育の第一目的である。それ以外のことはどれも副次的なことに過ぎない。
〈中略)
気づいている人もいるはずだが、20年ほど前から日本では「似たような能力を持っている若者たちを一堂に集めて、その優劣を格付けして、それに基づいて資源分配をする」という後味の悪い物語を人々は娯楽として大量に消費するようになった。おそらくは社会の実相をそのまま映し出しているのである。もう一度アカデミアは「多士済々」の場とならねばならない。それが果たせなければ日本に未来はない。
 
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